ITライター・山口真弘の気になるグッズラボ 

〜allocacoc「LEVIT8」レビュー

2018年10月23日
TEXT:山口真弘(ITライター)

サムネイルの画像を見て「何だこれ」と不思議に思った人もいるのではないでしょうか。三角形のパネルを組み合わせたこのフシギな形状の物体は、デスクの上に置き、立った状態でノートPCを使うための、いわゆるスタンディングデスクの一種です。

デスクワークが多く、座ったままの状態が長時間続くと、腰痛をはじめとした健康上の問題が出てきます。こうした場合の解決策として近年注目を集めているのが、立ったまま作業を行えるスタンディングデスクです。座った状態での作業と、立ったままでの作業を交互に行うことで、姿勢の偏りが減り、腰痛や肩こりを防止できるというわけです。効能については諸説ありますが、オフィスワークにおいては眠気の防止という別の効果もあることから、支持する人も少なくないようです。

さて、スタンディングデスクは、昇降機能の搭載により一般的なデスクとしても使えるモデルや、あらかじめ高い位置に天板を設けた専用モデルもありますが、今回紹介する「LEVIT8」はこれらとはまったく異なる、一般的なデスクに追加して使うタイプの製品です。デスク上にこれを置き、その上にノートPCを置くことで、スタンディングデスクと同じ目線の高さで作業が行えるというわけです。


折りたたんだ状態。サイズは240×382mmで、B4用紙(257×364mm)とほぼ同じです


ノートPCとのサイズ比較。重量は実測839gとそこそこあります


折りたたんだ状態では厚み16mmと、ノートPCと大差なく、片付ける際もかさばりません


組み立てると高さ約30cmの台に早変わり。ユーザの身長に合わせて4種類のモデルがあります

クラウドファンディングでの資金調達の成功をきっかけに一般販売に至ったこの製品、最大の特徴はなんといっても、折りたたんで完全にフラットにできることです。使わない時は場所を取らずに収納できることに加えて、重量も1kgを切っていますので、オフィスの中であちこち持ち歩いて使うにはぴったりです。特に個人の席が決まっていない、いわゆるフリーアドレス仕様のオフィスでは、重宝することでしょう。

具体的な組み立て方は写真を見ていただきたいのですが、筒状になった4枚のパネルを、折り紙のように折り曲げることによって、立体的な形状へと変化します。何らかの部品で固定することなく、約10kgもの耐荷重を持った台へと変形するのが面白いところです。さすがに上に腰掛けたりするのは不可能ですが、キャンバス地の表面からは想像もできないほど頑丈で驚かされます。


まず最初に二つ折になった本体を開きます


続けて折り目に沿って右側を中央方向に寄せます


パネルが交差した状態。ここまでが前半の工程です


手前を持ち上げると同時に背面を下方向に開きます


そのまま引っ張って上面と底面が正方形になるよう広げます


完成。特に固定しなくともこれだけで十分な強度があります

ちなみにスタンディングデスクは、不自然な姿勢での作業にならないよう、高さをユーザの身長に合わせることが欠かせませんが、本製品は身長ごとに4種類のサイズ違いをラインナップすることで、この問題を解決しています。具体的には、身長165cm以下が「S」、165〜178cmが「M」、178〜188cmが「L」、188cm以上が「XL」となります。今回紹介しているのはMサイズで、高さはおよそ30cmほどあります。


ノートPCを載せた状態。ちなみに耐荷重は明記されていませんが、初出となったクラウドファンディングのサイトに約23ポンドという記述があるので、約10kgと考えておけばよさそうです

ただし、本製品はあくまでも既存のデスクに乗せて使う簡易的な製品ゆえ、一般的なスタンディングデスクに比べると機能面での制限もあります。

ひとつはマウスなどを置けないことです。本製品はいわゆる天板が存在せず、ノートPCを直接載せる構造ですので、マウスを置くスペースそのものがありません。もちろん本体上に天板となる板を置けば、ノートPCとマウスを両方載せることはできなくはありませんが、今回紹介しているMサイズの場合、幅が約24cmしかないため、板を置いた場合、耐荷重以前に左右のバランスが問題になります。

つまり可能な操作は、キーボードを使ったテキスト入力などの軽作業が中心とならざるを得ず、マウスの併用が欠かせない作業には不向きです。また外付けのキーボードや液晶ディスプレイを載せるのも不可能なほか、上に肘をついたり、飲み物を置くのも現実的ではありません。

もっとも、デスクワークの合間の気分転換を目的とするならば、このくらいでちょうどよいのかもしれません。例えば、メールの返信を書く時だけこれを使って立ち作業で行う、といった具合に運用方法を決めておくとよさそうです。

もうひとつ、ノートPCが軽すぎると逆に不安定になるのも注意点です。本製品はキャンバスに似た布地で各パネルを連結しており、上から一定の荷重をかけてやらないと、ぴったりと接地してくれません。今回試したところ、1.2kgのノートPCでは問題ありませんでしたが、700g前後のモバイルノートでは軽すぎたようで、打鍵時にガタつきが発生しました。1kgよりも軽い場合はノートPCの下に別の板を挟むなどして、重量を調整してやったほうがよさそうです。


今回紹介しているMサイズのモデルでは、一辺の長さは約24cm程度。「ほぼ」正方形です


ノート天板までの高さは約30cm程度。デスクの高さが72cmならば、102cm程度になる計算です

以上のように、作業内容はやや制限されますが、このようにノートPCの高さを調整できるツールというのは意外と身近になく、またあったとしても組み立てや片付けが面倒で場所も取りがちです。本製品は収納もコンパクトに行えますので、ちょっとした気分転換や眠気防止を目的として利用するにはぴったりです。価格も三千円台と、本格的なスタンディングデスクと違って圧倒的に安価なので、スタンディングデスクの効能を確かめる目的での導入にも向いています。

また本製品のもう一つの使い方として、カーペットやフローリング、畳の上などでノートPCを使う場合の、簡易テーブルとしての用途が挙げられます。台がなくフラットな場所でノートPCを使う場合、膝の上で使ったり、あるいはノートPCを床に置いて自分自身が寝転がった状態で使うなど、不自然な姿勢を強いられがちですが、本製品があれば、ノートPCを見やすい高さまで持ち上げられます。

ふだんからこうした環境で、段ボールなどをテーブル代わりに使っているような人は、スタンディングデスクとしての利用より、むしろこちらの用途のほうが重宝するかもしれません。そうした意味では、手軽に試せて潰しがきく製品であることは間違いなく、幅広くおすすめできる製品です。

製品名:LEVIT8(Mサイズ)
実売価格:3,326円
発売元:allocacoc
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/B01LY0CE5C/

[筆者プロフィール]
山口 真弘(やまぐち まさひろ)
ITライター。PC周辺機器メーカーやユーザビリティコンサルタントを経て現職。各種レビュー・ハウツー記事をWEBや雑誌に執筆。最近は専門であるPC周辺機器・アクセサリに加え電子書籍、スマートスピーカーが主な守備範囲。著書に『ScanSnap仕事便利帳』(ソフトバンククリエイティブ)『PDF+Acrobat ビジネス文書活用[ビジテク] 』(翔泳社)など。Twitter:@kizuki_jpn