【アジアカップ激闘録】かけがえのない勲章「00年」決勝レポート
1月9日にアジアカップが開幕する。連覇を目指す日本は12日のパレスチナ戦で大会をスタートさせる。
史上最多4度のアジア制覇を成し遂げている日本代表。ドラマに富んだその4度の優勝を『週刊サッカーダイジェスト』のアーカイブからお届けしよう。
日本の二度目の優勝は、トルシエジャパンの2000年大会。2年後の自国開催のワールドカップでの躍進を予感させる、いわば盤石の勝利だった。
決勝レポートを週刊サッカーダイジェスト2000年11月7日号より。
――◆――◆――
船出から、丸2年が経過した。
浮かんでは消え、失意のなかから這い上がってきた選手は少なくない。なかなか結果の出せなかったそのチームの指揮官、“ムッシュ”トルシエめがけて、日本代表のイレブンが一斉にウォーターシャワーを展開する。
スーツをびしょ濡れにされたフランス人もまんざらではないようで、ストレートに喜びを表現している。だが、気持ちが高揚してしまったのか、どうにもろれつが回っていない。
「このカップは私や選手だけでなく、日本サッカーすべてが結集されて獲得したものなんだ」
準決勝までの道のりは、組織と技術、そして経験値でもライバル国を圧倒し、苦境に立たされても確固たる自信と高い集中力で凌駕してきた。トルシエジャパンは24か月という長い月日を経て、ついに公式戦の初タイトルを射程距離に捉える。決勝の相手は、大会初戦で4-1と粉砕した前回王者、サウジアラビアだ。
「前と同じサウジだと思っていたら、絶対にやられると感じてた」
とは高原。これは試合前の日本チームから多く聞かれた言葉で、実際に日本戦後に監督が代わって以降、サウジは敗れていない。選手からの信望の厚いアルジョハルがコーチから監督に昇格し、慣れ親しんだ4バックを採用。緩急をつけたサウジ自慢のアタックが復活していたのである。
日本も、「ここで負けたら『よくやった』という程度のものしか残らない」(トルシエ監督)と、真っ向から受けて立つ構えだ。互いに17日間で6試合目となる決勝戦は、ベイルートのスポーツシティに5万人の大観衆を集め、キックオフを迎えた。
攻勢に出たのは日本だった。
サウジが多用するロングボールをフラット3が、出場停止となった稲本の代役、明神のワンボランチも機能している。しかし、その単調と思えた反撃がジャブのように日本を追い詰めていく。
9分、GK川口と最終ラインの間を狙うサウジに日本はPKを献上してしまう。コースを狙ったファラータのショットが左に外れ……。攻め込んで先制される、という日本にとっては最悪のシナリオは、サウジが自らの手で放棄してくれた。これでゲームは一気に日本へ傾く。
入念に微調整を施していたセットプレーから好機を作り、29分、均衡を破る。中村のFKに合わせたのは、これまでスタメンの座を追われていた熟練MFだ。「嬉しくて頭の中が真っ白になった」と語る望月。
前半はPKによるシュート1本に抑えられていたサウジだが、後半は劇的なまでに状況を好転させてきた。立ち上がりから分刻みで決定機を迎え、後半の頭から登場したアルシャルフーブが日本の右サイドを混乱状態に陥れる。
クサビが打ち込めず、日本はジリ貧の攻撃が続く。安閑とした前半から、一転して大会未経験の地獄絵図へ。GK川口のキレと、ことごとく外したサウジの攻撃陣。運も味方してくれたのだということを、忘れてはいけない。
レベルと力関係からすれば、日本の栄冠は順当だったと言える。だが、ここで見落としてはいけないのは、誰もが公言し、狙いにいってもぎ取ったタイトルだという点だ。価値と意義は計り知れなく高く、2年後の大一番へと邁進するブルーズの胸にかけがえのない勲章として、刻み込まれたことだろう。
史上最多4度のアジア制覇を成し遂げている日本代表。ドラマに富んだその4度の優勝を『週刊サッカーダイジェスト』のアーカイブからお届けしよう。
日本の二度目の優勝は、トルシエジャパンの2000年大会。2年後の自国開催のワールドカップでの躍進を予感させる、いわば盤石の勝利だった。
決勝レポートを週刊サッカーダイジェスト2000年11月7日号より。
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浮かんでは消え、失意のなかから這い上がってきた選手は少なくない。なかなか結果の出せなかったそのチームの指揮官、“ムッシュ”トルシエめがけて、日本代表のイレブンが一斉にウォーターシャワーを展開する。
スーツをびしょ濡れにされたフランス人もまんざらではないようで、ストレートに喜びを表現している。だが、気持ちが高揚してしまったのか、どうにもろれつが回っていない。
「このカップは私や選手だけでなく、日本サッカーすべてが結集されて獲得したものなんだ」
準決勝までの道のりは、組織と技術、そして経験値でもライバル国を圧倒し、苦境に立たされても確固たる自信と高い集中力で凌駕してきた。トルシエジャパンは24か月という長い月日を経て、ついに公式戦の初タイトルを射程距離に捉える。決勝の相手は、大会初戦で4-1と粉砕した前回王者、サウジアラビアだ。
「前と同じサウジだと思っていたら、絶対にやられると感じてた」
とは高原。これは試合前の日本チームから多く聞かれた言葉で、実際に日本戦後に監督が代わって以降、サウジは敗れていない。選手からの信望の厚いアルジョハルがコーチから監督に昇格し、慣れ親しんだ4バックを採用。緩急をつけたサウジ自慢のアタックが復活していたのである。
日本も、「ここで負けたら『よくやった』という程度のものしか残らない」(トルシエ監督)と、真っ向から受けて立つ構えだ。互いに17日間で6試合目となる決勝戦は、ベイルートのスポーツシティに5万人の大観衆を集め、キックオフを迎えた。
攻勢に出たのは日本だった。
サウジが多用するロングボールをフラット3が、出場停止となった稲本の代役、明神のワンボランチも機能している。しかし、その単調と思えた反撃がジャブのように日本を追い詰めていく。
9分、GK川口と最終ラインの間を狙うサウジに日本はPKを献上してしまう。コースを狙ったファラータのショットが左に外れ……。攻め込んで先制される、という日本にとっては最悪のシナリオは、サウジが自らの手で放棄してくれた。これでゲームは一気に日本へ傾く。
入念に微調整を施していたセットプレーから好機を作り、29分、均衡を破る。中村のFKに合わせたのは、これまでスタメンの座を追われていた熟練MFだ。「嬉しくて頭の中が真っ白になった」と語る望月。
前半はPKによるシュート1本に抑えられていたサウジだが、後半は劇的なまでに状況を好転させてきた。立ち上がりから分刻みで決定機を迎え、後半の頭から登場したアルシャルフーブが日本の右サイドを混乱状態に陥れる。
クサビが打ち込めず、日本はジリ貧の攻撃が続く。安閑とした前半から、一転して大会未経験の地獄絵図へ。GK川口のキレと、ことごとく外したサウジの攻撃陣。運も味方してくれたのだということを、忘れてはいけない。
レベルと力関係からすれば、日本の栄冠は順当だったと言える。だが、ここで見落としてはいけないのは、誰もが公言し、狙いにいってもぎ取ったタイトルだという点だ。価値と意義は計り知れなく高く、2年後の大一番へと邁進するブルーズの胸にかけがえのない勲章として、刻み込まれたことだろう。