ケンカにしないためには、「上流」で食い止めるのがコツ(画像はイメージ)。

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「ケンカなどしても、誰も気分が良くないし、疲れるから、もうやめよう」。
そう思いつつ、気づいたらまたいつものよういケンカ……という夫婦、親子は少なくないかも。

なぜケンカになってしまうのか。『あなたの恋愛がうまくいかない本当の理由〜傷ついた心を癒す恋愛セラピー〜』(マイナビ文庫) 著者で、恋愛セラピスト&パーソナルコンサルタントのあづまやすしさんに聞いた。

「家族問題研究家のジョン・ゴットマン博士が『なぜケンカになるか』について研究しているのですが、その研究によると、夫婦を二人きりにしてデリケートな話題について話し合いをさせ、その様子を別室などから見ていると、5分程度の会話でその夫婦が離婚するかどうかを80%以上の確率で予言できるといいます」

博士によるとケンカに至る道筋は一通りしかなく、『批判→防衛→見下し』だそう。しかも、どんなケンカでも同じだと言う。
「例えば、ダンナさんの帰宅が遅いとき、『あなたっていつも帰りが遅いわよね』と相手を主語にして言うのが批判です。すると相手は『オレには仕事があるんだよ』などと自己正当化(これが『防衛』)、そして最後に、『あなたって仕事のことばかりで、家族のことを全然考えてない!』などと人格や性格に言及するのが『見下し』です。こうなると話し合いは決裂し、イヤなケンカになってしまいます」
具体的なやりとりが目に浮かぶようだが、ではケンカへの流れを止めるには、どうしたら良いのか。
「ケンカの道筋は、できるだけ上流で食い止めるべき。例えばダンナさんの帰りが遅いなら、『なんで遅いの?』という批判ではなく、『帰りが遅くて寂しいな。ごはん一緒にたべたいし』と、自分の感情を率直に表現する「苦情」を言うと、ケンカの流れを止めやすい。実はこの、素直な感情を表現できない女性が増えていることも問題です」

とはいえ、「ダンナが批判的なことを最初に言ってくる」ということも多いもの。その場合あなたは「防衛側」のターン。防衛側のターンでは「受け止め」が大事になると言う。
「たとえば旦那さんが『お前、皿の洗い方が汚いぞ』と批判してきた。ここで『毎日何枚洗ってると思ってるの!?』と自己弁護したら「防衛」になり、ケンカへ一直線です。そうでなく、『お皿にカピカピがついてるのが嫌なのね』と相手の言い分をオウム返しするのが「受け止め」です。すると、相手の態度が軟化しやすくなります」

「受け止め」の後には、自分の側の言い分に従って、3つの道があると言う。
1つ目は、「はい、その通り。そうします」。
2つ目は「その通りだけど、今はそこまでできないので、大目に見てね」。
3つ目は「私はそうは思わない」だそう。
「1つ目の場合、『確かに汚いね。もう一度洗うね』。2つ目は『確かにそうね。でも、こびりついているのは落としづらいから、大目に見てほしいな。どうしても気になるなら、あなたよろしく』。3つ目は『ごめんねー。私はきれいだと思うんだけど』というパターンです」

ポイントは、いったん「受け止める」こと。これをする前に2や3の主張をするとケンカになりやすいそうだ。
「3つ目の言い方と似ているけれど大きく違うのが『それは(そもそも客観的に)違う』という言い方。『私はそうは思わない』という言い方は、自分の考えも大切にしつつ、相手の陣地を全部奪わない言い方です」

ちなみに、「批判」の段階を経て「見下し」にまで入りかけたら、ケンカの一本道からそれる方法はほとんどないため、「タイムアウト」でクールダウンするしかないと言う。

ついケンカしがちな人は、まず批判ワードを自分が口にしていないかをチェックしてみよう。そうした意識付けの繰り返しで、きっと関係性は変わってくるはずだ。
(田幸和歌子)

女と男の心のヘルス 癒しの心理学