「300年クローゼット」のロゴ(ニュースリリースより)

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 2017年に創業300年を迎えた大手百貨店大丸」が驚きのプロジェクトを発表した。

 その名は「300年クローゼット」プロジェクト。なんと、大丸が顧客の品物を300年後の2317年まで預かるサービスだという。

 果たして、それは一体どういったものなのだろうか。

◆徳川吉宗の時代から300年を経て生まれた「驚きの計画」

 大丸は1717年に京都で呉服店として創業。その後、1726年に大坂・心斎橋へと進出した。時は享保の世、江戸幕府の将軍は徳川吉宗で、関西では浄瑠璃・歌舞伎作者の近松門左衛門か活躍していたころだ。それから300年が経った2017年からは、創業300周年を記念して様々なイベントが実施されている。

 その300周年記念イベントの目玉の1つが「300年クローゼット」プロジェクトだ。

 300年クローゼットプロジェクトでは、まず大丸(支店含む)ゆかりの「大切な品物」と、それにまつわる「エピソード」を募集。大丸による選考のうえ、品物とエピソードの一部を特別サイトで公開し、さらに2019年からは本店である大丸心斎橋店(しんさいばしみせ)本館に特設される「300年クローゼット」にて預かり、公開・展示もおこなう予定だという。

 大丸心斎橋店は現在2019年の竣工を目指して建替え工事の真っただ中。クローゼットが館内の何処に設置されるかなどは未定だが、大丸によると300年間の保管に耐えうる頑丈なものにするとのことで、災害や火災など様々な外的要因から商品を守るための特別な仕組みになるとみられており、その保管・展示方法なども注目される。

 なかでもユニークなのは、300年クローゼット特設サイトにあるQ&Aコーナーだ。

 例えば「人類がほかの惑星に移住しないといけなくなったら?」との問いに対し、大丸は「人類が地球を離れたとしても300年後まで大丸の約束は続きます」としている。しかしその一方で、地球滅亡後にクローゼットを開ける保証はないといい「人類が滅亡したとしても品物に宿る想いは滅びません」とも述べている。

 300年後に我々の子孫がこのQ&Aを笑ってみていられると良いのだが――。

◆意外と消えない?日本の老舗百貨店

 さて、この「300年クローゼット」プロジェクトにおいて最も気になることは、地球自体の滅亡よりも「百貨店の滅亡」――つまり、小売業の変化が激しいこの時代において「大丸が300年後も存続できるか?」ということだ。

 バブル経済崩壊後「ヤオハン」、「マイカル」、「ダイエー」、「寿屋」など、流通大手の経営破綻が相次いだことは記憶に新しい。

 現在、創業200年を超える百貨店は大丸、松坂屋、三越、そして東北のうすい、名古屋の丸栄、九州の岩田屋、山形屋などが挙げられるが、意外にも当時から存在しており大手百貨店となった企業で屋号が完全に消滅したものは東京・日本橋に本店があった「白木屋」(東急百貨店に合併、存続会社は白木屋)1社のみ。その消滅も1967年のことで、さらに白木屋はハワイの店舗が別企業の運営で存続しており、近年完全に消滅したものは存在しない。

 とくに、大丸松坂屋百貨店は、百貨店業界で国内最古の松坂屋(1611年創業)と大丸(1717年創業)が合併した企業であり、松坂屋の創業からは実に407年と、世界的にみても老舗中の老舗だ。

 しかし、流通業の移り変わりが激しい昨今、これから先はどうなるか分からない。1615年創業の名古屋市の百貨店「丸栄」は2018年中に廃業する見込みであるほか、1700年創業で山形市と米沢市に展開する百貨店「大沼」も2018年中に東京の企業再生ファンドに経営権を譲渡して経営の立て直しを図る方針を固めている。

 大丸は、300年クローゼット特設サイトのQ&Aのなかで「300年後もお客様のそばにいつづけるための取り組みをつづけている」としたうえで、デジタル化が進んで実店舗がなくなっても何らかのかたちで品物の保管と展示は続けると明記しているほか、「万が一倒産してしまった場合は、お客様や引き継いでくださった方と対応を決める」とも述べている。

 果たして、300年後の西暦2317年には日本の百貨店はどういったかたちになっているのか、そして私たちの生活はどう変わっているのか…それは到底知り得ることはできないが、品物はしっかりと受け継がれ、そして大丸が創業600周年を迎えて持ち主の子孫へと返却される際には大きなニュースになることであろう。

 300年クローゼットの応募期限は2018年1月31日まで。「大丸にゆかりのある品物が家にある」という方は、300年後の世界を思い描きつつ応募してみてはいかがだろうか。

<文/若杉優貴(都市商業研究所)>

【都市商業研究所】
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」