左から次男の祐介さん(28)、直美さん(25)、信一さん(53)、美紀さん(52)。

写真拡大

■親子ローンで約5000万円

親世帯と妻子のいる子どもが同居する「二世帯住宅」には様々なメリットがある。親世帯にとっては家族が近くにいることが老後への備えになる。一方、子世帯にとっては育児へのサポートが期待できる。特に増え続けている共働き世帯には重要な要素だ。

ただし家族との同居を考えたときには、「独身の兄弟姉妹の住まい」という問題がある。非婚・晩婚化や離婚後の「出戻り」というケースも少なくない。建て替えは子どもが家を出たときに、などと考えていると、自宅も家族も、どんどん老化してしまう――。

1975年に「二世帯住宅」を提案した旭化成ホームズは、「2.5世帯住宅」という新しいコンセプトで、この問題への対応法を示している。「家から出ること」を待つのではなく、「独身の兄弟姉妹も同居する」という2世帯に「0.5世帯」を加えた家だ。

神奈川県横浜市の斎藤信一さん(53歳)、美紀さん(52歳)夫婦は、12年9月、築30年の自宅を建て替えた。子どもは4人。長男の耕介さん(31歳)は結婚して横浜市内に住んでいるが、次男の祐介さん(28歳)、直美さん(25歳)の共働き夫婦と、3男の佳介さん(24歳/現在、単身赴任中)、4男の俊介さん(21歳)の6人が暮らせる3階建てだ。

「次男の祐介から同居の提案がありました。以前の家では私の両親が亡くなるまで8人の大家族でしたから、同居に対する抵抗感はありませんでした。人が集まれる家のほうが楽しいですよね。『老後』を考えるのはまだ先ですが、いろいろと選択肢が広がって、安心感がありますね」(信一さん)

二世帯住宅では「嫁姑問題」が気になるところだが、斎藤家に嫁いできた直美さんからは「キッチンは1つでいいですか?」という提案があるほど、結婚前から気心の知れた仲だった。

「私のほうから『本当にそれでいいの?』と聞き直したぐらいです。結局、私の経験からキッチンやリビングは2つに分けることにしました。いまは1つしか使っていないんですが、子どもが生まれたり、年を重ねたりすると生活スタイルも変わる。気兼ねなく友だちを呼べるような家のほうがいいだろうと思ったんです」(美紀さん)

次男の祐介さんは、直美さんに「親と一緒に住もうと思う」と結婚前から伝えていたという。

「建て替えの前に、兄には『自分たち夫婦で両親の面倒をみるつもりだ』と話しました。両親への恩返しのつもりで、同居の話を切り出しました。妻の直美は、弟たちとも親しくしていたし、家族が多いほうが心強いといってくれました」(祐介さん)

建て替え費用は約5000万円。親世帯と子世帯の「親子ローン」で賄った。同居する兄弟姉妹がローンを負担するケースもあるが、斎藤家はそうしていない。弟たちは「部屋が新しくなっただけ」(信一さん)だからだ。弟たちも、いずれは結婚して、独立するだろう。そのときには祐介さん夫婦の子どもたちが使っているはずだ。

「2.5世帯住宅」は、昭和の半ばの時代まで見られた大家族という暮らし方に近い。そんな時代を知らない世代にとっては、満足度の高い新鮮な暮らし方になるに違いない。

(山下知志=文 永井 浩=撮影)