ネット上に出回った「日本人乗客お断り」という貼り紙の画像

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 タイで“日本人乗車拒否”のタクシーが出現!?──最近、ネット上に「日本人乗客の停止」という日本語の貼り紙をしたタクシーと思われる車の画像が出回り、「親日国のタイがなぜ?」と話題を呼んだ。

 間もなく、これはいたずらのようだと判明したが、この騒ぎは今年1月18日、タイでボランティア活動を行っている日本人男性がフェイスブックで、バンコク・スワンナプーム国際空港におけるタクシーのぼったくり行為を告発したのがきっかけだった。

 その内容は、男性が同空港のタクシー乗り場からタクシーに乗車しようとしたところ、運転手はメーター使用を拒否して通常の2倍もの料金を要求。その後、空港の担当者に抗議したにもかかわらず、まともに取り合ってもらえなかったというもの。

 事件の翌日、男性が自身のフェイスブックで日本語とタイ語でことの顛末を紹介したところ、3万件を超える「いいね!」、1万6千件以上ものシェアが付くなど大反響。「バンコクポスト」などの地元紙やテレビも大きく報道したことから、事態を重く見た警察も動き出し、運転手に1千バーツ(現在のレートで日本円に換算すると約3,600円だが、現地の感覚では1万円ほどに相当)の罰金と、空港での客待ち禁止処分を課した。

「レシートをよこせ」と求める運転手は危険

 このニュースに触れて、「タイのタクシーは怖い」と思った人も少なくないはず。これからタイは4月のソンクラン(タイの旧正月)など観光シーズンとあって、旅行を控えている人たちも不安を抱いているかもしれない。

 だが、タイに何度も渡航経験のある筆者の経験上、悪質なタクシーは一部で、なかには善良でとても親切な運転手もいる。大抵の場合はトラブルもなく目的地まで運んでくれる。

 それでは、「悪質なタクシー」を見分けるにはどうしたらいいのか?

 まずは空港からタクシーに乗る場合。パブリックタクシー乗り場に向かい、待っている人の列に並び、自分の順番が来くると、受付カウンターが「FOR PASSENGER」と記されたレシート状の紙片を発行してくれる。これを持っている限り、トラブルは起きにくいことを覚えておこう。なぜなら、このレシートには運転手の名前や車両ナンバー、携帯番号などがすべて記載されており、裏面は何かトラブルが起きた際に該当事項にチェックを入れ、切手を貼って投函すれば、ぼったくりやメーター不使用、目的地以外での降車強要などの行為を働いた運転手を告発できるようになっているからだ。

 つまり、腹に一物ある運転手にとってはすこぶる都合が悪いわけで、件の男性もフェイスブックで触れていたが、悪質なタクシーの場合は証拠隠滅目的で「レシートをよこせ」と要求してくるパターンがお約束だ。

 もし運転手からそのように言われたら、それは「ぼったくるぞ」という犯行予告に等しいので、その時点で乗車を見合わせたほうがいい。



空港のパブリックタクシー乗り場で渡される紙片。これを要求するドライバーは危険

 数年前、まだ事情がよくわかっていない頃、言われるままにレシートを渡したところ、直後、ターボメーター(通常のメーターの倍以上のペースで料金が上がっていく不正改造メーター)を使われた。すぐに気づいて抗議すると、運転手はうろたえて「アクシデントだ!」「メーターが壊れた!」と必死で言い訳をしたが、いまから考えると、最初にレシートを要求してきた時点で確信犯だったのは明白。結局、料金交渉をする羽目になった。

人のいい日本人は“カモ”にされやすい

 タイでは旅行会社が日本ツアーを大々的に宣伝したり、「CoCo壱番屋」「大戸屋」「銀だこ」など日本の飲食チェーンが人気を集めるなど、日本に親しみを感じる人が多いのも事実。

 しかし、欧米人や中国人、韓国人は理不尽な仕打ちを受けると声高に抗議するのに対し、基本的に論争を好まない日本人は「めんどくさいから、高くてもいいや」と妥協しがちなため、お人好しと思われ、カモにされやすい一面もある。

 そんな事情もあって、以前、運転手に「ジャパニーズ?」と聞かれた際に警戒して「ノー。シンガポール」ととぼけたこともある。「シンガポールも渋滞はひどいのか?」「バンコクほどじゃないけど、それなりに渋滞するなあ……」と、しばらく化かし合いのような会話が続いた。

 その一方で、日本に滞在経験のある運転手は「金沢と横浜に行ったことがある」などと親しげに話しかけてくる。いずれにしても、会話が盛り上がったときには、ぼられたり、不愉快な思いをした記憶がない。

ホテルの前で客待ちをするタクシーにも注意

 もう一つ、帰国の際にホテルの前で客待ちをしているタクシーもぼったくり率が高い。初めから相場より100〜200バーツ高めの料金を吹っかけてくるので要注意だ。

 帰国日はバーツが余っているのだから、素直にメーターを使ってくれれば100バーツぐらいチップをあげてもいいのだが、吹っかけられているのがわかると、かえって意地になり、大通りまで歩いて流しのタクシーを拾ったり、エアポートリンク(高速鉄道)を利用したりする。または、「安心を買う」という意味から、ホテルのタクシーカウンターでリムジンタクシーを予約するのもひとつの手だ。

 バンコクではいくらでもタクシーが走っているから、気に入らなければ別のタクシーを利用すれば済むこと。渡航予定のある人は、日本人をカモにする悪質なタクシーを見きわめるポイントを押さえて、旅行を楽しんでほしい。

(文/南島一好)