3回に都立雪谷打線が爆発。打者一巡で一挙11得点!

 注目校の登場に、神宮第二球場は満員に膨れ上がった。スクールカラーのピンクのメガホンが揺れる三塁側の日大豊山。赤いシャツで染まる一塁側の都立雪谷。両校の大声援を背に両校の選手たちがグラウンドに飛び出した。果たして野球の神様がほほ笑むのはどちらの高校か。

都立雪谷は、3回戦、4回戦と接戦を制してきてここまで勝ち上がってきた。ここまで都立雪谷のマウンドを守るのは注目のエース・鈴木 優。この日も鈴木が先発のマウンドへあがった。

 対する日大豊山は吉村貢司郎。まずは初回の日大豊山の攻撃。一死二塁と先制のチャンスを掴むも、鈴木の前に3番荒井聡太、4番吉村貢司郎が三振に倒れる。

 一方、鈴木 優を早く援護したい都立雪谷。2回裏、5番神子堅吾が安打、7番関智弘の死球で一死一塁、二塁と得点圏に走者を進める。その後、二死二塁三塁と好機を拡大するも、後続が倒れ、無得点でこの回を終える。

  0対0の均衡を破ったのは、3回裏、都立雪谷の攻撃。球場内の誰もが予想していなかったビッグイニングを作る。

 まずは、1番山北 泰輝が四球を選ぶ。続く、菅野智也の二塁ゴロの間に走者は二塁へ。3番畠山仁吾がエラーで出塁し、好機を拡大する。ここで、快投を続ける鈴木 優が適時打を放ち、欲しかった先制点を奪う。尚も、一死二塁三塁とし、続く神子堅吾も敵失により、さらに1点追加。2対0とする。

 エラーにより失点を喫した日大豊山。こうなると野球の神様は微笑んでくれない。逆に都立雪谷の押せ押せムードとなる。6番小豆畑兼の適時打で2点、8番木元航平の適時打で1点、三井勇樹の適時打でさらに2点と猛打爆発。試合は7対0となり、たまらず、日大豊山は、先発・吉村貢司郎から、中野渡靖典へスイッチ。しかし、都立雪谷への流れは止まらず、1番山北 泰輝の適時打などでさらに、4点を追加し、この回なんと二桁11点を奪う猛攻を魅せた。

 11点差となり、完全に飲み込まれた日大豊山は、続く4回も、点差を埋めることができない。そして、5回表。この回で2点を奪わないと、コールド負けとなる日大豊山。

 一方、勝利を確信した都立雪谷ナイン、そしてスタンドのボルテージは最高潮に達する。5回表、6番石井誠也がライトフライ。代打熊川克典はレフトライナーに倒れ2アウト。あと2点が遠い日大豊山。

 忍び寄る、試合終了へのカウントダウン。「神様、あと1分だっていい。」20年前のあの夏、筆者はそう願って、最後のプレーを迎えた。

 何故か、筆者の過去とオーバーラップした5回表二死。日大豊山の球児達は何を思い、グラウンドに立っていたのだろう?ただ一つ、筆者と違っていたのは、彼らは、大量点差にもくじける事無く、自分達の勝利を信じてプレーし続けた事だ。

 そして、日大豊山の最後の打者が倒れ、コールドゲーム。日大豊山の願いは叶わなず、11対0で都立雪谷が試合をものにした。勝った都立雪谷は関東一と準々決勝で激突する。東京を代表する強打の関東一と東京を代表する投手・鈴木 優を擁する都立雪谷。お互い敗けられない戦いは24日12時半より神宮球場で行われる。

(文=編集部)