遠藤保仁を酷使する選択で賭けに勝った長谷川健太監督
天皇杯準決勝の清水戦のあと、遠藤の疲労について聞かれた長谷川健太監督は「疲れはあると思う」と明言した。だが、監督は最終節、徳島戦のタイムアップまで遠藤を変えることはなかった。
「ヤット（遠藤）には話をして、あそこは頑張ってもらうしかないと言ったんです。ヤットも行きます、と。祈る気持ちで送り出しました」
長谷川監督の祈りが通じ、遠藤は倒れたりケガをすることもなくシーズンを終了。G大阪に栄光をもたらし、本人も最優秀選手に選ばれた。長谷川監督は賭けに勝った。
実は今季の開幕前、長谷川監督と2人で話をしたとき、「昇格即優勝を本気で狙っている」と語っていた。宣言どおりの成績なのだ。
「なかなか苦しいスタートだったので、残り2節で首位に立つとは思っていませんでした。10月の鹿島戦（第27節・3-2）で勝ったのが大きかったと思います。あそこからチームに勢いが出た。最後はみんな良く戦ってくれました」
確かにシーズン序盤は不調で降格圏まで沈んだ。その時期に監督は諦めなかったのだろうか。
「毎シーズン、チャンスがありそうなチームが諦めて落ちていくのを見ていましたから、優勝はずっと諦めませんでした」
監督のぶれない気持ちが最後に実を結んだと言えるのかもしれない。6年間の清水の監督時代には一度もタイトルが取れなかった。だがそんなシルバーコレクターが、今まで逃していたゴールドをかき集めようとしている。
「清水の時に試行錯誤して、選手に迷惑掛けながら、最後に喜び合うことができなかったので……その経験を生かして、何とか今年はと思っていました。最後は選手に引っ張られながらタイトルが取れたと思います」
監督はそう言うと、ホッとした顔をしてミックスゾーンを去って行った。
【取材・文／日本蹴球合同会社 森雅史】
