イルカの大量座礁報告を受けて、“見守る”判断を下した一宮町役場。(撮影:久保田真理)

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発見者からイルカ座礁の知らせを受けた一宮町役場は、どのように対応したのだろうか。町役場の当日の行動や今後の方針について、産業課の峰島勝彦さんに話を聞いた。

救助できない役場の立場

 昔から海の近くで生活してきた地元の人々の間には、イルカやクジラが座礁しても、人工の力を加えて海に帰すなどの処置はせず、自然に任せるという考え方があると峰島さんは話す。通常、イルカが沖に来ることはないので、座礁した場合、病気か船が出す音波によって方向感覚が狂ってしまうなど、イルカに異常があると考える。また、イルカはいったん水から陸に上ってしまうと、水中では浮力が働いて感じなかった体の重みが急に負担になり、水に戻れなくなってしまうそうだ。

 町役場が大量座礁の報告を受けた当初、二次災害を防止するため、状況を“見守る”判断を下した。午前11時50分に通報を受け、職員が現場へ駆けつけた。職員4人で、約1キロに渡ってイルカが座礁している海岸を歩いて状況を確認した上で、救助にあたるサーファーたちに「手を出さないでほしい」と呼びかけた。

 しかし、イルカを海に押し戻そうと集まったサーファーらには、その呼びかけをほとんど聞いてもらえなかったという。「現場は混乱していて、強く言えばけんかになりそうな状況。危険がないように見守るしかできなかった」(峰島さん)。

 今回のような大量座礁は、町にとっても初めての経験。対策本部を設置して十分に対応することができなかったとの反省はある。今後、行政に何ができるか検討し、次回、座礁が起きた場合、生物の状態や天候によって、保護することも考えるという。しかし、町役場という行政上の立場から、最優先すべきは二次災害の防止と、人命を守ることであると峰島さんは強調する。(つづく

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