4K解像度ディスプレイの普及でアダルト向けコンテンツが果たす役割とは?
By bacoo
家庭用ビデオデッキの普及期にVHSとベータマックスという2種類の規格が争ったとき、VHSが爆発的に普及して勝利を収めた理由の1つとして、アダルトビデオがVHSで積極的にリリースされ、販売時にオマケとしてつけられるなどしたことが挙げられます。現在、新しい映像技術として4K解像度ディスプレイ技術を普及させるべく各社が製品開発に取り組んでいますが、アダルトコンテンツは4K解像度ディスプレイ普及でも大きな役割を果たすのでしょうか。
http://www.theverge.com/2013/11/25/5143376/sex-pixels-what-4k-means-for-porn
2000年代にポストDVDの座を巡ってBlu-rayとHD DVDが激しく争ったことは記憶に新しいところですが、当時、「アダルトコンテンツがどちらの規格から出るかによって勝負が決まるだろう」という見解がまことしやかにささやかれるほど、新しい映像規格の普及にアダルトコンテンツが寄与する役割は大きいと考えられていました。同じような見解は、3Dテレビの普及についても出されていますが、4K解像度ディスプレイが普及するかどうかも、アダルトコンテンツの充実具合次第だという根強い意見があります。
By Bogdan Clinci
4Kディスプレイは、横4000×縦2000前後の解像度に対応しており、現在普及している1080pのHDビデオの約4倍の画素数で映像を描写でき、日本では2014年7月からテレビ放送の開始が予定されています。
この次世代のディスプレイ規格である4K解像度がアダルトコンテンツにもたらす恩恵は、これまで以上により鮮明にセクシー女優の肉体美を鑑賞できることが挙げられています。他方で、4K映像が持つあまりの生々しい描写・表現能力ゆえに、アダルトコンテンツの愛好家の幻想を打ち砕く結果になるかもしれないという不安も抱かれています。
By Konstantin Kryukovskiy
そんな中、2013年12月1日ついに、世界で初めての4Kアダルトコンテンツを提供するサイトであるHuccioがオープンし、これに続けと他のサイトも4Kアダルトコンテンツサイトオープンに向けて準備を進めています。例えば、iPadでの視聴に最適なアダルトコンテンツを提供するPink Visualは、3Dでのアダルトコンテンツにも一早く取り組んだように、4Kでのコンテンツ提供にも非常に積極的です。
もっとも、4K解像度のコンテンツを制作するためには、専用カメラなど高額な設備投資が必要であることから、4Kアダルトコンテンツへの移行に対して慎重な意見も多いようで、ピアスやタトゥーをしたセクシー女優ムービーに特化したBurning Angelは、今のところ4Kコンテンツの制作予定はないと公言しています。Burning Angelでは、2000年代にHD画質のアダルトコンテンツに参入した際に、従来のSD画質コンテンツとは異なるライティングやメイキャップ方法の開発に時間がかかったのに対して、思うような画質の向上が見られなかったという苦い経験が4K導入を躊躇させる要因になっていると説明しています。
By Konstantin Kryukovskiy
アダルトコンテンツ情報を扱うXBIZが、アダルトコンテンツ提供者に4K解像度のサービスに関するアンケート調査をしたところ、回答者の40%が4K技術が現在のビジネスに影響を与えないと回答し、また36%が4Kへの移行が時期尚早であると回答しました。「4Kアダルトコンテンツがビジネスとして成功する」と回答したのはわずかに18%に過ぎず、メーカーは金銭的に大きなリスクを伴う4Kアダルトコンテンツの制作に二の足を踏んでいることが明らかになっています。
「アダルトコンテンツ業界に4K解像度が普及するかどうかの究極的な決め手は、従来のSD画質やHD画質に対する優位性ではない」と指摘しているのはThe Vergeで、これによると、対決すべき相手は無料のアダルトコンテンツだとのこと。例えば、PornHubの提供するアダルトコンテンツは、有料のDVDアダルトコンテンツに比べて画質面で大きく見劣りするにもかかわらず、多くのポルノ愛好家の支持を得ています。このようなアダルトコンテンツサービス業界の現状を考えたとき、4K解像度の高画質が、消費者の財布のヒモを緩めることに成功するのかは大いに疑問が残るところです。
もっとも、このような4K解像度のアダルトコンテンツに対する悲観論に対して、前述のPink Visualは強気の姿勢を崩していません。有料サイトであるPink Visualは、無料のアダルトコンテンツによる攻勢を受けつつも、多くのファンをサイトに集めることに成功しており、高品質のアダルトコンテンツを求める顧客は世界中にたくさんいて、4Kコンテンツはまさに大きなビジネスチャンスであると考えているようです。
By Scott Maxworthy
VHS普及の影には、当時、映像でアダルトコンテンツを楽しむためには専門の映画館に足を運ぶか、8mmのブルーフィルムを手に入れて自分たちで上映する必要がありました。現在はビデオ自体を凌ぐ勢いでDVDがリリースされており、インターネットではちょっと検索するだけで簡単にアダルトコンテンツにたどり着き、楽しむことができるため、状況は同じだとはいえません。
「エロが人類の原動力」などと言われるように、4K解像度のアダルトコンテンツが出てくること自体が何かのトリガーになる可能性もありますが、リッチコンテンツ提供には回線速度向上も欠かせず、アダルトコンテンツの動向いかんで4K解像度が普及するか否かが決まるというものではなさそうです。
とはいえ、高画質なコンテンツを求める愛好家が少なからずいる以上、実現に向けて新技術の開発・導入にチャレンジする人も出てくるわけで、4Kの先に待つスーパーハイビジョン映像技術に向けて、思いもよらなかったような展開が訪れるのかもしれません。