ベネッセ以上にジャストシステムが問題/純丘曜彰 教授博士
/数日前からベネッセの大量情報流出が問題になっている。だが、顧客が怒っているのは、情報を盗まれた同じ被害者の側のベネッセより、盗んだ情報を使って広告を送りつけてきたジャストシステムだ。/

説明:この記事は、7月10日朝8時のものです。この時点では、前日のベネッセの情報漏洩だけが報道され、マスコミは、例年の一太郎キャンペーンの大スポンサーであるジャストシステムの名前を出そうとしませんでした。しかし、自分の個人情報を盗まれ、DMを送りつけられた本当の被害者である子供たちからすれば、もともと、誰がワルなのか、は、最初から、はっきりしており、だからこそ、事件が発覚したのです。そして、その状況は、いまも変わっていません。どういう入手経路であれ、ジャストシステムは、ストーカーのようにかってに子供たちの個人情報を調べ上げ、自分の商売に利用しようとしたのであり、それは邪悪な不正です。子供たちに謝るべきです。子供の情報を売買する、商売に利用するのは、人身売買と同じことです。子供たちを守る、という視点が、いまだにマスコミに欠落していることにも、大きな怒りを覚えます。続きはこちら!

http://www.insightnow.jp/article/8165

 ベネッセからの超弩級の大量顧客情報流失も、管理の甘さ、という意味で問題だが、どうみてもマトモではない量の名簿を購入し、それでヌケヌケと広告を送りつけてきて、いまだにほっかむりしている「スマイルゼミ」のジャストシステムって、いったいどういう会社なんだ? 顧客が怒っているのは、情報を盗まれた同じ「被害者」の側のベネッセ以上に、情報を盗んだ側のジャストシステムだ。

 いや、盗んだわけじゃない、カネを払って買った「善意(知らなかった)の第三者」なんだ、なんて、ネゴトワ・ネティエ。常識的に考えて、あの量の個人情報が、まともなものではないことくらい、それどころか、情報流出の出どころがまさにライヴァルのベネッセであることくらい、同じ業界にいればわからないはずはあるまい。たとえ法律が許しても、しまじろうとそのおともだちが許すものか。

 まして教育関連だ。同社の主力製品の「一太郎」は、縦書きやマス書きに強かったので、昔から小学校や中学校に深く入り込んでいて、税金でも大量購入されている。その延長線上で始めたのが、今回、広告で送られてきた教育教材の話。だが、教育以前に社会常識的な倫理観が壊れていて、なにが教材開発か。

 また、同じ理由で、「一太郎」は、官公庁や官公庁と取引のある企業などにも大量に入っている。だが、ジャストシステムが盗んだ個人情報を買って平然としている企業ということになると、ジャストシステムが自分で集めて持っている個人情報についても、同じ程度の管理意識しか無い、ということになる。

 今回、ベネッセからの情報流出がすぐに特定されたのは、自分の個人情報を提供先企業別に微妙にアイデンティファイし、追跡できるようにしていた管理意識の高い顧客がベネッセに多かったからだ。ある種の「すかし」の入った個人情報で広告などが送られてくれば、それがどこに提供した自分の情報であったか、一目でわかる。

 ベネッセは、長年の地道な努力で、25年をかけて、少しずつ顧客を増やしてきた。ママ友仲間の評判やクチコミ、その成果と信用が、あれだけの大量の個人情報だ。ベネッセの顧客はそれをよく知っているから、ジャストシステムに怒っているのだ。それを、簡単にカネで買える、と思っているジャストシステムは、経営の根本が間違っている。電話がつながらない、云々で逃げようとしても、今回の事件が大問題であることに気がついていないわけがあるまい。謝罪するなら、ベネッセよりジャストシステムの方が先に決まっている。こんな広告を送りつけてきて、なにが「スマイルゼミ」だ。まったく笑えない。いや、へらへらとスマイルだなんて、バカにされているようで、余計に腹立たしい。

 今回の一件の事実関係がはっきりするまで、学校や官公庁は、ジャストシステムからのいっさいの物品購入は、ただちに完全凍結するのが当然だ。一般顧客においても、自分の個人情報を守るために、ジャストシステムの商品の購入、および、ユーザー登録は控えた方がいい。くわえて、顧客は、どこでも個人情報を提供する際には、情報に「すかし」を入れて、自分を守ろう。仕組みは簡単。部屋番号の前に、AだのBだのの英字を書き加えるとか、一軒家でも、それらしい部屋番号を付けてしまうとか。

 新聞やテレビ、ネットまで、ジャストシステムが大手スポンサーということで、いまだに今回の一件に口をつぐんでいるが(10日朝8時の時点)、謝罪するなら、ベネッセ以上にジャストシステムだ。どこから入手したかも怪しいような情報で広告を送りつけてくる企業は、いまの時代には、もはや存在そのものが社会的に許されるものではない。頭を下げただけで済むと思うな。情報漏洩させてしまった側の三菱UFJ証券は1万円のギフト券だったそうだが、今回は情報を盗んだ側なのだから、「お詫び」は、当然、もっと高額になるだろう。送り先の住所は知っての通り。ほら、みんな待ってるぞ。ズルは、結局、高くつくことを思い知れ。

追記:ジャストシステムが14時過ぎになってコメントを出した。「当社が悪意を持って利用したかのような報道がなされました」だと。裁判のことしか考えが及ばない頭の悪い弁護士に騙されたのだろうが、これは企業の危機管理として最悪の対応だ。「世間をお騒がせして申しわけございません」という謝罪から始めないと、話にならない。この状況で、「ぼくは悪くないモン!」なんて、やれば、よけい火に油を注ぐようなもの。ますます世間を敵に回しただけ。そのうえ、このコメントは、ホームページトップではないところにある。問題が表面化してからこの一週間をムダにしたことを含め、コーポレイトガヴァナンスがガタガタである内情を露呈した結果か。

「悪意」を持っていたか否か、という話で言えば、「悪意」というのは、不正の認識があったかどうか、ということだが、第三者から名簿を購入してDMを送付した時点で、法律的にはともかく、倫理的には、プロとして情報を扱う業者として「悪意」があった、と見なされうるだろう。これらの個人情報がジャストシステムの業務代行として収集されたのでない一般販売のものであった以上、ジャストシステムのDMに関する「オプトイン」を得ていない、ジャストシステムからDMを送付されることに関して相手から承認を得ていない、ことは、あきらか。電子メールでダメなものは、DMでもダメ。文句がある、悪意が無かった、と言い張るなら、今回、送付したすべての子供たちのオプトインを明示する必要がある。

by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka 純丘曜彰教授博士
(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。)