原口一博オフィシャルブログより

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 先の衆院選挙では、本人による選挙運動がまったくできなかった原口一博元総務大臣。その原因は、昨年8月に自宅の階段で転倒し、足を複雑骨折したことだった。原口議員は自宅から救急搬送され、病院で手術を受けた。手術は無事に終わったものの、さらなる不運が襲った。それがMRSAの院内感染だった。

 MRSAを院内感染した原口議員は、長期療養を余儀なくされた。それが理由で、突然の衆議院解散に対応できなかった。入院中にも関わらず、原口議員は出馬。選挙戦は親族が一致団結して協力し、見事に小選挙区で当選している。前回の選挙ではギリギリの比例復活だったので、雪辱を果たしたと言っていいだろう。

 そんな原口議員は東京大学出身で、卒業後は松下政経塾に入塾。佐賀県議を経て国政に転身している。2009年に発足した鳩山由紀夫内閣では、民主党議員の中では当選回数の少ない5期ながら総務大臣に抜擢されるなど、超エリート議員でもある。

 総務大臣に抜擢されたのはICT(情報通信分野)の知識に長けていることが理由だった。総務省は情報通信分野を所管する省庁でもある。原口議員は国会議員の中でも早くからツイッターのアカウントを取得し、総務大臣時代も盛んに発信していた。

数字を詩に置き換えて解く

 そんな原口議員だが、永田町では知る人ぞ知る超変わり者として有名だ。政治家で変わり者といえば、総裁選で変人と呼ばれるようになった小泉純一郎元総理大臣や理解不能な感性の持ち主で宇宙人とも称された鳩山由紀夫元総理大臣などがすぐに思い浮かぶ。そうした政界ビッグ2と並べても、原口議員の“変”さは見劣りしない。

 例えば、原口議員はジャーナリスト・田原総一朗氏との対談でこんなエピソードを披露している。原口議員は東京大学卒という優れた頭脳の持ち主だが、高校時代は数学が“超”がつくほど苦手だった。

 その苦手ぶりは尋常ではなく、「数字を見るだけでも吐き気を催すほど」(本人談)だったという。困り果てた原口少年は、担任の教師に相談。すると「お前、中原中也の詩が好きなんだよな? だったら、数字を詩に置き換えて解いてみればいいんじゃないか?」とアドバイスされたと言う。

 原口少年はすぐにアドバイスを実践。教科書の数字をどんどん中也の詩に置き換えていった。すると不思議なことに、これまで見るだけで吐き気を催していた数字が、すっと頭の中に入るようになり難問でもスラスラ解けるようになった──。

 日本広しといえども、この原口議員の話をきちんと理解できる人は皆無だろう。また、原口議員の勉強法を真似して東大合格を目指す受験生もゼロに違いない。田原氏との対談は一般公開でおこなわれたが、対談相手の田原氏や詰めかけたギャラリーも原口氏の不思議な話に言葉を失っていた。

 元民主党議員は超越したセンスを持つ原口議員のことを「ITを駆使する吟遊詩人」と形容する。詩人といえばロマンチックにも感じるが、「原口さんの言語センスはポエティックなので、なんとなくは伝わるんだけど、文書にすると、わからないことも多い。それなので、困ることもある」(前出・元民主党議員)と言う。

 原口議員は「TVタックル」などテレビ出演も多く、お茶の間にも顔を知られた国会議員でもある。ところが、選挙区の佐賀1区では自民党候補者との接戦が続いている。知名度のわりに選挙は弱い理由は「選挙演説の言葉がポエティックなので、集まった有権者が話を聞いていても“???”となってしまうからではないか?」(永田町関係者)とも分析されている。

 怪我も病気も克服して国会に戻ってきた原口議員。一般人には理解不能なポエマーぶりに注目だ。

(文/小川裕夫)