左よりビクター インナーイヤーヘッドホン「HA-FXC71-Bブラック」、「HA-FXC51-Rレッド」
 「着うた」等の音楽配信や携帯端末の普及により、音楽の楽しみ方は随分と変わった。家でじっくりと音楽を試聴するといったスタイルから、音楽データを常に持ち歩き、通勤や通学の移動時間など、アウトドアで音楽を楽しむ時間が増えつつある。野外フェスティバルのラインナップが次々に発表され、まさにアウトドアで音楽を楽しむのに相応しい夏が近づきつつある今、更に充実したミュージックライフを手に入れるためにも、携帯型ミュージックプレーヤー付属のヘッドホンから卒業し、ワンランク上のヘッドホンへのシフトを提案したい。

 ラッシュ時の混雑など何かとストレスの多い電車移動で、どこからともなく聴こえてくるヘッドホンの音漏れ…。逃げ場もなく不快な気分になった経験は誰もが一度はあることだろう。タバコの煙と同様に、幸せなのはヘッドホンを着用している本人のみで、周囲の人間にとってそこから漏れ聴こえる音は迷惑以外の何物でもない。もちろん本人に悪意は無いと信じたい所だが、一分一秒でも早く空気の読める、マナーのある大人への成長を願うばかりだ。

 周囲の迷惑も顧みずに音量を上げてしまう理由は単純で、本人が聴きたいと期待する音楽、聴こえるはずの音がヘッドホンから聴こえてこないから。主な原因は2つあり、1つ目は遮音性というヘッドホンの構造上の問題で、2つ目は音質レベル。これは静かな家の中とは異なる試聴環境により生じるモノではあるが、この2つの問題を見事なまでに解決してくれるアイテムとして提案したいのが、ビクターから6月8日に発売された密閉型インナーイヤーヘッドホン「HA-FXC71」と「HA-FXC51」。アーティストがレコーディングスタジオで創りあげたオリジナルマスター“原音”を、より忠実に再生することを追求してきた日本ビクターが満を持して世に送り出した2モデルから、今回は上位モデル「HA-FXC71」の試聴レポートを紹介する。

 まずは、アウトドアという周囲の雑音の多い状況下で、インドア同様に安らかな試聴環境を手に入れられるのかどうか、早速「HA-FXC71」を耳に装着。その瞬間に感じるのは、まるで耳栓をはめたかのように、それまで聴こえていた雑音がシャットアウトされ、逆に今までは聴こえていなかった体内の心臓の鼓動や、肌に触れる服の繊維の摩擦音など、繊細な音が大きく聴こえてくること。

 続いて、プレーヤーの再生ボタンを押すと、それまで使用していた付属のオープンイヤー型ヘッドホンで聴いていた音楽とはまるで別次元の情報量で、一つ一つの楽器パートが奏でる旋律や繊細なヴォーカルの息づかいまでもが聴こえ始めた。まるで頭の中でアーティストがライブ演奏しているような臨場感に満たされ、よりリアルで立体的な音楽空間が広がる印象だ。音のロスも少ないようで、それまで設定していた音量では大きすぎると感じ、必然的に音量を下げる結果となった。これなら周囲への音漏れの心配から解放されることだろう。

 「HA-FXC71/51」は、コンパクトなボディの中に、大幅な小型化に成功した高性能のドライバーユニット「マイクロHDユニット」を搭載。さらに、それを耳に挿入する音筒の先端へシフトさせる独自技術「トップマウント構造」を採用。その「トップマウント構造」の効果は、プレーヤー付属のオープンインナー型はもちろん、従来の密閉インナー型と比較しても歴然で、耳の奥深く挿入されたドライバーユニットから放出されるサウンドは、より短い距離で鼓膜に到達する。その結果として、より音圧の高い、雑味の少ない音をダイレクトに体感することができるのだ。

 また、2008年夏に発売された先代モデル「HP-FXC70/50」からの更なる進化として、音を伝えるために重要なパーツである振動板に、剛性の高いカーボン素材を使用。その比重が軽く音の伝搬速度が速いという音響特性からか、バランス良くダイナミックな重低音が脳内に迫ってくる。さらに、上位モデル「HA-FXC71」は比重の高いブラスリングが内蔵された“デュアルシリンダー構造”と、ステンレス素材を採用した“メタルハウジング”により、ヘッドホン本体の中に生じる不要な振動を抑える工夫が施されているため、より鮮明で解像感あるサウンドが耳を伝わり、実にストレス無く音楽を堪能できる。