海外から輸入したミネラルウォーターが市場でダブ付き、500ミリリットルサイズで20円台など「投げ売り」が始まっている。東日本大震災による買い溜めの影響でメーカーや小売店が大量に緊急輸入したが、水不足の混乱が収まったことで大量に在庫が残ってしまったからだ。

   政府は震災時の緊急措置として、輸入したミネラルウォーターの容器が外国語表記のままでも販売を認めていたが、その措置は11年8月15日に廃止。業界では当該商品が販売できるのは10月末までとなっていると受け止めており、在庫処分が加速しているのだという。

ネットで破格値、緊急輸入も打ち止め

   インターネット販売大手ケンコーコムは2011年8月30日、ミネラルウォーターの過剰在庫を抱えてしまったため、特定の商品を大幅に値引きし販売していると発表した。東日本大震災後に急増したミネラルウォーター需要に対応するため調達したものの、その後、需要が急速に落ち着いてしまった。同社の場合、海外からの並行輸入品が多く、ネットでは現在、アメリカの水「クリスタルガイザー」は500ミリリットル48本パックが税込み1290円で売られている。自販機では1本110円で売られている商品だ。

   新聞のチラシには、ペプシコ社が米国で製造した「アクアフィーナ」が500ミリリットル24本パックで税込み600円、というものがあった。希望小売価格は1本98円の商品である。

   この商品はサントリーがペプシコ社を通じ5月下旬に80万ケースを緊急輸入。夏場に向け300万ケースの輸入を計画していたものだ。サントリー広報によると、震災の影響によるミネラルウォーター需要が落ち着いたことで、輸入は最初の80万ケースで打ち止めにしたという。小売り価格が大幅に下がっていることについて、

「(サントリーとしては)希望小売価格は下げてはいない」

としたうえで、市場全体のミネラルウォーター需要が安定したためではないか、と話している。

規制緩和廃止で10月に販売期限が切れる

   日本ミネラルウォーター協会によれば、震災以降ペットボトル入りのミネラルウォーターが品不足になり、生産を増やしても追いつかない状態が続いたため、業界の一部は海外のミネラルウォーターの輸入に走った。政府が3月下旬に緊急時の規制緩和策として、海外から輸入したペットボトル入りのミネラルウォーターについて、外国語表記そのままでも販売できるように規制緩和したことで、一層輸入が加速した。ところが、需要が一巡、輸入ミネラルウォーターがだぶつくことになってしまったのだという。現在「投げ売り」のような状態になっている点については

「在庫を抱えた店が多いだけではなく、規制緩和が8月15日で廃止になり、10月いっぱいまでしか販売できない輸入のミネラルウォーターがあるため、焦って売り始めた、ということではないでしょうか」

と日本ミネラルウォーター協会では分析している。

   農水省や消費者庁に問い合わせたところ、規制緩和の廃止前に契約を結び、10月31日までに製造や輸入が行われた商品については、引き続き外国語表記のままで販売を行えるとしている。とはいえ「10月末」が一つの節目になっているので、業界では「売り急ぎ」の機運が高まっているのかもしれない。

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