妖怪テンバイチューと呪いの妖怪ウォッチ/純丘曜彰 教授博士
/ヤフオクに出ているのは、妖怪テンバイチューが金満モンスターの妖怪ボッチを育てるためのワナ。世にも恐ろしいタタリが取り憑いた「呪いの妖怪ウォッチ」。そんなのを持っているおともだちの豪邸に近づいてはいけない。/
この世で起きる不可解な出来事は、すべて妖怪のしわざ。そんな妖怪たちを見ることができる場所がヤフオクです。妖怪たちとの出会いが、あなたの人生にどんな影響をもたらすのか。それは、誰にも分かりません。さて、ほしかった妖怪ウォッチが買えなかったおともだち。でも、おとうさんやおかあさんに当たり散らしてはいけません。というのも、こんな恐い話があるのです。
エピソード1:ケータくんのクラスには、妖怪ウォッチを手に入れたおともだち、ボナミちゃんがいました。今日、さっそく学校に持ってきて、みんなに見せびらかし、自慢ばかりしているのです。それで、みんなあきれて、ボナミちゃんは、だれもおともだちがいなくなりました。でも、そのことを、店で何時間も並んで買えなかったケータくんパパに話すと、不思議そうな顔をします。変だなぁ、ボナミちゃんパパは、お店の列には並んではいなかったけどな、と言います。おかしいぞ、さては、と、思いましたが、ケータくんは、妖怪ウォッチを持っていなかったので、なにも見ることができませんでした。ところが、翌日、ボナミちゃんパパは、頭中、包帯だらけで、歯も全部、叩き折られてしまい、なのに、バカボンのおとうさんのように、鼻毛を揺らしながら、へらへらと笑って、大きな白いベンツに乗っていたのです。そのことを伝えると、ケータくんパパは言いました。それは、きっと妖怪ボッチのしわざにちがいない、と。
エピソード2:妖怪ボッチとは、何なのでしょうか。ケータくんから話を聞き、フミちゃんも、とてもびっくりしました。ケータくんと同様、フミちゃんも妖怪ウォッチがほしいと言ったので、フミちゃんパパも朝からお店に並んでくれたのですが、やはり買えなかったのです。けれども、そんな自分のわがままのせいで、自分のパパが、ボナミちゃんパパみたいなことになったらどうしよう、と、とても恐くなったからです。ところが、そのパパが、夜、書斎のパソコンで仕事をしているとき、中からなにかただならぬ気配が! フミちゃんは、驚いてドアを叩きました、パパ! どうしたの? だいじょうぶ? すると、中から、ふらーっと、フミちゃんパパが出てきました。パパの背中には、ブキミー族無職神の妖怪テンバイチューが取り憑いていました。
エピソード3:フミちゃんは、すぐ電話でケータくんに相談しました。その話を聞いて、ケータくんパパは、フミちゃんパパのところに飛んで来ました。ケータくんパパが調べると、フミちゃんパパは、パソコンでヤフオクをやっていたのです。フミちゃんパパは、フミちゃんがほしがっている妖怪ウォッチを手に入れようと、何万円もの金額になるまで、何度もポチっていました。妖怪テンバイチューに取り憑かれ、目を血走らせて、へへへへっ、と笑いながら、さらに高い金額を入力しています。ケータくんパパは、やめろ! 目を覚ませ! とフミちゃんパパを羽交い締めにして叫びますが、相手は妖怪です。信じられないような力で、ケータくんパパは、壁まで飛ばされてしまいました。フミちゃんは、お兄ちゃんの部屋から金属バットを持ってきました。パパ、聞いて! 私を妖怪ボッチにしたいの? ズルいことはダメ、って、パパが教えてくれないの! フミちゃんパパが、はっと我に戻って、振り返ったとき、オークションは締め切りになりました。最後の一瞬に、ほかのどこかのおとうさんが、もっと高値で落札していました。それとともに、妖怪テンバイチューも、パソコンの画面の中に消えて行きました。ケータくんパパが言います、きっと落札した家に取り憑いたな、と。
あなたは、どうやって妖怪ウォッチを手に入れましたか。ちゃんと並んで、もしくは抽選や応募で手に入れたならだいじょうぶ。だけど、おとうさんがヤフオクで手に入れたなら、あなたのおとうさんの背中には妖怪テンバイチューが。やがて、あなたは、おカネでなんでも手に入る、なんでもできると勘違いした金満モンスターの妖怪ボッチになって孤立し、おとうさんやおともだちに、取り返しのつかないような、ひどいことをしまうかもしれません。ヤフオクに出ているのは、妖怪テンバイチューが新しい妖怪ボッチを育てるためのワナです。それは、世にも恐ろしい、タタリの取り憑いた「呪いの妖怪ウォッチ」。学校で持っているおともだちがいても、けっしてそんなおともだちの豪邸に近づいてはいけません。
