「金融円滑化法期限切れ」の衝撃。円安転換の分起点へ
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「この法案の再々延長はありません」

10月1日、中塚一宏・金融担当相は、これまで2回延長してきた「金融円滑化法」をこれ以上延長せず、来年3月末で終了にすると断言した。

金融円滑化法とは、銀行が融資先の中小企業から月々の返済負担の軽減を要請された場合、「できる限りそれに応じるよう努力すべし」という、きわめてあやふやな法律。法律の条文には「負担の軽減に資する措置をとるよう努めるものとする」とある。具体的には、元本や利息の返済猶予、金利の引き下げ、返済期間の延長など、貸し付し条件の変更を意味する。

これまで銀行は、中小企業のこうした要請を聞き入れることはほぼなかった。しかし、驚くべきことに金融円滑化法施行後は要請件数のうちの9割が受け入れられている。

銀行にとって元本や利息の返済を猶予することは、貸し出し条件の変更=リスケジュール(略して・リスケ)となり、それだけで延滞債権=不良債権扱いとなることが多い。ところが、金融庁は金融円滑化法の適用債権を「正常債権」として扱うよう銀行に指導した。

この法律が施行されたのは、リーマン・ショック後の世界的な大不況が懸念された2009年12月。当時は「平成の徳政令」として注目を集めたが、「銀行の不良債権が急拡大する恐れがある」として、政府与党からは反対する声も多かった。

同法による支援を受けた件数は約300万件に上り、その債権額は40兆円前後もあるとみられている(累計では約80兆円)。実際の債務企業数は40万社前後だというが、これは全中小企業420万社の1割に相当。適用件数や累計残高が多いのは、同じ会社が何度も返済猶予を申し込んでいるからだ。ちなみに、同法が適用された約40万社のうち、8割が再申請(2回以上の返済猶予)を申し込んでいるという。言い方は悪いが、ざっと32万社は?倒産予備軍〞ということだ。

過去10年の倒産件数の平均は年1万5000件前後。これがリーマン・ショックのあった08年の1万5646件をピークに減り続け、昨年は前年比14.4%減の1万2734件まで減少した(負債総額1000万円以上の倒産、帝国データバンク調べ)。

政府は金融円滑化法期限切れ後に4万〜5万件の倒産が起こる可能性があるとみている。だが、前述したように返済猶予を再三受けた倒産予備軍が32万社あるということは、連鎖倒産を視野に入れると、その2倍から3倍の倒産予備軍が存在する可能性がある。

3年弱で40兆円も不良債権が増加

銀行の不良債権問題は1990年代後半から日本経済を揺るがす大問題になり、03年に「小泉・竹中ライン」での抜本処理が行なわれるまで、10年以上にわたる金融危機や大不況の元凶になってきた。ピーク時の日本の不良債権の総額は87兆円程度( 98年の銀行自己査定による)、あるいは金融庁発表の43兆円(金融再生法開示債権、02年度末)とされるが、これは90年のバブル崩壊後から積み上がったものである。それに対して、今回は09年12月の金融円滑化法施行から3年足らずで40兆円もの不良債権が積み上がったことになる。

政府や与野党は金融円滑化法の期限切れに備えて、水面下でさまざまな対策を講じつつある。たとえば、?中小企業再生支援基金を創設(公的資金3兆円を投入)、?銀行の企業への出資規制緩和(出資上限を現行の5%から10〜15%に引き上げ)、?貸金業法の抜本的見直し(総量規制の撤廃、貸付金利の上限引き上げ)などだ。

この中で株式市場に最もインパクトがあるのは、?の貸金業法の抜本的見直し。来年4月以降、銀行は金融円滑化法適用債権を「延滞債権」として分類し、貸倒引当金を積むなどの処理を始める。再建の見込みがない貸付先については、不動産や売掛債権など担保の回収が一斉に始まるとみられる。以前は事業者金融や消費者金融が最後の砦だったが、06年に改正された貸金業法で総量規制(一部の例外を除いて年収の3分の1までしか借りられない)がかけられたため、今やヤミ金に走らざるをえない中小企業経営者が後を絶たないのだ。