一時停止しないでもよい踏切があります。道路交通法で「例外」が定められているのです。

「列車優先」ではない踏切がある

 クルマを運転中、踏切でも一時停止しなくてよい場合があります。そのひとつが、東京都世田谷区にある東急世田谷線の「若林踏切」です。


若林踏切を通過する東急世田谷線の列車(乗りものニュース編集部撮影)。

 東急世田谷線と環状7号線(環七通り)が交差する若林踏切。環七通りを走るクルマは一時停止することなく、次々に通過していきます。なぜ一時停止が不要なのか、世田谷警察署に聞きました。

――若林踏切では、なぜクルマが一時停止しないのでしょうか?

 クルマも列車も信号で制御しているため、踏切の手前でクルマは一時停止する必要がありません。環七通りは交通量の多い幹線道路ですので、クルマが1台1台、踏切の前で一時停止すると渋滞してしまいます。

――一時停止しないことで、危険はないのでしょうか?

 この踏切では列車も「信号待ち」をし、クルマが走っているとき、列車は通らないしくみになっています。

「踏切」というよりも「交差点」? 道交法によると…

――線路と道路の信号は、どのように動いているのでしょうか。

 警視庁の交通管制センターによって、交通が円滑になるよう信号が制御されています。この踏切では、線路に平行して横断歩道と歩行者用の信号も設置されており、それが青になると、歩行者とともに列車が道路を横切ります。そのため「踏切」というよりも、ふつうの交差点と同じ概念です。


若林踏切では列車が「信号待ち」する(乗りものニュース編集部撮影)。

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「車両等は、踏切を通過しようとするときは、踏切の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止し、かつ、安全であることを確認した後でなければ進行してはならない」(道路交通法 第三十三条)

 道路交通法では「踏切の通過」についてそのように、直前で停止し、安全確認したのち進むことと定められていますが、あわせて「ただし、信号機の表示する信号に従うときは、踏切の直前で停止しないで進行することができる」とされています。

 このように、信号により制御されているためクルマが一時停止する必要がない踏切は、東京都内ではJR新金線と国道6号が交差する「新宿(にいじゅく)新道踏切」(葛飾区)などがあります。ちなみに「新金線」は、総武本線の小岩駅と常磐線の金町駅を結んでいる貨物線の通称です。

【地図】若林踏切の場所


東急世田谷線の若林駅近くにあり、環七通りと交差している若林踏切。渋谷駅から西南西の方向に直線距離で約4kmの場所(国土地理院の地図を加工)。