いまだ不透明な巨人の4番、阿部が本命も、セペダも好調を維持

 開幕を間近に控え、巨人の4番がなかなか決まらない。3月14日の西武戦でふくらはぎ痛から復帰した本命・阿部慎之助内野手がこのまま状態を上げていけば、実績からいっても、チームの打撃の流れからみても、オーダーにはまるだろう。西武戦後に患部の状態を聞かれた主砲も「試合に復帰しているので、もう(ふくらはぎのことは)聞かないでほしい」と話しており、過去を振り返ることなく、開幕に向けて自分のバッティングを向上させることしか頭にない。

 4番候補の1人だった村田修一内野手は阿部と入れ替わるようにして、2軍での調整が決まった。1軍から離れ、内田2軍バッティングコーチからアドバイスをもらい、打撃の修正に着手。開幕までの時間を有効に使ってほしいという原監督の親心である。1軍コーチからは清水隆行コーチがともにそのフォームをチェックすることになった。村田は1軍の戦力から外れたわけではなく、復調すれば、開幕スタメンも十分にある。

 ここまで14試合中、5試合で4番に入ったのが大田泰示外野手。しかし、新しい4番候補は11日のソフトバンク戦で左太ももの肉離れをしてしまった。最近2試合はベテランの高橋由伸外野手兼コーチが務めている。そして最も多く4番に入っているのはフレデリク・セペダ外野手の7試合。競争が熾烈な外野陣の中で、好調を維持している。セペダの今年の本気度がうかがえる。

 セペダは低めの変化球に手を出して空振り三振となるケースも目立つが、その割合も少しずつ減ってきた。11日のソフトバンク戦から4試合連続ヒット中で、その間12打数5安打、打率4割1分7厘。浮上のきっかけはホークス戦との3連戦を前にあった。

原監督の指導にセペダも感謝、「タイミングの取り方を教えてもらった」

 原監督はバッティング練習中にフォームの指導を行っている。「キューバの至宝」と言われるほど完成された選手に対して周囲が大きく何かを変えようと働きかけるのは難しいもの。だが、セペダは「タイミングの取り方を教えてもらったよ」と感謝し、時間が許す限り、反復練習に取り組んだ。それも一心不乱に。

 とにかく練習をする男である。原監督も「セペダもだいぶ本来のスイングが出来てきている。少し矯正した練習をして、それがいい方向にいっている感じがする」と変化を感じ取っている。

 勤勉な姿は他のシーンでも目にする。昨年、不振の時期に走り込みを命じられた。他の2軍選手も同様に走っている通常メニューだ。実績のある外国人選手は嫌がってやらないか、嫌がりながら意義を感じずにただ走るか。3年前のマシソンのように「日本ではこんなに走るとは知らなかった。これがいい投球につながるならば進んでやる」と新たな取り組みとして前向きに臨むケースもあるが……。

 セペダはそのどれにもあてはまらなかった。同選手の中では走り込みは「当然のこと」という認識。キューバの野球も日本と同じで、走ることを基本にしている文化だった。幼少期から走り、一流になっても走ることはやめない。このようにして、下半身を鍛えてきた。

 昨年は期待されながらも打率1割台と低迷した。その印象もあり、過度な期待をしている人は少ない。ただセペダの復活を期待する原監督は4番に据え、本人も巻き返しに必死である。4番が決まらない巨人ではあるが、約10日後に迫った開幕では、セペダがこのまま好調を維持してその座をつかむのか。それとも阿部や村田、高橋由ら日本の4番を経験している3選手になるのか。巨人の「4番」争いから目が離せない。