「戦闘シーンが無茶苦茶カッコいい」艦これの産みの親がアニメを語る
『艦隊これくしょん ─艦これ─』(以下、『艦これ』)アニメ放映開始を記念して、仕掛け人のひとりであるエグゼクティブプロデューサー・岡宮道生氏へのインタビューを敢行した。アニメ本編の展開もさることながら、原作ゲームも何かとご苦労や今後の展望があるようで……。
無限に増えていく鎮守府サーバー──原作ゲーム立ち上げ当時からも、色々とご苦労があったかと思うのですが。
岡宮 最初の頃は本当に申し訳ないことに、サーバと回線の規模が間に合わなくて、ユーザーのみなさんにはご迷惑をおかけしてしまいました。
(筆者註:『艦これ』では「鎮守府」や「泊地」などと称される各サーバ。サービス開始当初の2013年夏頃、特に週末や期間限定イベントになるとプレイするユーザーが増え、アクセスが集中しログインできなくなる事態が度々起きていた)
──人数の増えすぎた呉や横須賀、舞鶴サーバから、当時設置されてまだ間もない大湊サーバへ一定人数を移動、ということもありましたね。
岡宮 該当した提督のみなさんには申し訳なかったです。あの頃は本当に色々大変でした……。プラットホーム側もですが、ゲーム側も新しいサーバをガシガシ立てていくにしても難しいところがあって、(ブラウザゲームとしては)ちょっと有り得ない規模での拡張になっています。
「原作ゲームとアニメの乖離がまったくない」──アニメ版の放映が開始されましたが、今のご心境は?
岡宮 感無量ですね。私はアニメの制作に直接関わっている訳ではないんですが、2014年末の先行試写会で改めて大きな劇場でユーザーのみなさんが喜んでくださっているのを見て、「あぁ、あの僕らのタイトルがこうしてアニメにまでなったんだな」と嬉しくてつい涙ぐんでしまいました。
──「艦娘が動いている」というのは、ユーザーにとっても感動的だったようですね。
岡宮 KADOKAWAさんとスタッフの方々がかなり力を入れてくださっているので、ものすごい物ができていますね。クオリティも高いですし、スタッフの皆さんの熱気を感じますね。
──岡宮さんから見て、アニメ版の魅力はどの辺りでしょうか?
岡宮 各艦娘の性格がとても良く出ていて、艦娘が生き生きとしている点ですね。回を重ねる毎にその点は感じて頂けるのではないかなと。原作ゲームの世界観との乖離がまったくなく、良い感じに再現されていると思います。あとは戦闘シーンが無茶苦茶カッコいいので、そこも必見です。個人的にはケレン味もあっていいなぁと。
先にアニメを観て『艦これ』に興味をもって下さる方もいらっしゃると思いますが、ゲームのほうもやっていただければ、より楽しんでいただけると思います。
──役者さんはアニメもゲームも同じということですが、その演技はいかがでしたか?
岡宮 これはもう素晴らしいですね。ゲームと同じという事でひとりで何役も演じられているんですけれど、演じ分けてくださる力がすごいですね。同じ声優さんが続けて違う役でセリフをいう場面もあって、原作のゲームを知っている方にはそういったところも隠れた見所になるんではないでしょうか。
──この後のストーリー展開についてご存知かと思いますが、ご感想は?
岡宮 いや、良いんじゃないですか……って(内容を)言えるわけないじゃないですか(笑)。
実はだいたいのあらすじと最初の数回以外、全部の脚本を拝見している訳ではないんですよ。私もネタバレ無しで映像化されたものを見たいと思ってまして。序盤は刺激的な展開もあってビックリしますが、最終話までどういう風に映像化されていくのか、私も皆さんと一緒に今後の展開をドキドキしつつ楽しみたいと思っています。あ、あと宣伝になってしまいますが(笑)、DVDの発売や、DMM.comでも放映に合わせて動画配信していますので、テレビ放映を見逃した方や放映地域以外にお住まいの方はご活用いただければ!
