17歳で初の日本代表入りを果たした久保。どんなプレーを見せてくれるのか。(C)SOCCER DIGEST

写真拡大 (全2枚)

 17才、久保建英(FC東京)の日本代表招集が話題になっている。

 しかし、このメンバー選考はサプライズではない。久保はすでにクラブで中心選手となっていて、首位を走るチームを牽引。結果を残している。つまり、必然の招集と言えるだろう。

 一方、欧州のクラブに所属し、定位置を掴むことができていないベテラン、岡崎慎司(レスター退団が決定)と川島永嗣(ストラスブール)の招集に関しては、疑問符を投げかける人もいるだろう。

 しかし、この招集も驚きに値しない。世代交代を図る中で若手選手を招集する一方、実績、実力のあるベテランを呼び、代表選手の厚みを伝える。欧州で長く活躍し、ワールドカップ、アジアカップなど国際経験も豊富な二人の存在は貴重だ。コパ・アメリカを戦ううえでも重要になるだろう。

「世代間の融合」

 森保一監督は、就任以来、そう言い続けているが、今回の選考も何ら矛盾はしていない。17才の久保と36才の川島が共存する。そこに伝承はあるだろう。キリンチャレンジカップの27人という多めの招集人数(通常は23人)も、その意図が透けて見える。

 実に正当な代表メンバーと言える。ほとんどの選手が各チームで納得できる活躍をしているし、文句をつけられない。個人的に、「3、4人はこっちの選手の方がいいよ」というのはあっても、腑に落ちるメンバーだ。
 
 その公平性は、すべての日本人選手たちにも伝わるだろう。

「活躍次第で自分も代表に手が届く!」

 各選手、代表への競争心も沸くだろう。誰にでもチャンスがあって、平等に選ばれている。その空気が、健全さを生むのだ。

 これは、森保監督が日本人であることのアドバンテージと言えるかも知れない。

 過去、アルベルト・ザッケローニ、ハビエル・アギーレ、そしてヴァイッド・ハリルホジッチの代表選考は、かなり独特だった。「斬新な視点が刺激を与えた」のは紛れもない事実だろう。抜擢され、成長した選手も少なからずいる。

 しかし、フィーリングで決める選考も多かった。J1での実績が乏しい選手を感覚で呼び、すぐに呼ばなくなったり、逆に活躍しているのに呼ばれない、あるいは海外での経験が面白い、というだけで呼んで勝手に失望する。そんな事例がしばしば起きた。
 
 外国人監督たちは日本人指導者にはない経験を持っている一方、圧倒的に日本人の情報が足りず、視点も独断と偏見を帯びていた。それは彼らが悪いと言うわけではない。外国人のマイナスとプラスだった。

 例えば日本人監督がベトナムを率いることになった場合、ほとんど情報がない。ほ
ぼゼロからスカウティングをスタートさせる。ベトナムという国の事情や民族性を知るには、膨大な時間がかかるだろう。代表はクラブチームと違い、選考に困難が伴うのだ。

 その点、森保監督のマネジメントは無理がない。選手選考が円滑。おかげで監督就任後、速やかな戦術変更につながっている。アジアカップ決勝は敗れたものの、順調な1年目と言えるだろう。

 6月のキリンチャレンジカップ、そしてコパ・アメリカで森保JAPANはさらなる変革を続ける。
  
文:小宮 良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。