ドイツ西部、デュッセルドルフ市、普段なら中央駅はガラガラだが今日は違う。ホームや連絡通路などが若者達であふれ、欧州各国の言語が聞こえる。多くの人達が変な服を着ているうえ、仮面もしており、色とりどりのSFっぽいコスチュームも付けている。ん、何だこれは? スターウォーズ・オタクの集会? いや、ダース・ベイダーもいないし、チューバッカの姿もない。どうやら、日本の漫画、コスプレやビジュアル系のファン達が主に集まっている。調べると、ああ、今日は毎年恒例「日本デー」の日だった。


日本デーは2002年に始まり、2015年の今回は14回目の開催。主催者やスポンサーは、デユッセルドルフ市、NRW州、日本クラブ、デュッセルドルフ在住の日本総領事に加え、驚くことに千葉県もいる(デュッセルドルフ市の姉妹「都市」のため)。日本デーは毎年の様に訪れる客が増え、客数はなんと70万人にものぼる。欧州最大規模の日本文化イベントといわれている。


日本デーでは文化的にハイレベルなパフォーマンス各種のほかにコスプレ・ビジュアル系・漫画・アニメなどのポップカルチャーから、日本の武道各種・生花・折り紙・着物の試着・レストランの屋台等々まであり、屋台は計80個以上もあるので、様々な日本文化を肌で感じることができる。

ポップカルチャーに興味を持ち、北ドイツのデンマーク国境付近キール市からはるばるやってきたザビーネ(19)は、SFを連想させるキラキラした服を着ており、日本で開発された「ドラゴンネスト」というオンラインゲームのキャラクターの格好をしていた。「そのキャラクター自身になりたいからこんな仮装をしているのではなく、なるべく多くの人達がそのゲームの素晴らしさを知ってもらえるように日本デーを訪れた」とのこと。



また、囲碁の屋台で友達にその魅力を説明していた、フランクフルトからやってきたアンドレア(17)は「チェスよりも囲碁の方がメリハリがあり、展開が激しいから楽しい」と語っており、彼女の囲碁への関心は並々ならぬもののようだ。

だが、ヨーロッパの若者達の多くは残念ながら日本の伝統文化ではなく、ポップカルチャーにしか興味を持たない傾向がある。このことをどう思うのか、ニコン・ドイツの社長で日本クラブの文化部の部長を務めている田中英彦氏にインタビューすると
「今から100年ぐらい前を振り返ってみれば、印象派・表現派、アヴァンギャルドが怪しく思われていたかもしれないが、後になってそれらは人類文化の観点から欠かせない物として認められるようになった。同じ様に今から50年とか100年後にも漫画・アニメ等々が日本文化、人類文化の重要な一部として認められるようになる可能性は高い」と語ってくれた。

来年の5月末にもまた次の日本デーが行われる。ドイツ、いやヨーロッパ全体のオタク達はまた一所懸命仮装や覆面を準備し、このイベントの到来を待ち望んでいるはずだ。

ライタープロフィール:ドイツのロルちゃん。80年代後半東京に住んでいた経験があり、今現在はドイツ西部、メアブシュ市に住居を持っている。2008年以来特にYouTubeで活動し、ブログや本の執筆にも挑んでいる。