連日「ヤンキースを戦力外」または「放出か?」と、穏やかではない情報ばかりが報じられているイチローに関する報道。噂の域を出ていないものもあるが、この冬のヤンキースの補強状況とお金にまつわる事情を織り交ぜて説明したいと思う。

まずは、さらなるライバルが出現したこと。先日、レッドソックスからジャコビー・エルズベリー外野手がヤンキースへ移籍してきた。総額1億5,300万ドル(約157億6千万円)の大型移籍、並びにメジャーの外野手の中では過去最高額という契約内容も話題だが、これによってヤンキースの外野陣は、新加入のエルズベリーに加えFAでカージナルスから来たベルトラン、イチロー、ガードナー、Aソリアーノ、Bウェルズとすでに6人で飽和状態になった。

そこで真っ先にトレード候補に挙がったのは、3枠の外野陣の中で4番手にいるブレット・ガードナーだが、キャッシュマンGMはガードナー移籍を否定。だからと「彼に次ぐ5番手のイチローが真っ先にトレード要員に出されるのでは?」というのは、あくまでも憶測と日本国内の予想に基づくものだ。

それでは、イチロー「残留」の可能性はどれくらいあるのだろうか。現時点でガードナー放出を否定しているヤンキースだが、まだ三塁、先発投手、救援投手など補強ポイントを数多く抱えている。ガードナーはいまだに注目され他球団からのトレード要員として要望も多い選手であり、「最終的には放出するのでは?」という意見もある。また打撃の良いソリアーノは指名打者として起用する案も浮上しており、結果、ベンチスタートが多くなりそうだがイチロー残留の可能性は十分にありえる。

一方で「移籍」に関して。イチロー獲得に動いているのが今シーズン、ナ・リーグ中地区3位に終わったレッズだ。前述したガードナーの獲得に失敗、プランBとしてイチローに照準を定め交渉を開始している模様だ。現在外野が不足している状況もあるが、元マリナーズの投手コーチだったプライスが監督に就任し、「足を使った野球」を標榜するにあたりイチローの走塁能力、打撃、守備を総合的に高く評価しているという。

またヤ軍は来季の年俸総額をMLBの制限額となる1億8,900万ドル(約194億6,800万円)以内に抑えるという目標を掲げている。それが達成されないと課徴金制度のペナルティーとして膨大な「贅沢税」を支払うことになるからだ。

イチローの年俸は650万ドル(約6億7,000万円)で割高と言われている。贅沢税の負担を減らすため、年俸の一部を負担してでも放出するという案も勿論あるが、ヤ軍の中で高額年俸は何もイチローだけではない。正直なところ「残留」「移籍」いずれにしても、イチローの”I”の字も出ていないのが真実だ。