海外の映画ではときどき出てくる里子制度。日本ではまだまだ聞き慣れない制度ですが、どのようなものなのでしょうか。このたび自身の里親体験を綴ったエッセイ『うちの子になりなよ』(イースト・プレス)を出版された漫画家の古泉智浩さんにお話を伺いました。


―――さっそくですが、里親になった理由はなんなんでしょう?

うちではずっと子どもが欲しくて不妊治療を僕が39歳のときから6年間続けていました。いつまでも子どもができなかったので踏み切ったんですよ。次はできるだろう次はできるだろうと続けて泥沼になって。夫婦仲もギスギスするしお金も出ていくし、何もいいことがなかったです。総額600万円かかっているという事実を知って愕然としました。

―――女性が40歳くらいだとまだ子どもができる可能性があるのでは?

それが泥沼のもとだと思います。テレビでは高齢の芸能人の成功例だけが放送されるじゃないですか。芸能人は常人よりはるかに幸運に恵まれている人で、引き寄せる力の物凄く強い人だと思うので、一般人が自分もそうだと考えるのはすごく問題があると思います。僕は警鐘を促したいです。

―――里親制度はどんなものでしょうか?

里子あるを一定期間、実の親から預かる制度です。養子と里子とは違います。養子はその子どもを自分の籍に入れて法律上の親子になります。里親には養育権はありますが、親権はありません。正直、円満な家庭ばかりなら必要のない制度です。里親、里子双方の家庭の不幸せによって成立している制度なので、心苦しい部分があります。

―――里親制度にはどんなことが必要なんでしょう。

なんとなく地域によって違いがあるようですが、日本では婚姻していて、できれば専業主婦の家庭がいいというような風潮です。収入や環境などの調査もあります。困っている子どもを預けるわけなので、狭い家や収入の低い家には預けづらいのではないかと思います。ただ預かって育てていても、もし妻と離婚でもしたら児童相談所に子どもを預けてもらえなくなるし、養子縁組もできるかどうか不確定ですし、その間に実親さんの条件が整って返して欲しいと言ったら返さなくてはいけません。

できれば今の子を養子縁組して法律上の親子になりたいです。そのためには実親の許諾をもらって裁判所の判断を仰がなければなりません。

―――里親になることになかなか踏み切れない人もいると思うのですが?

踏み切れるかどうかはご本人の気持ち次第なので、なんとも言えません。

―――里親制度はこれからどうなると思いますか?

里親制度は自然に広がると思います。妊活がちょっと前に流行っていたので、不妊治療でぼろぼろになった人は自然に辿り着くのではないでしょうか。自分は一人っ子なのが嫌だったので兄弟にするつもりだったんですが、今は妻が腰を痛めたりしてたいへんなので、しばらくもう一人預かるのは止めようと思っています。

『うちの子になりなよ』 には、そんな里子のいる日々について男性の視点からとても詳しく綴られています。里子の赤ちゃんが来て、家族仲もますます良くなったという古泉さん。さまざまな家庭に希望を与える一冊になるかもしれません。
(カシハラ@姐御)