「六曜」が入ったカレンダーがなぜ差別につながるのか?

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「大安」「仏滅」「先勝」「友引」などカレンダーの日付けと共に記載されている「六曜」。「偏見や差別など人権問題につながる恐れがある」などとして大分県でカレンダーの配布の中止と回収騒ぎが起こった。

日本では「六曜」を記載したカレンダーも少なくなく、冠婚葬祭や建築がらみで参考にする人は多い。そのせいか、配布の中止と回収について、行政側に「載せて何が悪いんだ!」といった問い合わせが相次いでいるという。

大津市でも人権団体からの抗議で職員手帳を回収

「六曜」が入ったカレンダーや日記帳の配布の中止や回収を行ったのは大分県の佐伯市、杵築市、臼杵市農業者年金協議会、世界農業遺産推進協議会大分。佐伯市は合併後の市制10周年を記念した「佐伯市10年ダイアリー」5万冊を2500万円かけて作製した。しかし、市内部から「六曜」が載っているのは不適切だとの指摘があり、2015年12月25日に配布の中止を発表した。

同市の担当者によれば、これまで「六曜」記載のカレンダーを制作したことは記憶になく、「手違い」によって印刷してしまったという。「六曜」は科学的根拠がない迷信や因習であり、

「偏見や差別など人権問題につながる恐れがある」

としている。世界農業遺産推進協議会も同日、制作したカレンダー2000部に「六曜」が入っていることに気づき、既に配布が終了した1800部の回収と新たな配布を取りやめた。この協議会がカレンダーを作ったのは今回が初めて。世界農業遺産のPRと、写真コンテストの入賞作を掲載する目的で作った。

「公的な機関として不適切であり、むしろ我々が六曜の入ったカレンダーを見つけた場合に注意すべき立場にあるだけに申し訳ない気持ちです」

と担当者は説明した。しかし配布自体に批判は来ていないようで、むしろ「載せて何が悪いんだ!」といった問い合わせが相次いでいるという。

「六曜」を載せて問題になったのは大分県に限った事ではない。2005年には滋賀県大津市職員互助会が発行した職員手帳に「大安」や「仏滅」などの六曜が記載されていたことに、人権団体から抗議があり、発行済みの約3800冊を回収する騒ぎが起こった。同市では1990年以降は「非科学的な迷信で人権差別になる」という理由から掲載は止めていたが、新市長の意向で「復活」させたところ騒ぎに発展した。

六曜入りのカレンダーをお客は欲しがっている

「六曜」の起源ははっきりしていない。中国から入ってきた吉凶占いの小六壬(しょうろくじん)が原型とされ、江戸時代の終わり頃に暦に付けられるようになった。「仏滅」の「仏」という字は、元々は「物」だそうで、明治時代に暦業者が「仏」という字にしたところ、仏教と関係があるという誤解から広く使われ、信じられるようになったのだそうだ。そして、冠婚葬祭や建築を行う上で判断する基準として今も広く使われている。

大安は引っ越し代金が高かったり、友引の日は斎場や葬儀屋が休業したりする、といった影響も与えている。日本の老舗カレンダーメーカーの高橋書店に取材したところ、「六曜」入りのカレンダーの数は非常に多いが、それに対してクレームのようなものは来たことは無いという。科学的な根拠があるわけではないことは知っているが、お客は「六曜」を参考にしていて、載せてほしいという要望が多いため作り続けている。

「大分での回収騒ぎは知っています。当社にも何らかの影響が出るとするならば、今後検討をすることになるのかもしれません」

高橋書店の担当者はこう話している。