10代の中高生たちはなぜ 「ケータイ小説」にハマルのか
「ケータイ小説」からミリオンセラーが続々と誕生し、日販調べでは07年上半期(06年12月〜07年5月)の文芸作品売り上げトップ10に5作品も入った。「文章が幼稚」「物語がワンパターン」という批判が多いのだが、「ケータイ小説」を書いているのは10代、20代の若者たち。「ケータイ小説」を買っているのは、中高生の10代だが、そこには読者参加型とでも言うべき仕組みがあった。いわば、「一緒になって作品を作り上げる」といった感じなのだ。
1サイトから30冊が出版され、累計部数は500万部
「ケータイ小説」ブームを作ったのは、ケータイのネットサービス会社魔法のiらんど。現在会員は520万人(ID)で、利用者の多くは中高生の10代。ここの「図書館」には既に100万を超える小説のタイトルが納められている。会員は誰でも小説を投稿することができて、連載小説のように書き足す。このサイトから30冊を超える単行本が出され、累計の販売部数はなんと500万部を越えた。
朝日新聞(07年8月12日付け)によれば、「ケータイ小説」が売れる理由は、中高生層がメール感覚で読めることと、書き手の多くは20代の女性で、少しだけ人生の先輩の体験談を聞くように読まれるなど共感する部分が多いためだそうだ。そしてここからがポイントで、「文学というより『一種のイベント』」であることが、単行本の販売部数増に繋がっているのだという。
この「イベント」とは、「ケータイ小説」サイト内の掲示板などに、小説の感想や作者への要望などが書き込めることだ。コメントはこんな感じだ。
「めっちゃ続きが気になりマス!早く更新して下さいね(*^_^*)待ってマスッッ!!!」
一方で、
「小文字はやめた方がいいと思います。これじゃあ読めません(汗)読む人の事を第一に考えるべきではないでしょうか?」
「何が悲しかったのか、あたしには読み取ることが出来ませんでした」
作者は励まされたり、ダメだしを食らうことがある。だから作者の中には、
「皆さんの意見を見て、続編を書くのを辞めました」
などと反応する場合もある。「一緒になって作品を作り上げる」雰囲気だ。
「ケータイ小説」は、「ウェブ2.0」的メディア?
魔法のiらんど広報はJ-CASTニュースに対し、
「魔法のiらんどは、ユーザー主導型で動いているサイトで、ユーザー同士のコミュニケーションが活発です。そのため、作品作りにも参加しているような感覚があって、ケイタイで読んで、さらに本も手元に残したい、という人が多いのではないでしょうか」
と話す。
「いつでも無料で読めるのに、改めて単行本を買うのは、作品が生まれていく時間を共有した思い出を残すための記念ではないか」(朝日新聞)ということになる。
「ケータイ小説」を出しているゴマブックスはこんな見方だ。
「最初に買うのはケータイで読んでいた人。それが結構な数になる。売れると話題になり、読んでいない人が興味を持って買いベストセラーが生まれます」
サイト上のケータイ小説にはアクセス数がカウントされていて、500万アクセスを超えているものもある。彼らは単なる読者ではなく「イベントの参加者」と考えれば、「自分達の本が出た」と買いたい衝動にかられるのはうなずける。かつて、「小説をネットで流せば、全部読んだ人は単行本を買わない」と言われていたが、「ケータイ小説」はそれとは異なる「ウェブ2.0」的な形で生まれた新しいメディアなのかもしれない。