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 2020年に開催される予定の東京オリンピックが、"夏の夜の夢"になりかけている。招致決定にまつわる買収疑惑などが取り沙汰され、海外メディアの間では、もしもの場合は開催地がロンドンになるのではないかと具体的な代替案が浮上中だ。また、不正に関わったと目されている国内の某大手広告会社が窮地に立たされている。

■東京五輪招致、選考関係者をおもてなし?

 5月16日に、大会組織委員会の森喜朗会長(78)が「最初から計画に無理があった」と問題発言するなど、物議をかもしている東京オリンピック。今、五輪招致にあたって選考関係者に対して裏金を渡したのではないかという疑惑が、世界的に取り沙汰されている。

 イギリスの大衆向け新聞サイト「MailOnline」は、スタジアムやロゴの問題なども含めて、東京オリンピックにまつわる出来事を包括的に解説。不正が発覚した場合、「これから会場を設営するにはイスタンブールやマドリッドは遅すぎる」と指摘し、「対応できる唯一の都市」として2012年に夏季オリンピックを実施したロンドンが東京に代わる開催地になる可能性を報じた。

「すでに五輪を巡って様々な問題が生じており、中には中止に賛同する声もあります。まず問題は不正をしたか否か。戦後、国際社会で少しずつ築き上げてきた信頼に、著しく傷をつけます。前代未聞の赤っ恥ですし、五輪招致に沸いた2013年9月から今に至るまで準備してきたことが、全て泡と化しますね」(報道関係者)

 今回の一件では、仏検察当局などが動いて捜査を行なっている。5月12日に同局は、オリンピック招致に際して「東京2020招致委員会」からブラック・タイディングス社へ、2013年7月と10月の2回で合計2.3億円相当(130万ユーロ)の資金が動いていたと正式発表。この資金が五輪を選ぶ際の投票券権をもつIOC委員の一人、国際陸上競技連盟(IAAF)のラミン・ディアク前会長(82)らのもとへ流れたのではないかと疑惑が生じた。 

 加えてブラック・タイディングス社の拠点であるシンガポールの住所は、安アパートの一室であることが判明。日本のみならず全世界的にメディアが「ペーパー・カンパニーだ」と指摘している。

 ここで問題になっているのが日本国内の某大手広告会社だ。ブラック・タイディングス社について「実績のあるコンサルタント会社だ」などとアドバイスしたと目され、さらにIAAFと2029年までスポンサー契約を延長したこともあり、今回の一連の不正に関わっているのではないかと取り沙汰されている。

 日本の国会では16日、2.3億円を"招致関連のコンサルティング料"としてブラック・タイディングス社へ払った問題について、日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長(68)が招集された。しかし竹田会長は2.3億円は「正当な業務に基づくものだった」と話しつつ、「どう使われたか確認していない」と述べるにとどまった。だが18日にはJOC自体も調査チームを設けて、内部調査に動くことを発表している。
 
 17日には、民進党の枝野幸男幹事長(57)が上記広告会社に関して「相当の金を(招致委員会が)払っているはずですから、その金でどんな仕事をしたのか、場合によっては担当者に国会に来て頂くような話だという風に思っています」と発言。「(同社が)知らぬ存ぜぬと、常識では考えられないことを言っている」と鼻息が荒い。巷でも「全国民の望むところだと思います」「一秒でも早く国会招致喚問するしかない」「関係者全員国会に呼んで我欲を洗い流さないといけませんね」などの意見が飛んでいる。

「今月の26・27日にG7サミットが伊勢志摩で開催されます。それまでに何とか解決しようと、いつもの"お役所仕事"にはないスピード感が求められています。問題視されている大手広告会社は"見えざる圧力"が度々取り沙汰され、フランスメディアなどは日本のメディアのドン扱いです。不正に関わった疑惑のある同社担当者は、国会に招集するとなればサミット開催までに呼ばれるかもしれません。不正がもしも事実なら、今頃、必死に言い訳を考えていることでしょう」(前出・関係者)

 伊勢志摩のG7サミットには、主要議題の中に「腐敗対策」が盛り込まれ、共同声明にはスポーツ腐敗に関する附則を盛り込む案が国内で出ている。もし開催国の日本が世界最大級のスポーツの祭典であるオリンピックで不正を行なったとなれば、「腐敗対策」の議題は皮肉以外の何物でもない。そして不正に関わった人間・企業は、おそらくスポーツ界の歴史に悪名を刻むことになるだろう。

文・海保真一(かいほ・しんいち)※1967年秋田県生まれ。大学卒業後、週刊誌記者を経てフリーライターに。週刊誌で執筆し、芸能界のタブーから子供貧困など社会問題にも取り組む。主な著書に『格差社会の真実』(宙出版)ほか多数。