東日本を中心に、国民の間に「節電」意識は相当に定着したようだ。だが、現在の風潮には「勘違い」や「行き過ぎ」があるのも事実。電力需要は冬にも再度ひっ迫すると言われているだけに、冷静な対応こそ必要だ。


■ネオンの消灯は不要!
荒川区に住む筆者の部屋からは、上野や秋葉原のビルが見える。以前は、夜間に電気店の広告ネオンが明るく見えたものだが、いまや消えたままだ。看板広告が「自粛」されているのである。時間にもよるし、看板の性質にもよるので一概には言えないが、これはほとんど「節電」には効果はない。ネオン看板を使用する時間帯、すなわち夜間の電力には、十分に余裕があるからである。

■安全性を無視してはいけない
経費節約のために、看板を所有するビルや企業が「節電」するのは自由だが、それでお客が減ったり、広告収入がなくなるのでは、経営にとっては逆効果である。また、夜間の駅・道路などで、いたずらに電気を暗くすると、防犯上の問題も出てくる。社会の存続には必要なコストというものがあり、それを無視した「節電」論議は、本末転倒である。要は、バランスを考えることだ。

■「電力使用状況グラフ」は正しいのか?
ポータルサイトなどには、電力会社が提供する情報に基づいた「電力使用状況グラフ」が表示されている。だが、この数値は正しいのだろうか? 一説では、このグラフの「供給電力」は「底下げ」(底上げの反対)されており、実際の供給可能電力はもっと大きいという。電力会社は、数値の意味するものも含め、正確な情報を提供することが必要なのではないだろうか。むろん、「電気をムダに使え」というのは論外だが。

■蓄電の仕組みを導入すべき
基本的に、電気は「ためておけない」。電力に余裕のある夜間の看板に目くじらを立てるのは、この点が理解できていないのである。この誤解を解く一つの方法は、社会的に蓄電のシステムを普及させることだ。ネオン看板を使用する店なら、閉店時に充電しておけばよい。「節電をしていない」という非難に対して、「ためた電気を使っているのだから何が悪い」と反論できるし、多数普及すれば、全体の電力受給も効率的になる。

だが、パソコンのバッテリが数時間しかもたないように、家庭の全電力を数時間にわたってすべてまかなう蓄電池は、コストが高く、普及には時間がかかる。何百万キロワットもの電力をためておける電池となるとなおさらで、技術的にもコスト的にも容易ではない。とはいえ、長期的にはこの仕組みの導入と普及は欠かせないだろう。

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大島克彦@katsuosh[digi2(デジ通)]

digi2は「デジタル通」の略です。現在のデジタル機器は使いこなしが難しくなっています。
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