【米国はこう見ている】なぜレッドソックスは上原浩治をトレードに出さなかったのか 球団GM「彼をキープすることはとても重要だった」
主力が大量放出される中で残留した上原
レッドソックスのベン・チェリントンGMがクローザーの上原浩治投手を7月31日のトレード期限までに放出するつもりが全くなかったとする考えを明かした。地元紙プロビデンス・ジャーナルが「なぜレッドソックスはコウジ・ウエハラのトレード(成立)に近づかなかったのか」と題して報じている。
昨季のワールドシリーズ覇者はア・リーグ東地区最下位に沈む大不振に陥り、来季以降の立て直しに向けて主力をトレード期限までに大量放出した。今オフに契約が切れてフリーエージェント(FA)となる最強守護神もトレード候補の1人と見られていたが、レッドソックスは他球団からのオファーを受けることはなかった。同紙は「レッドソックスがコウジ・ウエハラをトレードするような雰囲気は全くなかった」との書き出しで、その理由に迫る記事を掲載している。
トレード期限から6日後のカージナルス戦前に取材に応じたチェリントンGMは「彼をキープすることはとても重要だと我々は考えた」と明かしたという。「我々を吹き飛ばすような何かが起これば、あるいは、それ(上原の放出)を考えたかもしれない。そうはならなかったということだ」。最強守護神を放出することでレッドソックスが受けるダメージは甚大だ。よほどのオファーでない限り、そのダメージには見合わないと考えたのだろう。
レッドソックスはエース左腕のジョン・レスターを筆頭に、ジョン・ラッキー、ジェイク・ピービ−、フェリックス・ドゥブロンと4人の先発投手をトレードに出した。さらに、ブルペンで重要な役割を果たしていたアンドリュー・ミラーも放出。今季限りでFAとなる選手を中心に、まさに「ファイヤーセール」を実施したが、上原だけは違った。同紙は「上原のようにFAが迫っている選手を残留させるには、繊細な理由がある」と言及。実際に、同じように今オフにFAとなるミラーは同地区のオリオールズにトレードされたことにも触れている。
契約延長オファーで上原の年俸は3倍に!?
記事によると、レッドソックスは今季終了後に上原にクオリファイングオファー(QO)を出し、引き留める図る方針だという。
QOとは、FAとなる選手の残留を希望する現所属チームが、その年の年俸上位125選手の平均年俸額での1年契約を提示することができる制度。QOを拒否した選手が新チームとFA契約を結んだ場合には、新チームはドラフト1巡目指名権を前所属チームに明け渡さなければならない。
今季のQOは1500万ドル(約15億3000万円)程度となる見込みで、上原の現年俸500万ドル(約5億1000万円)から約3倍増となる。昨季限りで引退したマリアーノ・リベラの全盛期の年俸が同じ1500万ドルだったことを考えれば、クローザーとしては破格の額だということが分かる。
また、仮にQOを出せば、上原を狙う球団が減るという効果も期待される。来季は40歳になるクローザーを獲得するためにドラフトの1巡目指名権を手放すことは、代償が大きすぎるとも考えられるからだ。レッドソックスが来季の立て直しに向けて上原を必要不可欠と考え、あらゆる策を講じていることが分かる。これだけ必死ならば、トレード期限までに放出しなかったことも当然と言えるかもしれない。
上原は6日(日本時間7日)のカージナルス戦で1点リードの9回に登板し、2安打を浴びながらも無失点に抑えて23セーブ目を挙げた。防御率は1・39と相変わらず驚異的な数字をキープしており、チーム状況が厳しい中でもクローザーとしての役割を全うしている。快投を続けるほど、レッドソックスにとって上原の存在は大きくなっていく。