都内で電化製品を取り扱う会社部長の金森光史さん(51歳=仮名)は、基本的には終日、社内で仕事をしているという。朝9時に出社するとサンダルに履き替え、夕方、退社時に靴を履く。
 ところが、帰る時に履く靴が明らかにきつくなった。家を出る時は靴ベラがなくても履けたものが、靴ひもを緩め、靴ベラの使用が不可欠。手で触ると、靴下のゴムが当たる部分から足首、甲にかけて、腫れ上がったようにむくみがあるのが分かったという。
 「そんな状態がしばらく続いていたため、自宅近くの病院に行き診察を受けたところ、診断は“腎不全の疑い”だったのです。即、血液検査から心電図、レントゲン、尿検査と検査が続いて、さらに心臓、肝臓から腎臓の働きまで検査されました。まさかここまで大事になるとは思いませんでした」(金森さん)

 結果は、やはり腎臓の働きが悪いためにむくみが生じているとのことで、腎不全の治療が必要と判断されたという。腎臓は体の中の余分な体液を尿として体外に出す働きをするが、その働きが悪くなっていたのだ。
 「金森さんの場合、体の中の体液が増えすぎ、血管の外にも多く溜まるようになってしまったため、むくみが発症した。この腎不全を放置すれば、むくみどころか重大な病気につながる恐れもあったのです」(専門医)

 むくみの原因となるのは、前述の通り、高血圧などが挙げられるが、その背景にあるストレスも無視できない。
 東京社会医学研究センターの研究員はこう言う。
 「血圧が高い状態が続くと腎臓の働きが悪くなり、排泄できる塩分量が減って体液の中に塩水が溜まる。これがむくみを引き起こします。これにサラリーマンの多くが抱えるストレスが加われば、血圧も上がる。酒を飲む人だと、どうしても辛いもの、塩分を摂りすぎるため、高血圧だけではなく、動脈硬化も進めてしまう。肥満が重なり、脳梗塞や心筋梗塞といった命に関わる病気にも繋がるため、注意が必要です」

 当然ながら心臓や腎臓、肝臓など、臓器の病気が伴っている場合は、そちらを優先的に治療する必要があるが、内臓器官にこれといった大きな障害がない場合でも、むくみは起きてしまう。
 それでは、どんな方法でむくみを防ぎ、対処すればいいのか。
 「何はともあれ、血行をよくすることが大事です。例えば、足の皮下組織に体液が溜まっている場合、患部を表面から弾力性のある包帯や靴下、下着などで圧迫すること。皮膚を固定した状態で運動すると、筋肉と一緒に包帯や靴下で挟まれた皮下組織を押し上げるため、リンパ管に“筋肉ポンプ”のような効果をもたらすようになるのです」(専門医)

 医師によっては、薬剤治療より、こうしたバンデージを使った筋肉運動を勧める。筋肉そのものの動きだけでは効果が出にくい場合もあるからだ。
 「一般論になりますが、運動不足の人は、足の筋肉も弱っていることが多い。ですから足の筋肉ポンプ効果が十分に得られず血行が悪くなる。調理師や店頭販売員など、いわゆる立ち仕事をする人たちは、足のむくみに襲われることが多い。自宅に帰ったら青竹踏み、足湯に浸るのもいいと思いますし、軽いストレッチ、マッサージをしてむくんだ部分の筋肉をほぐすのも効果があります」(健康ライター・泉純也氏)

 いずれにしても、次のような症状がある場合は、大きな病気のサインである可能性が高いことを知っておこう。
 (1)足だけではなく全身にむくみが出てきたとき。
 (2)足のむくみが起きると同時に動悸や息切れを感じる。
 (3)全身にむくみが起きると同時に、お腹にも水が溜まるようになる。

 むくみは侮れない。