高杉真宙 若きカメレオン俳優に迫るブレイクのとき 「僕じゃなきゃダメだと言われたい」
昨夏に発売された初のフォトコレクションのタイトルは“変身”を意味する「METAMORPHOSIS」。“新世代のカメレオン俳優”にふさわしい。高杉真宙、19歳。仮面ライダーから映画『渇き。』での冷酷な不良、昼ドラ『明日もきっと、おいしいご飯〜銀のスプーン〜』(東海テレビ)の料理上手なプリンスまで、作品ごとに見せる凄まじいまでのギャップがこの男の魅力である。5月の舞台単独初主演『闇狩人』をはじめ、今年も話題作への出演が目白押し。ブレイク秒読みの新鋭の素顔に迫る。

撮影/平岩亨 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.

正義感あふれる青年役…初めてかも?



――昨年末に上演され、ヴァンパイア役が話題を呼んだ舞台『TRUMP』を終えてすぐに、舞台『闇狩人』への出演が発表されました。

『TRUMP』では早乙女友貴くんとのW主演だったんですが、今回は初めての単独主演で、前作とは違った緊張があります。これまで、舞台への参加は少し間隔が空くことが多かったけど、今回は短いので『TRUMP』でどこまで成長できたのかを確認するという意味でも楽しみです。

――『TRUMP』のときは、主演ということで座長として現場を引っ張っていこうという意識はあったんですか?

いえ、自分の役に精いっぱいでなかなか…(苦笑)、みなさんに支えていただいてなんとか乗り切ったという感じでした。だからこそ、今回は座長としてみんなを引っ張れるように頑張りたいです。



――演じるのは、表と裏の顔を使い分け、裏稼業として法で裁けない悪人を成敗する、間武士(はざま・たけし)ですね。原作は高杉さんが生まれる以前の1988年から90年に連載された漫画ですが、読まれましたか?

はい。正義感あふれる青年という役どころですが、実はこれまでそういう役をやったことがないんですよ。表の顔は漫画家志望のサエない予備校生なんですけど、裏の顔とのスイッチの切り替えが楽しみですね。

――演出の深作健太さんとは、過去に『里見八犬伝』で2度にわたってお仕事をされていますね。

優しいけど熱い方です。イスに座って見てるだけでなく、直接、舞台に上がって指導してくださるんです。僕にとっては、最も多くのことを教わった演出家だと思いますし、いまでも稽古場で深作さんの前で演技するのは、本番以上に緊張しちゃいます(苦笑)。




――プライベートでも仲の良い、同い年の横浜流星さんが、同じく闇狩人である我竜京介を演じます。そもそもおふたりが仲良くなったきっかけは?

僕が『仮面ライダー鎧武/ガイム』に出ていたのと同じ時期に、流星も『烈車戦隊トッキュウジャー』に出演していたんですが、同じ撮影所で同じ日に撮影が行われることが多かったんです。いつもメイクルームなどで顔を合わせているうちに、仲良くなりました。今回、セリフのやり取りができるのはすごく嬉しいですね。

――ライバル意識はありますか? 周囲は“仮面ライダー龍玄VSトッキュウ4号”と煽りそうですが…。

そうですよね(笑)。同い年で、負けたくない気持ちはあります。アクションの激しい舞台になるでしょうけど、僕はどちらかというとアクションは苦手で、流星はめちゃくちゃカッコいいんですよ! そこは頑張らなきゃと思ってます。

13歳での過酷な初舞台とカーテンコールの快感



――俳優デビュー作の『エブリ リトル シング'09』以来、ほぼ毎年、舞台に出演されてきました。舞台ならではの魅力をどんなところに感じていますか?

舞台は生ものなんですよね。見に来てくださったお客さんが目の前にいるとすごく緊張しますけど、稽古のときよりも僕らの気持ちも盛り上がって楽しいです。毎回、噛まないかな、セリフ飛んだらどうしよう! ってドキドキしてるんですけどね(笑)。



――『闇狩人』は『エブリ リトル シング'09』と同じ銀河劇場での上演ですね。

デビューしたときのことはハッキリと覚えていますし、変な感じもしますね。あのとき、あのステージでものすごく緊張していた自分が、同じ場所で今度は主演させていただく…そう考えると、地道ではあるけど少しずつ成長できているのかな? とも思えます。

――先ほどからたびたび「緊張」という言葉を口にされますが、かなり緊張するタイプですか?

めちゃくちゃ緊張しいです! 特に舞台は…本番直前は暗〜い気持ちになります(苦笑)。一度、飛び出しちゃえば楽しいんですけど、直前が一番怖いんですよね。毎回、段取りを頭の中で確認して「大丈夫、大丈夫」って自分に言い聞かせてます(笑)。

――それほど緊張するタイプで、そもそもなぜ俳優になろうと? 芸能界入りのきっかけは…

地元でスカウトされました。

――最初、女の子と間違えられたというのは、ファンの間で有名な話ですね。

恥ずかしいから言わないようにしてるんですけど、僕が「スカウトで」と言うと、必ずマネージャーさんが「女の子と間違えて」って言うんですよ…。それであちこちに広まったんですね(笑)。ただ、最初はこういう仕事にまったく興味なかったんです。いや、興味以前に何も知らなかった。



――映画やテレビドラマもほとんど見たことがなかったとか?

はい。だから、こういう仕事があるってことも認識してなくて、まるで別世界のことで…。いまでは考えられないですが、事務所に所属している女優さんたちの名前を聞いても誰も知らなかったです。

――ちなみに当時は何に夢中だったんですか?

昔からゲームとアニメが大好きです。友達と外で遊ぶよりも弟たちと家でゲームするほうが好きだったりして。友達に誘われても「行けたら行く」って言葉をよく使ってましたね。というか、いまもよく使います(笑)。

――(笑)。それでも、誘われてこの世界に飛び込んだ理由は?

「一度だけ舞台に出てみて」と言われたんです。いろんな話を伺って、そこまで言っていただけるなら、一度だけ試してみようかと好奇心だけでやってみました。それが『エブリ リトル シング’09』だったんですけど、稽古がめちゃくちゃきつくて…。

――初めての作品でかなり鍛えられたわけですね?

そうなんです。最初が舞台で、本当にいろいろ勉強させていただけました。でも、冷静に考えると、何も知らない13歳がいきなりお客さんの前で演技してたって怖いなぁって思いますね。

――当時はどんな心境でした?

とにかくつらかったです。演技に加えてダンスまでしなくちゃいけなくて、俳優ってここまで何でもやらないといけないのか!こんなにきついものなのか!って。でも、本番が終わってカーテンコールに出て客席を見たとき、ものすごく気持ちよくて、達成感もあって…。

――それでやみつきに?

そうですね…。とはいえ「つらい!」「きつい!」って気持ちのほうが強かったですけどね(笑)。