自民党都連関係者の悩みは尽きない。写真は深谷隆司最高顧問。(時事通信フォト=写真)

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■公明党の「非常に不気味な動き」

7月2日投開票の東京都議会議員選挙において、都議会自民党と都民ファーストの会は各選挙区で死闘を繰り広げている。

「自民党が実施した調査で、議席数を大幅に減らすのではないかと考えられていた公明党ですが、全国の創価学会員の懸命な応援等により、勢いを盛り返しており現有議席を守れそう」

そう話すのは、全国紙の政治部記者だ。今回の都議選では国政選挙並みの体制で報道を実施するという。

「公明党の候補がいない地域で、公明党は非常に不気味な動きをしています」

こう嘆くのは、公明党の推薦を受けた都民ファーストの会の公認候補者だ。

「自分の立候補する地域で、電話で情勢調査を独自に実施したところ、公明党を支持する人たちの間で、きれいに票が自民党とファーストに半分ずつ分かれていました。公明党の支持層は、本部の命令があれば3日で投票行動を変えると聞いていますので、これからも油断なりません」

「国政では自民」「都政ではファースト」と「二股」をかける公明党だが、各選挙区内でも「二股疑惑」が起きていた。

■組織票がない都民ファースト

世論調査では善戦しているファーストだが、そこには落とし穴も存在している。組織票がまったくないのだ。幹事長の音喜多駿氏は、自身の開催した決起大会で3割近くの申込者が当日ドタキャンした現状を嘆き、「組織がなく浮動層のみで闘う怖さを痛感した」とブログで述べている。民進党の支持組織である労働組合の幹部はこう語る。

「基本的には、民進・元民進の議員を応援していますが、選挙区に民進、元民進の議員がいない場合は、ファーストの新人候補の応援にも入っています。驚かされるのは、選挙の仕方についてまるで何も知らないこと。取りこぼしも多いのではないでしょうか」

さまざまな都議選の情勢調査が漏れ伝わる中で、あるひとつの共通点を指摘するのは、早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉氏だ。

「各調査に共通することは、民進党が壊滅することです。民進を裏切ってファーストから出馬した議員たちは助かる可能性がありますが、当選後も『元民進』のレッテルを貼られることになる。民進党の組織から支援を受ける彼らは、『しがらみ』の渦中にあるにもかかわらず、当選後には議員生活が長いことを理由に先輩風を吹かせ、旧かがやけTokyoや改革派の新人との内部抗争が始まるのではないか」

■自民都連で自慢話「息子が電通の部長」

都議会議員は、国政選挙にも大きな影響を与える。民進都議が壊滅すれば、一番の影響を受けるのは、民進都連の国会議員たちだ。

「菅直人氏、長妻昭氏など民進党を象徴するような政治家が、次回の衆議院選挙を現職都議の支援を受けずに戦うことが濃厚。小池旋風の一番の被害者は彼らでしょう」(前述の全国紙記者)

最後は、都議会自民だ。頼みの内閣支持率が急降下。石原伸晃前都連会長が都民ファーストの会を「北朝鮮」になぞらえたことで批判を受けるなど、自民党都連関係者は頭を悩ませる。

「問題行動を指摘されることも多いとはいえ、自民候補者個人がファーストの候補に負けているとは思いたくありませんし、動員力は格段に上です。ところが、偉い人ばかりで組織としてまったく機能していない。小池知事だけが頼りのファーストのほうが、むしろ機動力が高く見えてくる。森喜朗氏や舛添要一氏も自らの小池知事批判がかえって、小池陣営の得点になっていることを知ってほしい。都連最高顧問の深谷隆司氏は、会合で事あるごとに『自分の息子が電通の部長』であることをとりあげるのです。先生のお人柄を知っていれば笑って『また始まったな』と思う程度ですが、それが無党派層に届くのかといえば違うと思う」

「萩生田光一氏、下村博文氏と、自民党都連の中心人物がことごとく加計学園問題の関係者です。政府としては国会を無理やり閉会して逃げ切ったつもりかもしれませんが、選挙への影響は未知数。あと半月で有権者が忘れてくれるとも思えない。このうえ、加計学園問題で珍しく冷静さを欠いていた菅義偉官房長官が小池知事の人格攻撃に手を染めてしまえば、まさかの大敗というシナリオすらありうる」

都民はいかなる審判を下すか。

(写真=時事通信フォト)