パナマで行われたワールドカップで、記念すべき初優勝を果たしたオランダ代表が、現地時間の昨日朝にアムステルダム・スキポール国際空港に到着。国営放送のNOS(日本でいうNHKに相当)をはじめとする取材クルーも駆けつけるなど、依然として盛り上がりが冷めやらぬ中、ナショナルカラーのオレンジに身を包んだ大勢のファンから、熱い祝福を受けました。

 NOSの記者から早速突撃取材を受けた、決勝戦先発のロブ・コルデマンスをはじめ、選手たちはファンや家族から次々に祝福のハグを受けます。その後、オランダ王立野球・ソフトボール協会(KNBSB)のハンス・メイヤー事務局長に連れられ、ブライアン・ファーレイ監督とコルデマンス、デビッド・バーグマン、シドニー・デヨングの3選手、さらに元代表捕手で、代表チームの広報担当として、今回帯同していたティジャーク・スミーツ氏が、優勝会見に臨みました。

 この席上、KNBSBの専務理事であるルード・クープマンズ氏から、ビッグニュースの発表がありました。タイトルを見れば、もうお分かりでしょう。来月11日、フーフトクラッセの個人・チームタイトル表彰式の後、全24代表選手が参加しての優勝パレードが、実施されることになったのです。すでにハーレム、アムステルダム、ユトレヒト、ハーグ、ロッテルダムの5都市が、同国野球史上における最大規模のイベントのホストシティとして、名乗りを上げているそうです。このパレードは、場合によっては1都市にとどまらず、街から街へ練り歩く形になる可能性もあるとか。

 日本では報道されていないため、いまいち実感がわきませんが、現地での代表チームに対する報道の盛り上がりっぷりには、凄まじいほどのものがあるようです。日曜日には、国内すべての一般ニュース番組(日本でいうニュースウォッチ9や、報道ステーションなどに相当)が、新王者の誕生をトップニュースとして伝え、月曜日には国内の多くの新聞が、このニュースを写真付きで、1面トップの記事として報じました。今回行われた優勝会見でも、テレビ・新聞・ラジオ・ネットという、あらゆるメディア媒体から質問攻勢となり、その熱気は数か月前、ヴァッセン・パイオニアーズの3万人規模の新球場建設が発表された時とも、比べ物にならないほどだったそうです。

 また一般レベルにとどまらず、政治も目ざとく反応したとか。スミーツ氏は会見の場で、決勝戦後の深夜、パナマが朝になるのを待ち切れなかった、マーク・ルッテ首相からの祝福の電話に叩き起こされた、というエピソードを披露。日曜朝には、スポーツ大臣のエディス・シッパーズ氏がお祝いのメッセージ。また10年ほど前、自身の夫である国王と3人の息子たちが、宮殿の庭で野球をして遊んでいたというベアトリクス女王までもが、代表チーム宛てに祝電を打ったそうです。

 しかしながら、オランダ本国でのこの熱気を肌で感じることができたのは、残念ながら今回の代表選手全員ではありません。なぜなら日曜の朝には、残る面々はオランダ本国とは別の目的地に向けて飛び立ったため。MLB傘下でプレーしている面々は、秋以降のプレーに備えてアメリカへ飛び、またある者はオランダ野球のもう1つの根拠地・キュラソーへと戻りました。しかしパレード当日までには、再び全員がチームとして本国に終結し、華やかなパレードの場で改めて、自らが成した偉業の大きさをかみしめることになりそうです。

 オランダが2年前、WBCで快進撃を演じた時も、これほどまでの歓迎と祝福を国民から受けたことは、おそらくなかったでしょう。あれからまだ2年と半年しか経っていないにもかかわらず、こうして全土を揺るがすほどのインパクトを与えるまでになったということは、本当に素晴らしいことであると同時に、その成長ぶりに少々恐怖感すら覚えます。どこか、日本のなでしこブームにも似た所を感じる、今回のムーブメント。これをきっかけに、本格的にオランダ本国にも野球ブームが来ればいいですね。