■ 最終節

セリエAは最終節を迎えた。すでにACミランの優勝、インテルの2位は決まっているため、消化試合となったが、インテルは29日にコパ・イタリアの決勝を控えており、いい形でリーグを締めくくってコパ・イタリアに備えたいところである。一方、カターニャも12勝15敗10分けで目標のセリエAの残留を決めている。

ホームのインテルは<4-4-2>。GKカステラッツィ。DF長友、ルシオ、ラノッキア、キヴ。MFティアゴ・モッタ、サネッティ、スタンコヴィッチ、ハルヤ。FWパッジーニ、エトー。DFラノッキア、FWパッジーニはイタリア代表。DFマイコンは欠場で、DF長友は右サイドバックに入る。

■ インテル快勝

試合は序盤からインテルが圧倒する。ほとんどハーフコートゲームのような展開になって押し込んでいくと、前半15分にMFティアゴ・モッタの縦パスからMFハルヤが絡んでFWパッジーニのところにボールがこぼれると、FWパッジーニが落ち着いて決めて先制する。その後も、インテルが優勢で、DF長友も、再三に渡って右サイドをオーバーラップしてクロスを入れるなど、チームに貢献する。

1対0で折り返した後半3分にインテルは、右サイドに流れた途中出場のFWディエゴ・ミリートのクロスをFWパッジーニが決めて追加点を挙げる。FWパッジーニは今シーズン17ゴール目。その後は、インテルの守備が甘くなってピンチを迎えるシーンも増えていくが、後半18分にMFハルヤからMFルシオと渡って、MFルシオが右サイドに流したパスを走り込んできたDF長友が豪快に決めてダメ押しの3点目を挙げる。DF長友はセリエAで2ゴール目となった。

後半21分にカターニャはMFレデスマのゴールで1点を返すが、結局、インテルが3対1で逃げ切って勝利。最終戦を飾った。これで、インテルは23勝8敗7分けでリーグ戦を終了した。

■ インテルは2位で終了

これでリーグ戦は終了し、インテルは2位となった。CLの出場権を確保できたので、序盤に、ベニテス体制で出遅れたことを考えるとよく追い上げたといえるが、リーグ6連覇は逃した。終盤にACミランをとらえかけたが、大一番のミラノダービーで完敗。突き放されてしまった。

コパ・イタリアも残っており、レオナルド監督の去就がどうなるかはまだ分からないが、ベテラン選手が多く、スタメンの多くが30代というチーム構成では、なかなか苦しい。たとえ、コパ・イタリアを獲ったとしても大幅な選手の入れ替えは確実であり、オフにたくさんの動きがありそうだ。

■ DF長友は2ゴール目

後半18分にゴールを決めたDF長友は、今シーズン2ゴール目となった。DFマイコンがコパ・イタリアの決勝に出場できないため、テスト的な意味合いも込めて右サイドバックでの起用となったが、いい時のDFマイコンをも上回る圧倒的なパフォーマンスを見せた。ガゼッタの採点では「7.5」だったというが、それも納得である。

ゴールを決めたとはいえ、サイドバックの選手が「7.5」という評価を受けること自体が異例で、どんなプレーをすればサイドバックで「7.5」となるのか?と思ったが、改めて観ていくと、確かに、この日の、DF長友は「7.5」に値するプレーだった。守備のとき、2度ほど相手に裏を取られてピンチを作ってしまったが、それ以外はほぼ完ぺきだった。

際立ったのはクロスの精度の高さで、この試合は合計で15本ほどクロスを上げたが、ほとんどが際どいエリアに供給できていた。DF長友というと「運動量」や「守備力」が評価されて日本代表に駆け上がった選手であるが、ここ最近の攻撃面での充実ぶりは目を見張るものがあり、この試合では、右サイドから全盛期のベッカム並の質の高いクロスを連発した。「世界一のサイドバック」という目標を掲げてイタリアに渡ったが、決して、それが不可能ではないことを証明した。

■ 右サイドバックか?左サイドバックか?

右サイドバックでプレーしたことも、攻撃的なよさを存分に発揮する要因となった。インテルは、MFサネッティが右サイドの中盤に入っていて、左サイドバックは守備的なDFキヴ。DF長友が上がりやすい環境が整っていた。また、左サイドバックでプレーする場合は、その前にFWエトーが流れてきて、左サイドのスペースを使うことが多いが、右サイドは前にスペースが空いているので、攻撃参加もしやすい。

また、DF長友自身も、左足のクロスの精度は、年々、上がってきているとはいえ、左サイドバックでプレーするときは、切りかえして右足でのクロスを選択することが多く、余計な時間がかかるときもある。しかし、右サイドになると、縦に突破して、そのままの状態でクロスを上げられるので有利である。

「左右両サイドを遜色なくこなす。」という点が、サイドバックとしてのDF長友の最大の魅力であり、FC東京や日本代表では、左サイドバックでプレーすることが多かったが、この試合のパフォーマンスを見ていると、右サイドバックの方が「良さ」を出しやすいのかなと思う。

■ FW森本は出番なし

一方、カターニャのFW森本は出番なしに終わった。これで今シーズンは12試合で1ゴールだけ。スタメンも4試合だけと非常に不本意なシーズンとなった。移籍も噂されているが、チームを変えて、再スタートを切るのも必要だろう。練習するだけでもプレーヤーとして成長することは可能ではあるが、やはり飛躍的な成長は見込めない。

FW森本はカターニャで5年ほどプレーしており、ここである程度の結果も残して日本代表にも呼ばれるようになったが、やはり、FW森本くらいの年齢になると、常時、試合に出場して結果も残していかなくてはならない。海外組も多くなってきて、「海外でプレーしている。」ということはアドバンテージではなくなって来ている。次のチームで結果を残せるかどうかは、FW森本にとって非常に重要になってくるので、FW森本に合ったチームを慎重に見つけてもらいたいところである。

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