エース金子、とどめの3ランで試合を決める!

 今年の埼玉県大会は波乱が続いている。全国でも強豪校と呼ばれる高校が次々と敗退。代わりに勢いのあるチームが現れたり、古豪が復活、旋風を巻き起こしている。そんな中、埼玉高校野球ファンにとってお馴染みの学校の一つとしてここまで残っている春日部共栄。2回戦は桶川西に6対1、3回戦は大宮西を相手に7対3と、手堅く勝利。今年こそ2005年以来の甲子園出場のチャンスだと意気込んでいる。 そんな春日部共栄と4回戦を戦う相手、慶應志木は1回戦から登場し、4年ぶりに初戦を突破。そのままベスト32に入り、4回戦まで駆け上がってきた。

 春日部共栄は、気負いからか試合前のノックからやや硬さが見て取れる。対して、慶應志木は伸び伸びとプレー。良い緊張感の中、今大会1回戦以来の埼玉県営大宮公園野球場のグラウンドを楽しんでいるようだ。対照的な両チームの対戦となった7月20日の埼玉県営大宮公園野球場第3試合、ベスト16最後の椅子を争う一戦が始まった。

 初回、慶應志木がまずチャンスを作る。1番・大川 慎太郎が放ったのはピッチャー返し。打球は先発・金子 大地のグラブを弾きレフト前へ転がるヒットになる。これを2番・泉名 翔太郎がキッチリと送り、一死二塁。3番・恩河 力はセカンドゴロに打ち取られるものの、粘りを見せて金子を揺さぶる。慶應志木のいきなりの攻勢にさすがの金子も面喰ったか、続く4番・清水 海秀に対し、ストライクが入らない。清水は落ち着いて四球を選び、ランナーが溜まる。5番・中村 魁は空振りの三振に倒れるものの、慶應志木がここまで勝ち上がってきた勢いを見せる。

 その裏、春日部共栄の攻撃。お返しとばかりに1番・清水 頌太が打球を飛ばす。ライト前へきれいに抜けるかと思われた打球を、慶應志木セカンド・井上 圭がタイミングよくジャンプ、体をいっぱいに伸ばしキャッチし、アウトにする。春日部共栄はこの後3番・守屋 元気がヒットを飛ばすが後が続かず無得点。2回には金子 大地が二塁打を放ち一死二塁とチャンスを作り出すが、これも得点が出来ない。

 だが、この二塁打で緊張がほぐれたのか、3回表、これまで投げにくそうに間を取っていた金子は人が変わったかのようにテンポよく投げ込み始め、慶應志木の攻撃をあっさり三者凡退に切って取る。

 エースの立ち直りに打線も目覚める。3回裏、9番・小林 慎太郎のヒットや四球等で一死二、三塁とすると、3番・守屋 元気がレフトへヒットを飛ばす。これがエラーを誘い、走者が本塁へ還りまず1点。4番・原田 寛樹もセンター前へのタイムリーで続き2点目。さらに2点を追加した後、一死一塁から金子がセンター頭上を越えるツーベースでさらに1点追加。8番・長岡 大智、1番・清水にもタイムリーが飛び出し、この回7点をあげ、一気に試合を決めた。

 その後、立ち直った金子はスイスイとアウトを重ね、危なげのないピッチングを披露。攻撃は4回、5回と長打を放ちながら、諦めない姿勢を見せる慶應志木の守りの前に無得点に抑えられていたが、6回裏、一死から3番・守屋がレフトフェンス直撃のツーベース、4番・原田はセンター前ヒットで出塁。二死一、三塁となったところで、最後は金子がライトへとどめの3ラン。10対0とし、6回コールドゲームを成立させた。

 序盤こそ苦しんだものの、終わってみれば快勝といえるスコアを残した春日部共栄の次の相手は、1回戦からこちらも順調に勝ち進んできている、昨年の準優勝校・川越東。春日部共栄の真価が問われる一戦となりそうだ。

(文=青木 有実子)