見えてきた米国の「出口」 10年以上の「徐行運転」?【ビジネス塾】

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米国の中央銀行機能を果たす連邦準備理事会(FRB)は、6月に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表した。それによれば、市場関係者の予想通り、現在行われている量的緩和(QE3)は10月のFOMCで終了を決める予定のようだ。

以前も述べたが、その後もゼロ金利が続くというのがおおかたの予想だ。ただ、米国経済の好調を背景に、「早期利上げ」の観測も強まっている。円ドル相場や日本の株式市場にも影響を与えるだけに、目が離せない問題だ。

■量的緩和は10月で終了
FRBが緩和の縮小、すなわち「テーパリング」を決めたのは昨年12月のFOMCで、以降、半年にわたって、債権買取額を月100億ドルずつ縮小させてきた(現在は月350億ドル)。公開された議事録によると、10月に一気に150ドル減らして買い取りを終了する予定のようだ。

だが、それでもゼロ金利政策は続くため、米国の金融政策が緩和傾向である状況は続く。このゼロ金利につては、FRB内にも意見の相違があり、緩和継続派(ハト派)と早期利上げ派(タカ派)の攻防が続いている。

■ハト派かタカ派か?
ハト派の見解では、早期利上げを行うと、株式市場に流れ込んでいる資金が債券市場に向かうため株価が下がる。また、利上げは景気の腰折れにもつながりかねない。これを避けるため、緩和策を継続すべきだという。

他方でタカ派は、「景気回復は順調なので、利上げを行っても景気はたいして冷え込まず、株価も下がらない」という。

どちらが正しいかは非常に微妙だ。編集部の見解は、早期利上げの可能性は低いというものだ。イエレン議長は明確にハト派だし、市場の金利動向を見ても、金利が早々に上がるようには動いていない。

■急騰の恐れもあるが…
だが、ゼロ金利を続ける中で景気回復が続けば、どこかで金利が急騰(国債バブルが崩壊)してしまう可能性もある。このあたりの金融政策はなかなか難しく、イエレン議長の「腕の見せどころ」になろう。

編集部の予想は、米国内の景気は一直線には回復しないので、ゼロ金利が続くというものだ。膨らんだFRBの資産を徐々に縮小させるには、景気拡大の環境が長期に続くことが必要になる。一説では、この過程は10年程度の長期になることが予想される。この面からも、金融政策は緩和的にならざるをえないだろう。米金融政策は、低金利下の「徐行運転」が続くわけだ。

それだけではない。ウクライナやイラクなどの「地政学的リスク」、さらにアルゼンチンのデフォルト(債務不履行)の可能性、中国経済の先行き不透明さなど、世界経済にはリスクが多い。米国の経済規模が大きくても、これらと切り離されて「繁栄」できるわけではないからだ。

こうなると、円安局面の定着は先送りされそうである。日本株が持続するかどうか、世界経済の動向と成長戦略の正否にかかってくるということになる。

(編集部)

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