ランチの誘い方ひとつで、バレている(写真:Taka / PIXTA)

あなたは、上司、もしくは取引先の人とお昼ご飯を食べに行きたくなりました。そんなとき、どんなふうに誘っていますか? 

「部長! ランチでも行きませんか?」

もしかして、こんなふうに誘っていませんか?

「ランチでも行きませんか?」と誘っているあなた。ひょっとすると、あなたは実力より出世が遅れているかもしれません。なぜか? それは、“ランチでも”の“でも”という余計な一言を使っているから、です。

「その一言」が余計です

“でも”というのは、「妥協の言葉」です。「本当は飲みに行きたいのですが、時間がないのでランチ“でも”という代案の雰囲気を含んでいます。そのうえ、「もし行けたら」という消極的なニュアンスが感じられるので、忙しい相手にはスルーされてしまいそうです。上司や取引先に言うなんて、まったくもってNGです。

では、どうすればいいでしょうか?

「ランチに行きましょう! 来週のご都合はいかがですか?」

こんなふうに言いましょう。

この言い方であれば、具体的なアポイントの日程調整まで踏み込んでいるので、「会って話がしたい」という思いが明確に相手に伝わります。「時間がもしあれば」という、消極的な誘い方とは印象が大きく異なります。

人は、他人のたった一言で、“自分が大切にされているかどうか?”を、感じ取る生き物です(感じ方に差があったり、はっきりと自覚していなくても)。相手があなたから大切にされていると感じた場合、それは相手の次のアクションにも影響を与えます。仕事の連携もうまくいくことでしょう。

筆者は仕事柄、毎日多くのビジネスパーソンに会いますが、成功している人は、言葉の影響力をよくわかっていて、瞬時に言葉を選んで使っています。断言しますが、仕事ができる人で、このポイントを外している人はいません。言葉の力で、仕事仲間や取引先を動かしていくのです。

僕自身、そんな成功者の言葉に動かされることがあります。そうした言葉を無意識に使えるようになれば、その人自身の人生すら大きく変わるでしょう。

具体的にいくつかご紹介します。

法則1:相手の心をつかみやすいのは自虐ネタ

相手の心をつかむ会話で大切なのは、潤滑剤としてのユーモア。そういうとき、使いやすいのが自虐ギャグです。

たとえば筆者はこの夏、「すみません、ボクが太っているせいで、灼熱地獄で」「この部屋の湿気が多いのはボクのせいです」といった自虐ネタで何度も会議を沸かせることができました。手前みそになりますが、その瞬間、会議に出席している皆さんの心を、僕はつかんでいたのです。

実際に自分の欠点を笑いにできる人は、指導力や包容力が高く女性にモテるということが、科学的な研究結果でも判明しているそうです。

自虐のネタにしていいのは、自分自身のことのみ

ただし、ここで注意したいのが、自虐のネタにしていいのは、自分自身のことのみ、ということです。自分に近い存在だからといって、部下や家族をネタにすれば、それはたちまちパワハラ、モラハラになってしまいます。

駄目な例としては……。

「うちの社員、レベルが低いんですよ」

「すみませんね、うちの社員使えなくて」

こうしたものは、自虐ではありません。パワハラであり、自爆ネタです。

自分の部下や家族を自虐のネタに使う人がいますが、正直、笑えません。リアクションに困ってしまいます。ちょっとした軽口のつもりでも外部の人に、部下や家族などの身内を貶める発言はNGです。あなた自身の評価も急降下です。結果的に人が離れていていきます。

できる人は、いつも多くの人に囲まれています。上司や取引先だけではなく、部下や家族なども周りに集まることが必須です。それを自分から捨てるのは問題外です。

この分野で傑作を作り出しているのはなんといってもソフトバンクの孫正義さんの頭髪ネタではないでしょうか。

「髪の毛が後退しているのではない。私が前進しているのである」
「ハゲは、病気ではなく、男の主張である」

ツイッター上に繰り出されるさまざまな名作に、笑った人も多いのではないでしょうか。

とはいえ自分の外見をネタにするのは難易度が高い、と思う人もいるでしょう。そんな場合にも、いい方法があります。部下などの身近なパートナーを、多くの人の前で褒めて、相対的に自分を落とすのです。

「部下が優秀すぎて、ボクが霞んで霞んで……」
「本当に部下の成績が良すぎて、もうすぐボクが部下になりそうです」

などなど。大切なのは、相手を困らせずに楽しくなってもらうことです。他人をネタにして不快にさせるなどは論外です。

法則2:できる人は、「リスク」ではなく「チャンス」を拾う! 

