さまざまな業界にゲイの先輩たちが働いている

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【ゲイリーマン発 日本のリアル】

 前編では『LGBTと職場環境に関するアンケート』により、LGBTが従事する仕事がある特定の業界や職種に偏っているわけではなく、様々な業界にて、様々な職種に満遍なくLGBT当事者たちが従事している実態が浮き彫りになりました。このことからわかることは何でしょうか。

「多くの当事者たちは、既に自分のやりたい仕事を自発的に選んでいて、LGBTにとって居心地の良い業界や職場かどうかということに特段の際立ったこだわりはない」

ということではないでしょうか。

就活とは本来「無数のマッチングの可能性」に満ちている

 前回記事で、世間ではファッションやクリエイティブ系の職種や業界にゲイが多いというイメージが流布している旨を指摘しました。

 このイメージは、半分は正解で、半分は不正解と言えます。ゲイは、恐らくどの業界にも一定数存在しています。ただ、実力主義で斬新な感性がそのまま仕事に生かされるようなファッション、クリエイティブ業界においては、よりカミングアウトがしやすい雰囲気の会社が多い、というだけであって、他の業界にはゲイが存在しないわけではありません。

 筆者の友人たちも皆、何かしらの自分の仕事を持っています。もちろん、ファッション業界や広告・出版業界等で堂々とカミングアウトをして活躍している人もいれば、お固い都市銀行の行員さんをしている人、財閥系の商社で働いている人、フリーランスで仕事をしている人、士業として独立している人……。

 筆者がプロモーションの仕事をしているのは、学生時代から文章を書くことが好きだったり、世の中の流行や話題にずっと触れ続けていることが好きだったりして、なおかつ文系の自分にできる「ものづくり」は、広告や販促、PRと言った職種だと思ってこの業界の末席に居させてもらっています。

 働く同年代のゲイ仲間たちも、「海外と関わる仕事がしたい」「人助けになることを仕事にしたい」「給料や待遇が比較的高い仕事がしたい」等、今の仕事や会社を選んだ動機はさまざまですが、「好きだからこの仕事をしている」「この仕事や会社が自分に合っているから今の生活をしている」という所に落ち着くのは共通しています。

 このように、世の中には無数の会社があり、人それぞれの「居心地の良さ」の定義があり、無数のマッチングの可能性に満ちています。

「LGBTが働きやすい企業」という狭い選択肢

 一方、「LGBTが働きやすい企業」として一方的に”格付け”された企業は、前述の通り一部の世界規模の外資系企業か外資系投資銀行という非常に限定的な企業群でしかありません。昔、「ボクはありのままのボクを受け入れてくれる会社にしか行きたくないからこの格付けに列挙されている企業しか受けません!」なんて宣言するような子もいましたし、たぶん今でもいると思いますが、彼らよりもちょっとは社会経験のあるオッサンから言わせれば、なんていうもったいないことをしているんだろうと思います。

 社会に出ることに心配や不安があるのはとってもよくわかります。だけど、心配することなかれ、世のほとんどの大人のゲイたちは、そんなに手厚いLGBTへの保護を打ち出したルールなど存在しない会社で、毎日ひょうひょうとよろしくやっているものなのです(笑)。

 それに、社会に出れば自分の居場所は自分で築くものです。最初から手厚い保護の存在するところでしか生きていけないというのであれば、運良くそうした会社に入れても大変な思いをするかもしれません。

 よほどの旧態依然とした組織でない限り、会社という組織での”特別扱い”などありえません。ただ、これは逆に言えば生まれ持った出自や門地、属性、もちろんセクシュアリティにも関係なく、成果を出した人、新しい発見をした人、目標を持って真面目に頑張っている人が評価され、自然とそこが居心地の良い場所になっていくのが「会社」という組織とも言えるのです。

 だから、筆者はこれから就活を始めようと考えている若人ゲイたちに敢えて言いたい。

Gays be ambitious!!
若ゲイたちよ、大志を抱け!!(笑)

 どうか自分の可能性を限定せず、ひとつでも多くの選択肢の中から自分が一番居心地の良い居場所を築けそうな場所を探して、一生ものと思える仕事を身につけてください。

 誰かが用意してくれた立派な「居場所」を探すのもいいけど、自分の身体にフィットした、自分好みの「居場所」を周りの人たちを巻き込んで作っていく社会人生活も、なかなか良いものですよ。オジサンは若人たちを応援しています!

著者プロフィール

ゲイライター

英司

東京・高円寺在住のアラサーゲイ。ゲイとして、独身男性として、働く人のひとりとして、さまざまな視点から現代社会や経済の話題を発信。求人広告の営業や人材会社の広報PR担当を経て、現在は自社媒体の企画・制作ディレクターとして日々奮闘中。都内のゲイイベントや新宿二丁目にはたびたび出没(笑)

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