2015年の日本人先発投手たちは“全滅”の事態に【写真:田口有史】

<h2>ダルビッシュ、和田、岩隈に続いて田中もDL入りという異常事態に</h2>

 ヤンキースの田中将大投手が右前腕部の軽度の張りと右手首の腱の炎症により、15日間の故障者リスト(DL)に入った。右肘靭帯部分断裂で約2か月半離脱した昨年に続くアクシデントで、メジャー復帰まで1か月以上を要する可能性も浮上している。

 これで今季、MLB球団に所属する日本人先発投手は“全滅”。現時点で全員がDL入りという異常事態になっている。近年は「メード・イン・ジャパン」のスターターが目覚ましい活躍を見せ、メジャーを席巻していただけに、寂しい状態だと言わざるをえない。

 今季は、開幕前のオープン戦でレンジャーズのダルビッシュ有が右肘の異常を訴えて離脱。靭帯部分断裂と診断され、トミー・ジョン手術(靭帯再建手術)を受けた。当然、開幕はDLで迎え、今季中の復帰も絶望的。復帰までは12〜15か月を要するとされている。

 また、カブスの和田毅投手もキャンプ中に左太ももを痛めて、開幕をDLで迎えた。現在はマイナーでリハビリ登板を続けており、まだメジャーでの登板はない。

 昨年、右手中指を負傷して開幕をDLで迎えたマリナーズの岩隈久志は、今年のキャンプでは順調に調整を続けていた。しかし、開幕から3試合で0勝1敗、防御率6.61と不調で、24日から右広背筋の炎症でDL入り。復帰までに2〜4週間を要する見込みだ。

<h2>過去2年と比べると、4月の日本人投手の成績の違いは歴然</h2>

 そして、自身初のメジャー開幕投手を任された田中は2戦目までは防御率7.00と不調だったものの、18日のレイズ戦は7回無失点、23日のタイガース戦は7回途中1失点と好投。防御率を3.22まで向上させ、2勝1敗と勝ち越していたが、昨年の右肘とは違う右前腕部と手首の異常で離脱した。

 最近2年と今シーズンの4月の成績を比較してみると、その違いは歴然だ。

【2015年】
田中将大(ヤンキース):4試合2勝1敗、防御率3.22
岩隈久志(マリナーズ):3試合0勝1敗、防御率6.61
ダルビッシュ有(レンジャーズ):DL入りのため登板なし
和田毅(カブス):DL入りのため登板なし

【2014年】
黒田博樹(ヤンキース):5試合2勝2敗、防御率5.28
田中将大:5試合3勝0敗、防御率2.27
ダルビッシュ有:5試合1勝1敗、防御率2.59
岩隈久志:DL入りのため登板なし
和田毅:マイナー契約のため登板なし

【2013年】
黒田博樹:6試合4勝1敗、防御率2.25
岩隈久志:6試合2勝1敗、防御率1.67
ダルビッシュ有:6試合5勝1敗、防御率2.33

 2014年は田中、ダルビッシュが防御率2点台と好調。ダルビッシュはエースとしての役割を果たし、田中はルーキーながらメジャーを席巻した。黒田も4月は調子が上がらない中で我慢の投球を続け、その後は怪我人が続出したヤンキース先発陣の中で1人だけローテーションをシーズン終了まで死守。11勝9敗、防御率3.71の好成績を残した。

<h2>2013年は黒田、岩隈、ダルビッシュがメジャーを席巻</h2>

 また、岩隈は1か月出遅れながら復帰後は本来の投球を見せ、最終的には28試合登板で15勝9敗、防御率3.52。和田は7月にメジャー復帰し、13試合で4勝4敗、防御率3.25と奮闘した。

 2013年は松坂大輔がインディアンスとのマイナー契約で開幕を迎えたものの、ほかの3人の日本人先発投手が開幕から絶好調だった。黒田はサバシアが不調の中でチームを牽引。地元メディアやチームメートから完全に名門球団の「エース」として認められた。

 岩隈は当時は貧弱だったマリナーズ打線からの援護に恵まれず、白星は伸ばせなかったものの、防御率1点台と抜群の安定感を見せた。ダルビッシュもエースとして君臨。勝ち星、防御率ともに文句のない成績をマークした。

 この年は前半戦で3投手の実力が際立ち、防御率やWHIP(1イニングあたりのヒット+四球)のリーグ10傑にそろって名を連ね続けた。一時、防御率トップに立った黒田は後半戦に不調に陥ったものの、岩隈とダルビッシュは最後まで力強いピッチングを続け、サイ・ヤング賞の投票ではダルビッシュが2位、岩隈が3位に入った。

 過去2年と比べてみると、先発投手全員がDL入りしている現状は、まさに異常事態。田中も岩隈も復帰までに1か月程度は要すると見られ、しばらくは日本人投手が先発する試合を見ることはできない。昨年は黒田、岩隈、ダルビッシュ、岩隈の誰かが毎日のように、しかも、先発ローテの柱として投げていた時期もあっただけに、怪我をした選手の早期復帰が待たれるところだ。