9日、慶大で講演する元ドイツ大使の木村敬三さん(撮影:徳永裕介)

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冷戦時代の東西両ドイツと統一後の同国で大使を務めた木村敬三さんが9日、東京都港区の慶應義塾大学で講演した。木村さんは「ドイツは拡大EUの中で中心的な国で、いわば欧州の代表。今後、必ずや発言力が増す」とし、日本にとっても政治的、経済的に重要なパートナーであると述べた。

 木村さんは、1986年−1988年は東ドイツ(ドイツ民主共和国、統一により消滅)、1989年−1992年は西ドイツ(ドイツ連邦共和国)で大使を務め、1990年の東西ドイツ統一を目の当たりにした。

 講演で木村さんは、ベルリンの壁崩壊直前の1989年9月に行われた東ドイツ建国40周年祭で、共産党の若者が来賓のゴルバチョフ・ソ連共産党書記長の前で一斉に「ゴルビー、助けてくれ」と叫んだエピソードなどを紹介。ただ、現在のドイツでは東西の経済格差のために、西側が東側を援助する形になっており、お互いに心理的なしこりができているという。

 木村さんは、村上春樹作品のほとんどがドイツ語に訳されていることなどを例に、対日感情が極めてよいと強調。また、政策面でも「ドイツは欧州の国の中で、歴史的にロシアと一番関係が深い。日本がロシアと外交する際には、ドイツの意見を聞くことが必要ではないか」と述べた。また、「来年はサッカーW杯もあるので、この機会に是非行ってほしい。自転車でドイツをまわると、とても楽しい」と若者に呼び掛けた。【了】