現役最多の犠飛を記録している新井貴浩(C)KYODO NEWS IMAGES

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◆ 犠飛のシーズン記録は「15」

 打撃の基本といえば、ゴロを打つこと。野球を始めた頃、指導者によく言われたのが「ボールを叩け」というもの。いわゆるダウンスイングを徹底的に教え込まれる。

 理由はいくつかあるが、フライを上げてしまっては捕られたらおしまい。ゴロなら捕球・送球・捕球とアウトまでに3つのポイントを要するため、ミスが生じる確率も単純に高くなる、というのがひとつの考えだ。

 こと少年野球くらいのレベルではミスがつきものであり、ゴロを打てば“何か起こる”可能性は高い。そのため、指導者はまずゴロを打たせようとする。

 しかし、野球にはゴロよりもフライが必要になる場面というのもある。それが走者を三塁に置いた場面。『犠牲フライ』である。

 無死または一死で走者が三塁にいる場合に、打者が外野へ飛球を放つ。外野手がこれを捕球した後、三塁走者が本塁に生還すると、打者の記録に『犠飛』がつく。

 ただし、『犠打』とは異なり、一塁走者や二塁走者が進塁に成功しても『犠飛』とは記録されない。あくまで得点を上げた場合にのみ記録される。

 プロ野球や高校野球の試合を見ていてもさほど珍しいシーンではない『犠飛』。しかし、個人記録としてみると、意外とその個数というのは少ないのだ。以下は『犠飛』のシーズン記録トップ5。

【犠飛・シーズン記録】

1位 15個 大杉勝男(東映/1970年)

2位 12個 佐々木恭介(近鉄/1975年)

2位 12個 原 辰徳(巨人/1991年)

2位 12個 江藤 智(広島/1995年)

2位 12個 R.ローズ(横浜/1996年)

◆ 届きそうで届かない...

 安打は「216」、本塁打は「60」、打点は「161」。これらの数字を見ていると、意外といけるのではと思えてくる『犠飛』のシーズン記録。しかし、46年もの間その記録は破られていない。

 参考までに、昨季の数字を見てみよう。

【2016年・犠飛ランキング】

1位 9個 内川聖一(ソフトバンク)

2位 7個 鈴木大地(ロッテ)

2位 7個 デスパイネ(ロッテ)

2位 7個 メヒア(西武)

2位 7個 ロペス(DeNA)

 最多は内川の9個と、2ケタにも届かず。ちなみに2015年はソフトバンク・松田宣浩とヤクルト・畠山和洋の8個、2014年は西武・栗山巧の9個、2013年は今江敏晃(当時ロッテ)の11個、2012年は今江ら3選手の8個、というのが最多となっている。

 近年最も近づいたのでも、2013年の今江と2010年・2011年の中島裕之(当時西武)が記録した11個が限界。「15」という記録は届きそうに見えてなかなか届かない。

◆ トップ10入り目指す2人の現役選手

 最後に通算のランキングも紹介しておこう。

【犠飛・通算記録】

1位 113個 野村克也

2位 105個 加藤英司

3位 100個 王 貞治

4位 95個 門田博光

5位 90個 長嶋茂雄

5位 90個 張本 勲

7位 88個 山内一弘

7位 88個 落合博満

9位 86個 大杉勝男

10位 79個 山本浩二

―――

12位 74個 福浦和也(ロッテ)

12位 74個 新井貴浩(広島)

 プロ野球の犠飛王はノムさんこと野村克也氏。名だたる選手たちを抑え、見事1位に君臨している。

 また、現役選手ではロッテの福浦と広島・新井が12位にランクイン。新井は今季1個を上積みし、福浦に並んだ。

 ちなみに74個の12位タイには大島康徳氏がおり、あとひとつでランクアップ。その先には78個の土井正博氏がいて、そのまた先が歴代10位の山本浩二氏。福浦と新井はトップ10にランクインしていくことができるか。こちらも注目だ。