Androidのアンディ・ルービン退任が意味するもの

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アンディ・ルービン

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グーグルは先ごろ(米国時間13日)、同社でAndroid部門の責任者を長らく務めてきたアンディ・ルービン氏の退任を発表した。これまでモバイルOS開発を率いてきたルービン氏だが、今後は同社のなかで「新たな章(a new chapter)」をつくり出す立ち場に回るという。



しかし、企業としてのフォーカスやリーダーシップという面からみると、ルービン氏の退任はグーグルにとって新たな時代の幕開けというよりは、むしろ経営体制の引き締めといった意味合いが強いものかもしれない。グーグル社内ではそんな見方も出ているという。つまり今回の人事には、2年前にあったマリッサ・メイヤーの事実上の降格とよく似た部分がある、ということだ。メイヤー氏は後にヤフーCEOに就任することになった(日本語版記事)。



2年前のメイヤー氏の場合も、今回のルービン氏の場合も、判断を下したのはラリー・ペイジCEOだ。ペイジ氏は2年前にCEOに就任して以来、それまで従業員が業務外の実験プロジェクトに情熱を注ぐことを推奨していたグーグルのなかで、プロジェクトの選択と集中を進めてきた。また同氏は、CEO就任後にメイヤー氏を自らの側近グループ(いわゆる「Lチーム」)のメンバーから外したり、自社のソーシャルネットワーク「Google+」により多くの資源を振り向けはじめたことでも知られている。



一部のグーグル社員はルービン氏の配置換えについて、メイヤー氏の時と同じようなことが起こったと受けとっているようだ。Android部門の新たな責任者には、Chrome部門を率いるサンダー・ピチャイが就任するが、同社のヴェテラン社員によれば、ピチャイ氏はペイジ氏と緊密な関係を築いているという。ルービン氏とピチャイ氏は、AndroidとChrome OSとの覇権争いや、将来のビジョンの違いなどから、これまでにも何度か衝突したことがあった。ともにLinuxをベースとするふたつのOSは、いずれひとつに統合されることになるだろう。Androidはスマートフォンからタブレットへと勢力圏を拡大し、Chrome OSはノートPCからより小型なものへと搭載されるようになっている(ルービン氏はこの点に関してコメントを差し控えている)。



以前のグーグルなら、たとえばAndroidとChrome OSで同じ機能へのアプローチのしかたが異なっていても、両方が開発を続けるといったことが許されていたかもしれない。しかし、ペイジ氏が目指すのは選択と集中であり、実際に同氏がCEO就任からまもなくGoogle Labsを閉鎖したことや、新製品のリリース数を絞り始めたこと、また業務以外の自由な開発を促す「20%ルール」に制限をつけ始めたことなどからも、そうした姿勢がうかがえる。



2つのOSをひとつにまとめていくという判断の背後には、それなりの考えがあるのかもしれない。しかし、Androidはいま途方もない大成功を収めているのに、その責任者が退任するというのは実に奇妙な話と言える。また、先ごろテキサス州オースティンで開かれていたサウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)ではグーグルも基調講演を行ったが、実はその数日前になって登壇者のリストからルービン氏の名前が消えるという出来事もあった。これは、今回の人事がグーグル関係者にとっても意外なものであったということなのかもしれない。




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