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労働者の街・西成の様相は、ここ4年ほどで大きく変わった。かつて通りを埋め尽くしていた労働者相手の一杯飲み屋や雑貨店、洋品店の類いは急減し、通り沿いの店舗の7割はシャッターが閉められたままである。

しかし、よく見ると、シャッターを閉めた店舗の合間合間に、赤、ピンク、黄緑色といった、妙にけばけばしい原色の看板が立ち並んでいることに気づく。「カラオケ居酒屋」と書かれているが、カウンターの中を覗くと若い女性が数人立ち、どう見ても“ガールズバー”の体裁である。

「店名だけじゃわからへんけど、暖簾の真ん中の垂れ布2つぶんくらいを上にあげてる店は全部中国系や。4年ほど前からぽつぽつと出店しはじめ、今ではこの有様や。日本人経営の店より多いんちゃうか。不況と高齢化でこの街もすっかり寂れてしまった。今も残っている日本人の飲み屋は婆さんとオバチャンばかり。それに比べ、中国系の店は、どこも20代の女のコがメインや。そりゃ、客はそっち行くがな。まあ、時代やな。しゃあないわ」(地元商店主の男性68歳)

実際、最寄り駅である地下鉄動物園前駅を出てアーケード街に入ると、いたるところに中国系の飲み屋が立ち並んでいるのがわかる。地元の不動産業者によれば「西成全体で100店以上はある」とのこと。シャッター街に店を出して儲かるのか?客はどこから来るのか?謎は深まるばかりだ。

夕方5時過ぎ、西成の“最深部”、萩之茶屋本通商店街に向かう。ここは西成のなかでも、もっとも中国系の店が集中しているエリアのひとつだ。通りを歩いていると、すかさず店の中から女のコが顔を出し、「お兄さん、どうぞ」と声をかけてくる。そのうちの一軒に飛び込んでみた。

一歩足を踏み入れてみると、なんとも和やかで明るい。この手の店にありがちな“ヤバさ”は皆無である。実際、値段も相当安い。数年前までは一般的なガールズバーのように1時間3000〜4000円のセット料金の店も多かったというが、現在は、チャージもかからず、ビール1杯飲むだけでもOKという店が主流だという。

生ビールが500円、サワー類は400円、つまみは板わさ、漬け物など簡単なものが中心で500円程度、カラオケは一曲100円が相場だ。つまり、かなり安い値段で、若い中国人女性を相手に、1時間でも2時間でも飲むことができるのだ。営業時間は昼の1時から、遅くとも夜11時まで。

「8割が地元・西成のお客さんや。地元のお客さんは、あまり長居しないね。1、2杯飲んで、さっと帰る人がほとんど。おじいちゃんが多いからね(笑)」(福建省出身のママ26歳)

最近は、格安で若い女性と飲めるといった噂が広まり、西成の外からやってくるサラリーマン客なども増えているという。それにしても、なぜ、ここ西成にこうした形態の店が急増したのだろうか?後日、地元不動産業者の社長がその理由の一端を語ってくれた。

「そもそも、このへんじゃ有名な中国系の不動産業者があって、そこの経営者夫婦が、これまで日本人が持っていた店舗の権利を“即金”で買い漁るようになったのが始まりですわ。即金だから二束三文のカネでも飛びつく人が多い。そして、在日中国人向けの新聞なんかで一斉に募集をかけたんですわ」

それにしても、いくら格安とはいえ、先の見えないシャッター街に続々と進出し、店を繁盛させている中国人のパワーには驚かざるをえない。大阪の「新名所」となるか!?

(FLASH 2015年12月15日号)