「ゲーム業界の風潮に一石を投じたタイトルになれば嬉しい」──話は原作のゲームの方に移りますが、オープンからもうすぐ2年が経ちますね。
岡宮 はい。おかげさまで今年の4月で3年目に突入します。ここまでこれたのは本当に支えていただいている提督の皆さんのおかげですね。大変感謝しています!
──最近では艦これフォロワーとも言えるゲームが出てきていますが……。
岡宮 艦これを立ち上げた時に、カードバトル+レイドボス+ガチャのようなスタイルばかりじゃ面白くないと思って始めた経緯もあって、そういう風潮に一石を投じたタイトルの一つになっていれば嬉しいんですけども……。
ただ、あのー、これは言いにくいんですが……刀の男子擬人化のゲームが同じDMMゲームプラットフォームで先日出たんですが、最初発表された時にUIとかが『艦これ』とそっくりだったんでビックリしたんですよ。私の事業部と、その他のゲームタイトルを作る事業部は承認ルートが違うので、そういうゲームが作られていたとは知らなくて……。
慌ててテストプレイさせてもらったら基本のシステムとかもそのまんまで。その時に初めてそのゲームの企画概要書を見せてもらったんですが、艦これの画面がそのまま載ってたり、仕様に関しての説明も「屯所 ※基本艦これと同じ」「艦これでいう○○こと××」とか書いてあるだけだったりして。刀擬人化というテーマと絵は良いのに、企画時点から仕様丸々コピーの側替えゲームなんだなと思うと、艦これリリースまで開発中にいろいろと大変だった事を考えて複雑な気持ちになってしまいました。その後、担当のプロデューサーに「あれ、まんまコピーでしょ?」って聞いたら「すいません」って謝られましたが(笑)。
ビジネス的に見ても短期的には良いでしょうけど、中長期的に見れば全く同じ仕様のゲームをプラットフォーム自らが今後もこうして乱造して消費していったら、決してプラスにはならないんじゃないかと思います。
と、こうして偉そうにお話ししてしまいましたが、私自身も新しいタイトルを提供していけるように今後も気持ちを引き締めて頑張っていきたいと思います。
今年中に大きな展開が待ち受けてる!?──『艦これ』全体での今後の展開は?
岡宮 先日発表されましたが、セガのAM2研さんとコラボしました『艦これ』が夏にリリース予定なんですが、これは個人的にも実現したのが凄く嬉しくてですね。AM2研さんにも、ものすごくノリノリで作っていただいていて、私もロケテストに参加してきたのですが、こだわりポイントの作り込みがハンパではないですし、すでに今の時点でこのクォリティの高さはさすがだなと思いました。これからまだまだ完成度を上げて調整もかけていくとのことなので、今後どこまで凄くなるのか期待してます! それと、私もアーケード版用に何曲か新曲を書かせていただく事になりまして、こちらもコッソリとお楽しみいただければと思います。
その他、すでにいくつか用意しているモノはあるんですが、まだちょっと言えなくて……。これも、公表できる日を楽しみにお待ち頂ければと。
──さわりだけでも、というわけにもいきませんか?
岡宮 えーと……言える範囲でお話ししますと、原作ゲームの方は今まで通り大型イベントやアップデートは行いつつ、それとは別に大きな展開を今年中にいくつか行いたいと思っています。少なくとも年の前半と後半で一つづつですね。後半は間に合わなくて年を超してしまうかもしれませんが……。
アニメの方は皆さんの応援次第で今後の展開が……という感じだと思いますので、ぜひ応援をお願いいたします(笑)。
──ジャンルに拘らず、全方位同時に作戦中といったところでしょうか。
岡宮 そうですね。原作のゲームの方はもちろん、『艦これ』をこれからも皆さんに楽しんでいただけるように、各方面ともしっかり続けていきますのでよろしくお願いします!
岡宮道生『艦隊これくしょん -艦これ-』エグゼクティブプロデューサー。 (株)スクウェア・エニックスで『ファイナルファンタジーXII』『ロマンシングサ・ガ・シリーズ』などの宣伝プロデュースに携わり、その後AQインタラクティブ(現・マーベラス)ではKORG DS-10などをプロデュース。現在はDMM.comにてPOWERCHORD STUDIO室長を務める。作編曲家であり、ギタリストでもある。(取材・文/秋月ひろ)
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