田原総一朗、亡き妻と一緒にいたい…妻の遺骨を自宅に置く理由を明かす
ジャーナリストの田原総一朗が23日、横浜開港記念会館で行われた映画『禅と骨』の完成披露プレミア上映会に出席、「人生のすべて」と語っていた故・節子夫人の遺骨を、墓には納骨せずに今でもそばに置いているその思いを語った。この日は中村高寛監督、映画監督で作家の森達也もともに来場した。
『ヨコハマメリー』の中村高寛監督11年ぶりの新作となる本作は、京都嵐山・天龍寺の禅僧であった、横浜生まれの日系アメリカ人ヘンリ・ミトワ氏が、80歳を目前に童謡「赤い靴」を映画化したいと熱望するさまを描き出す長編ドキュメンタリー。当時の写真、資料映像、アニメ、再現ドラマなどを交えたユニークなスタイルのドキュメンタリーとなり、ナレーションを仲村トオル、再現ドラマにはウエンツ瑛士、余貴美子、緒川たまき、永瀬正敏らが出演しているのもポイントとなる。
横浜の地での上映に中村監督は、「ようやく帰ってきました。あの人は今状態になっていましたが、ちゃんと映画を作っていました。自分にとっての映画とは何か、ドキュメンタリーとは何か、生きるとは何かということを見つめ直す映画になったと思います」と誇らしげにあいさつ。森も「とにかく人の映画はまず嫉妬から入るので、これだけの会場に大勢の観客が入っていてうらやましい」と続けた。
そんな中、「まずは面白い映画でした」と語る田原は、あいさつもそこそこに「ミトワさんとの出会いは?」「最初はどういう映画を撮ろうと思った?」等々、中村監督を質問責め。特にタイトルが指し示す「骨」というキーワードが気になったようで、「映画を観ていても、中村さんは骨に興味があるように見えたね」と指摘する。
田原の指摘通り、本作はミトワ氏の死もテーマのひとつとなっているが、それに対して「どんな人間でも土に還るわけです。実は『ヨコハマメリー』の完成後に、(同作に出演していた)シャンソン歌手の永登元次郎さんが亡くなったんです。その時に、僕はホスピスまで立ち会ったんですが、(遺族の)『お葬式まで撮ってくれないか』という申し出を、映画が完成しているからということで断ってしまった。しかし彼の骨を拾っている時に、なんで最後までカメラを通して元次郎さんを追えなかったのかと悔しい思いをしました。だから次に映画を撮るなら答えを出したかった。でもただ人間が土に還るという無情だけでは終わらせたくなかった。“骨”の先に何があるのか、この映画で探したかったんです」と解説。
そんな流れから森が「田原さんも骨に興味があるんですよね」と切り出すと、田原が2004年に逝去した節子夫人の骨を墓に納骨せずに自宅に置いているというエピソードを紹介。そして「そばにいたい。それは愛情ですよね」と指摘した森の言葉に、それには田原も「写真よりも骨の方が確かだからね」とその思いを明かした。(取材・文:壬生智裕)
映画『禅と骨』ポレポレ東中野、キネカ大森、横浜ニューテアトルほか全国順次公開