安保理の北朝鮮人権会合 EPA=時事

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 北朝鮮が世界の安全保障を揺るがす脅威となった。しかし武力攻撃を米国に頼るのが現在の日本である。北朝鮮情報の発信メディア「デイリーNKジャパン」編集長・高英起氏が米国の本音を分析する。

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 ここ1か月、米国が北朝鮮に先制攻撃を仕掛けるような緊張状態が続いていた。長年、国際社会の悩みの種となっていた北朝鮮の核・ミサイル問題が、一気に解決するかのような論調も見受けられた。

 しかし、筆者は、複数のメディアで今回の情勢を解説する機会があったが、次のような見方を示していた。 「トランプは金正恩を先制攻撃できないだろう」

 筆者が、米国が先制攻撃できないとする最大の根拠は、既に北朝鮮が事実上の核保有国だからだ。北朝鮮が大言壮語するように、米国本土を打撃できる核武装国家とは言いがたいが、核爆弾の実験には成功している。北朝鮮の核兵器も核関連施設についても全てが解明しているわけではない。

 もし米国が北朝鮮を攻撃すれば、米本土に打撃を与えられないまでも、同盟国である日本と韓国が核の報復を受ける可能性がある。それだけでなく、在日韓米軍、そして滞在している多くの米国人が核の脅威にさらされるかもしれない。

 米国がそこまでのリスクを覚悟して、北朝鮮を先制攻撃するとは思えない。

 一方、金正恩も米国は攻撃してこないだろうという目算があったと見られる。4月13日、金正恩は平壌市内の高層マンション群「黎明(リョミョン)通り」の竣工式に現れた。こうした場に、金正恩が現れるのは極めて異例だ。海外メディアを気にしたのか、それとも自分に対する攻撃に不安があったのか、落ち着きがなかったものの、4月15日には軍事パレードのひな壇にも立っている。

 今後も、今回と同様に一時的に緊張が高まることがあるだろうが、しばらくたつと何事もなかったかのように過ぎる可能性が高い。

 となると、金正恩は遅かれ早かれ、核実験、そして長距離弾道ミサイルの発射実験を強行しながら、核武装国家に向けて着々と進んでいくだろう。米国に着弾可能な核ミサイルが完成すれば、もはや米国でさえ手出しできず、日本に対して脅威を与えつづける国家となりうる可能性が高い。

 核ミサイルの悪夢は、いつまで続くのだろうか。

●こ・よんひ/関西大学経済学部卒業。1998年から1999年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※SAPIO2017年6月号