by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka 純丘曜彰教授博士
(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。)
この世で起きる不可解な出来事は、すべて妖怪のしわざ。そんな妖怪たちを見ることができる場所がヤフオクです。妖怪たちとの出会いが、あなたの人生にどんな影響をもたらすのか。それは、誰にも分かりません。さて、ほしかった妖怪ウォッチが買えなかったおともだち。でも、おとうさんやおかあさんに当たり散らしてはいけません。というのも、こんな恐い話があるのです。
エピソード2:妖怪ボッチとは、何なのでしょうか。ケータくんから話を聞き、フミちゃんも、とてもびっくりしました。ケータくんと同様、フミちゃんも妖怪ウォッチがほしいと言ったので、フミちゃんパパも朝からお店に並んでくれたのですが、やはり買えなかったのです。けれども、そんな自分のわがままのせいで、自分のパパが、ボナミちゃんパパみたいなことになったらどうしよう、と、とても恐くなったからです。ところが、そのパパが、夜、書斎のパソコンで仕事をしているとき、中からなにかただならぬ気配が! フミちゃんは、驚いてドアを叩きました、パパ! どうしたの? だいじょうぶ? すると、中から、ふらーっと、フミちゃんパパが出てきました。パパの背中には、ブキミー族無職神の妖怪テンバイチューが取り憑いていました。
エピソード3:フミちゃんは、すぐ電話でケータくんに相談しました。その話を聞いて、ケータくんパパは、フミちゃんパパのところに飛んで来ました。ケータくんパパが調べると、フミちゃんパパは、パソコンでヤフオクをやっていたのです。フミちゃんパパは、フミちゃんがほしがっている妖怪ウォッチを手に入れようと、何万円もの金額になるまで、何度もポチっていました。妖怪テンバイチューに取り憑かれ、目を血走らせて、へへへへっ、と笑いながら、さらに高い金額を入力しています。ケータくんパパは、やめろ! 目を覚ませ! とフミちゃんパパを羽交い締めにして叫びますが、相手は妖怪です。信じられないような力で、ケータくんパパは、壁まで飛ばされてしまいました。フミちゃんは、お兄ちゃんの部屋から金属バットを持ってきました。パパ、聞いて! 私を妖怪ボッチにしたいの? ズルいことはダメ、って、パパが教えてくれないの! フミちゃんパパが、はっと我に戻って、振り返ったとき、オークションは締め切りになりました。最後の一瞬に、ほかのどこかのおとうさんが、もっと高値で落札していました。それとともに、妖怪テンバイチューも、パソコンの画面の中に消えて行きました。ケータくんパパが言います、きっと落札した家に取り憑いたな、と。
あなたは、どうやって妖怪ウォッチを手に入れましたか。ちゃんと並んで、もしくは抽選や応募で手に入れたならだいじょうぶ。だけど、おとうさんがヤフオクで手に入れたなら、あなたのおとうさんの背中には妖怪テンバイチューが。やがて、あなたは、おカネでなんでも手に入る、なんでもできると勘違いした金満モンスターの妖怪ボッチになって孤立し、おとうさんやおともだちに、取り返しのつかないような、ひどいことをしまうかもしれません。ヤフオクに出ているのは、妖怪テンバイチューが新しい妖怪ボッチを育てるためのワナです。それは、世にも恐ろしい、タタリの取り憑いた「呪いの妖怪ウォッチ」。学校で持っているおともだちがいても、けっしてそんなおともだちの豪邸に近づいてはいけません。
by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka 純丘曜彰教授博士
(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。)