ルーキーの橋岡、正確なクロスで興梠のゴールをアシスト【写真:Getty Images】

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清水戦で2戦連続スタメンのDF橋岡、正確なクロスでFW興梠のゴールをアシスト

 J1浦和レッズのユースから昇格したルーキーが、暫定監督として苦しいチームを救おうとしている恩師に勝利を届けた。

 浦和のDF橋岡大樹は15日のリーグ第8節、清水エスパルス戦で2戦連続のスタメンに立つと、FW興梠慎三のヘディングシュートをアシストする絶妙なクロスを上げて2-1の勝利に大きく貢献した。

 浦和は4月1日までの公式戦で1勝2分4敗の低空飛行でスタート。堀孝史監督との契約を解除し、強化体制を刷新するに至った。そうしたなかで、ユースチームの監督も務めていた大槻毅育成ダイレクターが暫定監督に就任。その初戦となったルヴァン杯サンフレッチェ広島戦を0-0で引き分けると、その後はリーグ3連勝を飾った。

 そのなかで、大槻監督にとって貴重な戦力になっているのが“愛弟子”である橋岡だ。大槻体制の初戦では4バックの右サイドバックというこれまでにも経験があるポジションを務めたが、リーグデビューとなった前節のヴィッセル神戸戦とこの清水戦では、3バックシステムの中で右ウイングバックを務めて精力的にアップダウンを繰り返した。大槻監督も「彼は走れる。今、あのモビリティーがないとしんどい。守備に関しては計算が立つ」と、すでに戦力として十分であるからこその起用だと話した。

その橋岡は、1-0で迎えた前半29分にチームの2点目を導いた。ハーフウェーライン付近の右サイドで縦パスを受けると、相手との駆け引きに勝利してターン。そのまま縦にボールを運び、中央の興梠の頭にピタリと合うクロスを供給した。橋岡は、狙い通りのクロスだったと振り返っている。

試合終了間際に足をつった橋岡…その時に槙野は何を言い放ったのか

「最初は武藤選手が見えたんですけど、あ、興梠選手がいる、と。その頭を狙って、思った通りのボールが出せました。興梠選手は練習中からも、1回後ろに引いて前に入ってくるのが上手いので、そこに出そうと思ったら、本当にその通りの動きをしてくれた」

 興梠はこの時、ゴール前に入り込みながらも並走する相手DFの視界から消えるファーサイド方向に走り、橋岡がキックモーションに入るところでニアサイド方向に急加速していた。興梠の特性を理解していなければ、両者の頭を越えて何も起きないクロスになってしまう。トレーニングから味方の特徴をよく観察し、そのうえで居残り練習も積んだ成果がピッチに表れた。それを見てきた大槻監督も「あのクロスのアシストは、彼が一生懸命練習した成果だと思います」と目を細めていた。

 試合終了間際に足をつり、周囲の選手からは交代を要求するアクションもあった。しかし橋岡は「槙野選手から『ここからが見せどころだ』という良い声を掛けてもらいましたし、ユースの時にも、足をつっても伸ばせば走れていたので、それは大槻さんも分かっていてくれていると思います」と話した。

 その言葉の通り、大槻監督は状態の確認こそしたが、足を伸ばしている橋岡を見つつプラン通りにMF柏木陽介に代えてMF青木拓矢を投入した。これは、お互いをよく知る信頼関係があってこそだ。

大槻監督もゲキ…「ロシア・ワールドカップ、狙っていけよ」

 橋岡は、ユースからの昇格が有力視されてきた存在だったが、昨年の時点で大槻監督からゲキを飛ばされていたという。

「練習の後、ふとしたタイミングで『ロシア・ワールドカップ、狙っていけよ』と。やっぱりサッカーは何が起こるか分からないですし、気持ちが前に向きます」

 トップに昇格し、苦境にあるチームを復活させつつある大槻体制の浦和だが、その要因としてメンバーを固定せずにフレッシュさを大切にしている指揮官の起用法によるメンタル的な刺激も大きい。その中でチャンスを掴み戦力としても認められつつある橋岡は、浦和にとって希望の星になりつつある。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)