女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは、普通の毎日を送っていたのに、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちのエピソードです。

お話を伺ったのは、1か月前に会社を辞め、現在は東京都足立区内の飲食店でアルバイトをしている水谷由美子さん(仮名・40歳)。彼女はマラソン選手の有森裕子さんに似ています。短めのボブヘアにほっそりとした体型で、真面目そうで、堅実な女性そのものといった外見をしています。

ファッションも、白のタートルニットに、黒チェックのVネックのジャンパースカートを合わせていて、シンプルでおしゃれ。ただ、白のニットの胸元あたりに、茶色いシミがついているのが気になりました。バッグはスモークピンクのナイロン製。持ち手の部分が茶色の合革素材です。まず、現在の仕事について伺いました。

「先月まで小さな広告代理店で働いていたのですが、上司からのパワハラに遭い、ボロボロになって辞めました。最後のほうは出社できなかったですよ。大学を出てから20年近く、もう15回以上転職していますが、ホントに私は職場に恵まれないんです」

由美子さんのキャリアについて伺うと、日本で一番大きな大学の文系学部を卒業してから、東証二部に上場しているメーカーに就職。そこから転職を繰り返しているとか。

「転職経験者は“最初の会社がいちばんいい”と言いますよね。私も同じで、新卒で就職した機械の部品を扱う会社がよかったかな。女子だけ制服があったり、仕事中の間食や私語厳禁というようなガチガチに社員を管理する職場でした。でも福利厚生はしっかりしていたし、会社が安定しているから、みんな優しかったと思います。当時は感じませんでしたが、歓送迎会や社員旅行など、“一緒に働く仲間”という意識があって、よかったですね」

由美子さんは管理されるのが嫌いだけれど、仲間が欲しいと感じている。

「若い女性というだけで、社会的にナメられますよね。だから仲間が欲しいんです。相手にバカにされると心が傷つくんですよ。今はお金がないから、誰からもフルボッコだと感じる。そういうときに、おなじように悩みや境遇を語れる人がいればいいのに、と思います」

かつての友人たちは疎遠になっているとか。2社目以降の会社は、ブラック企業が多いうえに、中途採用だから疎外感を味わうことも多いそうです。

「私の真面目そうな外見で、仕事ができそうだと相手は思い込むんです。だから私も期待に応えようと一生懸命そう見せます。もう言ってしまいますが、私はエクセルも使えないし、それどころか、ろくに仕事の経験もありません。大学も地方の中堅公立高校からの推薦で入ったので、実は勉強もできません。さらに、私は注意力散漫でいい加減。確認をサボってよく怒られるのですが、上司に信用できないとか言われちゃうと、過呼吸を発症しちゃうんですよ。体も弱いし……。それに、いつも下の立場になるから、雑用ばかり言いつけられるじゃないですか。同じ会社の子に言っても、無視こそされないものの、“ふ〜ん”って感じで流される。そうすると、辛くて途中で辞めたくなっちゃうんです」

今まで、多くの女性にインタビューしてきましたが、“ホントの自分は仕事ができない人間”と自覚している人は多いです。しかし、最後まで仕上げようと努力をしています。

「最初の会社では、徹夜してでも仕上げた仕事もありますよ。でも、会社の規模が小さくなると、みんないっぱいいっぱいで仕事して、中途半端な指示しかしないで、できないことは反論できない弱い立場の人にかぶせるんですよ。

直近まで勤めていた広告関連の会社では年下の女性上司が“こんな感じでテキトーにリサーチして、資料作っといて”とサンプルの資料もくれずに私に言ってきて、私なりのベストを考えたら“全然ダメ、わかってない”と一蹴されて、作り直そうにも、その上司も生理が止まるくらい忙しくて、全く余裕がないから、2〜3日放置。その案件は上司しか掌握していないから、あっという間にプレゼン当日になって、“こんなの作って来るなんてバカじゃないの”と言われて、リスケになって、“アンタがいるだけでみんなに迷惑がかかる。信用できない。恥ずかしいことをしているんだ”とみんなの前で叱責されるんです」

社会人になれば多くの人が、他人から怒られています。

「20代のうちならいいですよ。でも、私は若く見えますけどもう40歳ですよ。それなのに、人に怒られるのはホントにイヤ。みんなの前で怒られたり、自分がやんなきゃいけないことを投げ出したりすると苦しくなって、駅ビルに行ってカードで服とかアクセとかバンバン買い物しちゃって、お金が無くなる。返せないからリボ払いに設定して、毎月2万円ずつ払っています」

彼女は150万円の借金があるといいます。キャリアエレガンス系のブランドが好きで、言われてみると着ている服はそのブランド特有のシャープさの中に甘さがあるデザイン。

「別に服なんてこの年になるとどうでもいいんですが、買い物に行くとみんなが優しくしてくれる。それが涙が出るほどうれしい。スパとかエステは消えてしまうけれど、買ったものは残りますからね」

結婚も出産も現実的に考えられる人はそれだけで恵まれた環境にある、と由美子さんは語る。

 誰にでも物わかりよく、いい人&マジメに見せてしまう反動で借金まみれ&ダメ男に付け込まれる……〜その2〜に続きます。