フランスでスポーツ紙『L'Équipe』を買ってみたら、おもしろい工夫を3つ見つけた

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日本でWOWOWを見るに飽き足らず、EURO2016を観戦するためにフランスの地を訪れている編集部S。

15日にはパリからマルセイユへと移動し、スタッド・ヴェロドロームでフランス対アルバニア戦をチェックしてきた。6万7000人が埋まったスタジアムは最高の雰囲気であり、この時の様子はまた新たにご紹介する予定だ。

そんなフランスで貴重な体験をさせていただいている筆者だが、編集者としては現地のメディア事情も気になるところ。サッカー文化が根付いているヨーロッパでは、どのような報じられ方がされているのか大変興味があった。

そこでこの試合の当日朝、日本でも有名なフランスのスポーツ紙『L'Équipe(レキップ)』を購入。すると、興味深い内容がいくつかあったので掻い摘んでご紹介しよう。

『L'Équipe』ってどんな新聞?

『L'Équipe』は、フランスを代表する日刊スポーツ紙だ。

創刊は1946年と比較的歴史は浅いが、編集者を務めていたガブリエル・アノーがチャンピオンズリーグの前身であるチャンピオン・クラブズ・カップを提唱するなど、世界的に知られる新聞である。

サッカーの他にはラグビーやサイクルレースなどに強く、年間の発行部数はおよそ20万部ほど。値段は1.4ユーロ(およそ163円)で、駅の売店などで気軽に購入することができる。

1. 「大事なこと」を最初に書く

こちらが15日付けの表紙だ。

一面を飾ったのはキングスレイ・コマンとアントニ・マルシャル。ルーマニアとの開幕戦でパフォーマンスが揮わなかったことから、この日のアルバニア戦でデシャンは若手2人を起用するのではないか、ということを伝えている。

と、まぁここまでであれば一般的な見出しなのだが、小見出しに大切なことが書いてあった。

「EURO2016」、「フランス対アルバニア」という情報の真下に大きく書かれていたのは、この試合のキックオフ時間と中継するテレビ局だ(中継したのは『TF1』と『beIN Sports』)。

その試合がどのチャンネルで放送されるのかという情報は、日本ではやや軽んじられがちである。日本の新聞はテレビ局との関係が深く、他の系列の情報を書くことができないなどの日本ならではの事情があるのかもしれない。

しかし、そんなことは読者にとっては関係ない。

読者はその試合の情報を得るために新聞を購入しており、こうした試合の中継情報はキックオフ時間同様大事なことである。そのことをまず伝える姿勢に、ヨーロッパのサッカー文化を感じた。

2. 中継のキャプチャー画像を使った解説

アルバニア戦当日ということで、さすがにこの日はこのゲームのレビューが多く掲載されていた。

こちらは同紙による予想フォーメーション図。スタンダードなタイプだ。

ちなみにこの日、『L'Équipe』はシステムと大幅なメンバー変更を予想。ポール・ポグバやアントワーヌ・グリーズマンを外すという大胆な報道であったが、先発メンバーを当ててみせた。

そんな同紙だが、焦点を当てていたのはフランスだけではない。

対戦相手のアルバニアについても細かくプレビュー。

なかでも目を引いたのが、試合中継のキャプチャー画像を用いた戦術的な解説だ。

キャプチャ―画像を用いた解説は日本でもブログやWebサイトなどでは見られるが、新聞や雑誌ではあまり見ない。やはり権利的なものが関係していそうだが、写真付きの方が理解が深まるのは言うまでもない。

このページでは、FWアルマンド・サディクの動き出しと前線の選手の構成について説明しているようだ。日本のスポーツ紙ではなかなかここまで深くは報じない。


『Opta』のデータを用いたグラフも掲載。

対戦相手のアルバニアについても、かなりしっかりと報じている印象を受けた。

3. 地味に助かる情報

大きな力を持つ新聞でありながら、『L'Équipe』はどこまでもユーザー目線だ。

こんな図があった。

こちらは、15日に予定されている試合の一覧だ。

地図を用いて試合の開催都市を紹介しているのだが、キックオフ時間の予想天気もしっかりと伝えている。これは遠征に出かけるファンにとってもありがたい…。

また、目玉マークがついている場所は、公開練習が行われる場所を表している。この日はマルモールという場所で午後6時からオーストリア代表の練習が予定されていた。

公開練習のスケジュールなどは各チームがバラバラで発表しており、全てを網羅するのは難しい。取材した内容を綴るだけでなく、読者にとって有益な内容を届けるというのはこういうことを言うはずだ。

新聞でありながら、ブレーズ・マテュイディの長文インタビューも掲載。

改めて考えると、『L'Équipe』は“新聞”の形をしつつも中身は“雑誌”に近いのかもしれない。