8月12日に起こった中国・天津の爆発事故に多くの日本人は衝撃を受けた。

だが、その後も山東省で同様の事故が続くなど中国ではいまや珍しいことではない。もしかしたら、今回は「この程度で済んで良かった」のかもしれないのだ。

天津だけでなく、中国では年に何度も爆発事故が起こっている。それは化学工場だけでなく、宇宙ロケットといった国家プロジェクトにも及ぶ。さらに「人糞由来のメタンガスが充満した下水道」にたばこの人が引火。マンホールが吹き飛ぶような事故も珍しくない。

もはや中国における危機管理能力の欠如は明らかだ。しかし、そんな中国において原発の建設ラッシュが進んでいる。現地の事情に詳しいジャーナリストの程健軍(チェン・ジェンジュン)氏はこう警告する。

中国では、深刻な大気汚染の重大原因とされる石炭利用の火力発電が問題視されており、これを大量の原発に換えるプロジェクトが進行しています。つい先日も新たな原発の稼働がスタートし、現在26基が運転中で、さらに25基がすでに建設中。将来的には100基以上が稼働する可能性が高いでしょう」

しかも、その原子炉は中国が独自に開発した“メイド・イン・チャイナ”。どう考えても安全性が心配だ。

中国製原発『華龍一号』は、中国核工業集団公司(CNNC)と中国広核集団有限公司(CGN)が共同開発したもので、すでに最初の実証炉プロジェクトとなる福清原子力発電所5号機の建設工事が福建省福州市で始まっています。想定建設費はアメリカ製やフランス製の約半額と安いのが特徴です。

ただ、表向きは第3世代原子炉とされていますが、実際には旧式で安全性に劣る第2世代原発の焼き直しに限りなく近い。現在、中国で建設中の原発のうち、本当に安全性が高いとされる新型の軽水炉を採用しているのはたった3ヵ所だけです」

ちなみに、中国の原発の多くは南東部の海沿いに林立している。偏西風や海流の向きを考えても、もしここで万が一、大事故が起これば、日本にも何かしらの影響が及ぶ可能性は非常に高い。

となれば、今後はいっそう中国の爆発関連ニュースを注意して見ていく必要があるが、前出の程氏はその際の注意点を次のように述べる。

「人口が多く国土の広い中国のメディアには重大なニュース、国家的なニュースを優先させるために地方の小さな事件や事故をスルーする傾向があります。その中でも特殊なのが“35人ルール”という暗黙の了解。死者35人未満の小さな事件や事故は、全国ニュースにならないというものです。

つまり、どんな大きな事件や事故が起きても、当局は死亡者数を35人未満と発表すれば、実質的には“なかったこと”にできる。中央から地方へやってきた官僚は任期中に問題を起こしたくないでしょうから…。実際には各地で頻発して死者も出ている爆発事故がまったくニュースにならないのがいい例です」

下水道から原発まで、大規模な「チャイナボカン」の危険がいっぱい、しかもそれが報じられるかどうかすら不透明。こんな中国、やっぱり怖すぎる!

もっとも日本でも川内原発が再稼働、原発ゼロを推進すれば隣国にも「やめようよ」と言えるのだろうが…。

(取材・文/近兼拓史)