ブラッド・ペニーが福岡ソフトバンク・ホークスから退団した。

　入団時の報道には「メジャー119勝」「リーグ最多勝」とあり、年齢も33歳で、若くはないが年寄りでもない。それだけに、不甲斐ない投球と早々の帰国に対しては、ペニーに批判的な報道やブログが目についた。

　もちろん、それが間違いだとは思わない。けれども、ペニーが本当に活躍すると思っていたのだろうか。獲得したこと自体に問題があったのではないか。

　この時期に書くということは、思いっきり後出しじゃんけんになる。それを承知で考察してみたい。

　まず、勝ち星はその投手を実力を正しく示すわけではない。

　５回以上を投げ、与えた点よりも味方が取ってくれた点の方が多ければ、勝ち投手にはなれる。ダルビッシュ有のメジャーデビュー戦がいい例だ。逆に、好投しても、味方の援護がなくて負け投手になったり、後続の投手が逆転を喫して勝ち星を消されることもある。

　通算119勝が表しているのは、メジャーリーグでそれなりに生き残ってきたということくらいだろう。2006年のシーズン最多勝にしても、ペニーの力だけで積み上げた16勝というより、打線の援護や巡り合わせの良さが絡み合った結果と見るべきだ（しかも、この年のナ・リーグには最多勝投手が６人もいた）。

　次は、昨シーズンの成績について見てみよう。

　2011年に規定投球回（162イニング）をクリアした94投手のなかで、ペニーの奪三振率3.67、防御率5.30、WHIP1.56はいずれも最悪の数値だった。セイバーメトリクス系の指標でも、FIP5.02とxFIP4.77はワースト２位、tERA5.32はワースト４位、SIERA4.98はワーストだ。

　それぞれの指標の細かい意味や数値がわからなくても、これだけ下から数えた方が早い順位ばかりが並べば、いい投球をしていなかったことは明白だ。

　2010年は故障によって55.2イニングしか投げていないので（これも不安材料のひとつだが）、単純に比較はできないが、2010年と2011年の数値を比べると軒並み悪化していて、速球の平均球速も落ちている。

　そんな投手を福岡ソフトバンクは獲得したのだ。

　さっさと帰国したため、年俸の全額を支払わずに済んだのは、実は福岡ソフトバンクにとっては幸いだったのかもしれない。