ビジネスパーソンがいつも使っている日常的な言葉の中には、「損する日本語」が潜んでいます。

同じ内容を口にしているのに、なぜか「この人はやる気がないな」と思われてしまう人、あなたの周りにもいませんか? 

なぜ、そんなふうに見えてしまうのか。発言する言葉を注意深く観察してみると、そういう人に限って顕著なのが、

「リスクが高すぎる」

「リスクを検討してから決めましょう」

というように、リスクへの不満と不安を頻発していることでした。

筆者的に考えれば、リスクがあるのが仕事です。リスクがないのは、過去の繰り返しなので、会議などでわざわざ議論する必要はありません。成功率がほぼ100%だからです。

リスクが高いと口にすること自体がNGだと思います。なぜなら、面白いことにはリスクがあるからです。テニスの試合、サッカーの試合もリスクがあるから楽しく、見ていても感動します。100%どちらが勝つかわかっている試合を誰が見るでしょうか? リスクがない007の主人公を誰が応援しますか? それと同じです。

リスクがあるから、人を引きつける仕事になる。そう思いましょう。

ちなみに著名な経営者たちはリスクだらけ。話題のイーロン・マスク氏だって、毎日大量のリスクと戦っていることは報道で伝えられているとおりです。やはり日本語として使うべきは……。

「まだだれもチャレンジしてないので、初めて成功するかも!」
「これは難しいものなので、みんなで力を合わせるしかないな。チャンスを探そう」

そう、「チャンス」という言葉です。チャンスという言葉はリスクの数百倍も強い言葉です。ぜひこの言葉を使ってみてください。

「言葉の力」をとても大切にしている経営者

法則3:ビジネス用語を変換すると協力者が増える

エステーのカリスマ経営者といわれた鈴木喬会長の後を継いだ鈴木貴子社長は「言葉の力」をとても大切にしている経営者だと思います。

社長就任後のヒット商品「シャルダン ステキプラス」「プレミアムアロマ」などは、主な購買層である女性の心に届くような情緒的な商品名、キャッチフレーズ、デザインに変更したことで大成功を収めました。これまで値段や容量で競ってきた商品の価値を、言葉の力で変えたのです。

エステーのV字回復の裏には、エステーの商品顧客である女性の気持ちに寄り添った言葉の使い方があったのです。

社長就任前には、各界のリーダーたちのスピーチを研究し、経営で使われる言葉には「戦略」「ロジスティクス」「タスクフォース」など軍隊用語から転じたものが多いと感じたそうです。筆者はこの指摘にハッとさせられました。

仕事とは、誰かを負かすためにするゲームではありません。誰かを喜ばせたり、助けたりするものであるはずです。消費者はゲストであり、攻撃の標的のように表現するのは、よく考えたらとても失礼な話です。

軍隊用語に替えて、料理用語で表現

そこで筆者は軍隊用語に替えて、料理用語で表現することを思いつきました。それを実行したら共感を生んで、周囲の人に積極的に行動してもらえるようになったのです。

一例を挙げれば、「戦略」を「レシピ」に。「ターゲット」を「ゲスト」に。また、「速攻」を「できたて」に替えることで、特に女性の共感を得られるようになりました。

もちろん、なかなかしっくりくる言葉が見つからない場合もありますが、現代の日本では戦争より料理のほうがよほど身近です。しかも会議自体が楽しくなります。メールに書くことも楽しく感じます。

法則4:「いらっしゃいませ」ではなく「こんにちは」 

ちょっとした言葉の使い方で、上司も取引先も気分がよくなったり、お店の製品が売れていったりします。

たとえば、お店に入って「いらっしゃいませ」と言われた瞬間に、お客さんと店員さんの関係になります。けれど、もっと言うと、一緒にお客さんの欲しい何かを探す旅のアテンドをするのがお店の役割です。


筆者はアップルストアやスターバックスのお店を快適に感じますが、それは「いらっしゃいませ」ではなく「こんにちは」と気軽に話しかけてくるから。筆者も思わず「こんにちは」と反応してしまいます。その瞬間に、店員と客という関係ではなく、友情のような感情が湧いてきます。

テクニック的に言葉を使うのではなく、相手の気持ちに立って言葉を発するようになれば、快適な関係になります。そしてあなたの周りに多くの人が集まります。素敵な言葉を使う人の周りには、たくさんの人々が集まります。そして結果的にそれがあなたに何らかの利益をもたらすのです。

先日筆者が書いた『儲かる日本語 損する日本語 相手の心が思わず動く24の法則』では、さらに突っ込んだ法則を紹介しています。

ちょっとしたメニューの書き方、メールの書き方、ラインの使い方、SNSの使い方があなたの人生を大きく変えます。思い立ったこの瞬間から変えることができます。ぜひチャレンジしてみてください。