恐竜はいまも絶滅していない──生き残りをかけた恐竜たちのある試み

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隕石落下や火山噴火など、さまざまな説が唱えられている恐竜絶滅の原因。しかし恐竜は、いまもかたちを変えて生きてるかもしれない。

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空きニッチに適応する

かつて恐竜と呼ばれ、太古の大地を支配した大型生物の一部は、実は形態を変えて未だに地球に生存している。ただし現在の彼らは空をも支配する。そう、鳥類だ──。

オックスフォード大学とロイヤル・オンタリオ博物館の共同研究によると、恐竜から鳥類への進化成功の鍵は、体長を著しく小型化させることだった可能性がある。

地球上の生物は、形態的、または生態学的に、非常に幅広い多様性がある。これを説明するモデルのひとつに「適応放散」と呼ばれる現象があるが、この説によると、多様性は生物が異なる環境の空きニッチに適応した結果、生まれたものなのだとされている。

恐竜は絶滅したわけではない」と話すのは、オックスフォード大学の脊椎動物古生物学者であるロバート・ベンソン博士だ。「現在、恐竜の子孫は10,000種という鳥類へと姿を変えて存在している。われわれは、鳥類と、すでに絶滅したティラノサウルスやトリケラトプス、ステゴサウルスといった中生代の親類を比較し、進化の繋がりを理解したかったのです」

ベンソン率いる研究グループは、まず426種の恐竜の大腿骨の大きさから体重を推定。この方法は非常に信頼性が高いといい、進化のラインにある恐竜たちがどのように体長を変化させてきたかを知ることが可能だ。また、とある近縁種がそのサイズおいてかなり類似しているならば、おそらく進化は遅かった。しかし、彼らの体長が大きく異なるならば、進化は速かったことがうかがえるという。

調査によると、2億2千万年前頃から全恐竜の体長に急速な変化が起こっていた。これは草食性などの空きニッチに適応するために、恐竜のサイズの大小に変化が生じたためだとみられている。しかし急速だった変化はすぐに減速し、その後多くの恐竜は安定した形態を維持していたことが明らかになった。

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PLOS Biology/Roger B. J. Benson et al.

体のサイズをデザインする

ただひとつの例外は、羽のあった恐竜「マニラプトル類」だけである。ベンソンの調査では、この恐竜の系統樹だけは、1億7千万年間に渡って急速な体長の変化速度を保ち続けた。映画『ジュラシック・パーク』でお馴染みのヴェロキラプトルを含むマニラプトル類は、肉食、草食、雑食のみならず、体長も種類によって15グラムから3トンと、幅広い形態をもつに至ったのだ。

しかし地球が突然中生代の歴史を閉じた6,500万年前、急激な環境の変化に順応できたのは、どちらの恐竜グループだっただろうか? 化石が語るように、長い氷河期が食料不足を引き起こしたとき、巨大な体躯を持つ多くの恐竜は環境の変化に素早く順できなかった。結果的に巨大な恐竜は絶滅を余儀なくされたが、常に空きニッチを模索し続け適応してきたマニラプトル類は生き残った。体のサイズを“デザイン”し、多くの場合小型化しながら、鳥類へと進化を遂げたのである。

分類学上、側系統群では鳥類は爬虫類の枝分かれの一部であり、現生種の遺伝子分析ではワニ目と最も近縁であるが、同様に恐竜の子孫であるワニ目は23種。鳥類10,000種の多様性とは比較にならない。太古の昔からサイズの大小は変われど基本的には淡水域に潜み、肉食で、それ以上にニッチの拡大はないワニ目と比べ、鳥類はありとあらゆる場所に存在し、食性もサイズもさまざまだ。四肢の脊椎動物の中で最も種に富んでいる鳥類は、常にエコロジカルなニッチに応え、長い時間をかけて継続的なイノヴェイションを遂げることで進化していった、実に汎用性に富んだ生物だと言えるだろう。

恐竜が鳥類へと進化を始めたころ、空きニッチを埋める重要な要因はサイズだった。ベンソンも、鳥類への進化成功は、当時恐竜の小型化の下限であった1キログラムを下回ることだったと考えている。

環境変化による食物の種類や量が生物の体長に直接影響を及ぼす以上、これからもサイズは進化の重要なパラメーターとなるだろう。かつて恐竜と呼ばれたマニラプトル類がひとときも変化を止めなかったように、鳥類は、今も進化を続けている。

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